前の投稿から10日が経ってしまった。今回はこちらです。
実話を基にしたフィクションです。詳細はこちらを参照してください。
学年ビリのギャルが1年(半)で偏差値を40あげて慶応大学に現役合格した話。
見たこと無い方も、この原作タイトルでほぼあらすじを語り切ってるので話の大筋は知っているでしょう。実際、そういう話です。ですが、それで見る価値がないかというと、全然そんなことはないんですよ。
話のオチが見えているということは、そこに意識を払わなくていいということで、よりその他のところに意識配分が出来るようになります。実際どうやって合格まで漕ぎつけたのか、という部分に観客の意識はフォーカスされるわけです。これはミステリでいうところの倒叙ものの手法に似ています。映像作品でいうと刑事コロンボや古畑任三郎が有名ですね。
で、そういった意識を持って作品を見ていると、どのようにしてまずビリギャルになり、そこから勉強に打ち込むようになって合格に至るかという手順がめちゃくちゃ鮮やかで、見ていて気持ちがいいことこの上ないんです。欲しい所にちゃんと欲しい物がある感覚。ご都合主義と切って捨てることもできましょうが、この精度は中々他で味わえるものではないレベルです。
例えば、導入部分で主人公のギャルは、プロ野球選手を目指す弟びいきの父親から「失敗だ」と言われたりするわけです。家庭は父親と弟中心で回っていて、仮に弟がちょっと転んでしまえばどうしようもなくなる危うさが明白で、この時点で家族としては崩壊寸前にあることが示唆されてるんですけど、ものの見事にそのようになって、主人公の受験の過程で見事に家族が再生される様は、もはや感動というよりシャブいものがありました。
あと序盤で主人公を「クズ」呼ばわりする学校の教師として安田顕さんがキャスティングされているのですが、こともあろうに「お前が合格したら裸で逆立ちして校庭一周してやる」と啖呵を切るんです。
もうこれに関しては「裸で逆立ちして校庭一周優先のキャスティングだろ!」と、テレビに向かって大声で叫んでる自分がいました。
そう、これは予定調和という名の覚せい剤。しかも精製された高純度の上モノです。こうした高純度のシャブい予定調和がつるべ打ちになっており、主人公や家族に感情を移入しようものなら最後、顔面ぐじゅぐじゅにして泣いてしまうのは想像に難くありません。実際私も泣きました。
このシャブさに乗れないという人もいるでしょう。体質的な問題なのでそれも仕方ないとは思います。
このヤクい予定調和感、主人公無双感はライトノベルに通じるものがあります。そう考えると原作タイトルからしてラノベっぽく、狙ってやってるのかもしれません。タイトルでオチが分かっているというのもあって、初見から非常に安心してハイになれる映画って意外に多くない気がします。そういった意味でも稀有な存在なのではないでしょうか?
特に最近、こと物語において予定調和を嫌う風潮がありますが、ここまでやられたら文句を言う人は少ないでしょう。間違いなく見る価値のある一作です。
★★★★
評価基準は以下の通り
★★★★★ 絶対見るべき
★★★★ 見た方がよい
★★★ 惹かれる要素があれば
★★ 他の見た方が…・・・
★ 時間の無駄