「エンキョリレンアイ」
小手鞠るい


 

 

22歳の花音は、海晴と偶然で運命的な出会いをする


その日から、激しくて静かな愛に翻弄される

十三年間の「遠距離恋愛」の物語





出会ってすぐ、お互いを良く知る時間もないまま

アメリカと日本という遠距離恋愛をはじめたふたり



ツライ、といえなくもないが


オバサンの私からしたら

「恋愛初期の一番いい時期を真空パックして保存できる奇跡の関係」



これが、何年かべったり付き合ったあとの遠距離恋愛なら全然話は別だが


なんたって肉体関係もないままなんだもの


ふつうの恋愛関係なら、数ヶ月とない純粋に美しい時期を

そのままキープできるのです



たとえば、文中に海晴の

「要するに投資というのは賭けそのものだから、勝つか負けるか、騙すか騙されるかの世界でね」

ってセリフがあるんですが



普通の状態でこんなん語る男が目の前にいたら

「ほっほぅ〜ニヤニヤ」とか思っちゃいますけど

ニヤニヤ性格悪いババァだな




恋しはじめたばかりの、ほとんど触れ合ったこともない遠距離の男性だったら

「ステキぃ…!ラブ」って思うかもしれん

真顔なんせ22歳だしな



圧倒的な距離を挟んでも

恋愛初期という強烈なパワーを保ったままの二人の恋は


自分にもいつか経験したことのある恋愛初期のキラキラを思い出させてくれます



もちろん、距離があることでの寂しさや苦悩も描かれますが



この二人は、恋愛の開始時点ですでに遠距離なので


恋愛初期のキラキラをぶっ壊すほどの障害にはならないんだろうな




やがて、大きな分岐点がふたりの恋に訪れますが

ふつうならここで
恋愛パワーで乗り越えて幸せになるか
このまま終焉を迎えるかだと思うのですが


花音と海晴の恋は違う

それさえも真空パックされます


これは意外な展開


そのままさらに12年経っちゃうんだから!
滝汗真空パックスゴすぎ


その真空パックがついに開封されるとき…
物語の最後に待ち受けるあらたな展開は想像もつかないことでした



これは奇跡と言ってよいでしょう
なにが奇跡って、くりかえしになりますが

恋愛初期のキラキラした美しい部分が
どんなに距離や時間が阻んでも
そのまま失われていないところです


恋の真空パック、恐るべし


父の日