‡私的★引用‡
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リセットボタン 1.序章

乾いた足音が耳に響く。走るでもなく一定の間隔でずっと後ろを途切れる事無く音はついてくる。気配は感じていたけど金縛りになったように首が回らない。というか、振り返れば何かが跡形もなく消えそうな不安があったからだ。背中に注ぐ視線――悪意をこめた眼差しが突き刺さる。あたしは立ち止まり、ゆっくり踝を返した。
そこにいたのは自分そっくりの女。
言わば、もう一人の自分だった。
「脅しているつもり?」
威嚇するあたしにもう一人の“あたし”は不敵に微笑むだけ。怒りに支配された意思が殺意を生み出す。
あたしは“あたし”目がけて疾走した。叫びながら刃物を振りかざしていた。
「――…っ!」