ももクロの終焉。
ももクロが全盛だった時代から15年
すでにももクロはその輝きを失いかけていた。
ライブには人が集まらなくなり、
最早アリーナを埋める事さえ出来なくなっていた。
私達もうこのまま終わっちゃうのかな、もう大きなライブは出来ないのかな、モノノフさん達はもう私達に飽きちゃったのかな、
彼女らの心には諦めに似た感情が渦巻いている。
リーダーの夏菜子にはしかしまだ、最後の夢が残っていた。
新国立競技場でのライブ、
最早今のももクロでは埋まるはずもないその会場でのライブを、夏菜子だけはまだ諦めてはいなかった。
唯一続いていたラジオ番組、数少ない生放送のチャンスに夏菜子は意を決して発表する。
「来年の3月15日新国立競技場で、ももいろクローバーZの解散ライブを行います。」
誰の了解も得ず、誰にも相談せずに、
夏菜子の独断の発表だった。
埋まるわけが無い、その前にそんな大規模ライブを行える程の体力は、
ももクロ運営には最早残ってはいなかった。
しかし川上氏は立ち上がる。
最後のこの娘らの夢を叶える為に、
夢を見させてくれたこの娘らへ最後の餞けに。
夏菜子の一言から全てが動き出す。
やりもしないで諦めるのは止めよう。
川上氏はその日から全力で各方面に頭を下げて回る。
次々に協力者達が声をあげた。
武部氏率いる、かつてのダウンタウンももクロバンドのメンバー達。
「ももクロの解散ライブだって?
俺たちが演奏しなきゃ始まらんでしょ」
ももクロの為に、この娘らの為に、
かつての仲間達が次々に協力を申し出る。
そしてとうとう本当に開催される事となった。
メンバーの発案でデビュー曲から、それまでの全シングルとアルバムタイトル曲を全てやる事にした。
楽曲数は40曲を超え、5時間越えのライブになる。
メンバーの眼に失われかけていた力が戻ってくる。
絶対に成功させてみせる。
今迄で最高のライブにしてみせる。
レッスンは熾烈を極めた。
運営より公式発表がなされると、
かつてモノノフと呼ばれし者達の心に再びあの頃の興奮が蘇る。
ある者はクローゼットの奥から色褪せたパーカーやTシャツを引っ張り出し、ある者は煤けてしまった法被や特攻服を抱き締めて、もう一度あの日の輝きを、もう一度あの日見た夢を、再び。
そして3月15日がやってくる。
収容8万人を超える新国立競技場。
その日その巨大会場はモノノフ達で5色に埋め尽くされていた。
オーバーチュアが響くその前に、
会場には1つのコールが響き渡っていた。
「世界のももクロNo. 1」
聞いたことのない大歓声で、8万人が1つとなり叫び続けている。
舞台裏でその声を聞いたメンバーは、
泣き崩れる。
やがて意を決すると、ももクロはステージへと飛び出していった。
メンバーが飛び出していくと、会場中から悲鳴にも似た大歓声が湧き上がる。
そこに居たのはかつて、そして今も、
ももクロを愛し、元気を貰い、共に夢を見た仲間達。
例えグッズは煤けても、その心の輝きを失わなかった誇り高き者達。
その名はモノノフ。
「ありがとう」
「やめないでぇーっ
「ももクロ最高」
それからそれぞれの推しの名を呼ぶ者達。
ありとあらゆる歓声で国立競技場が湧き上がる。
メンバー達も初めて味わう程の熱気大歓声が、メンバーに力をみなぎらせていく。
そう、笑顔の天下は守られていたのだ。
かつてモノノフと呼ばれし者達の心の中に、確かに生きていた。
決してその輝きを失った訳ではなかった。
これまでのももクロの活動や想いは、
日本中いや、世界中の何十万という人々の心に息衝いていたのだ。
メンバーはそのことを確信した。
そしてメンバー全員で歓声に応える。
「みんなぁーっありがとぉーっ」
曲のイントロが流れ始める。
もちろん、ももいろパンチ。
ドォーッン、まるで爆弾でも落ちたかのような更なる大歓声が、国立競技場を揺らした。
メンバーはスタートから一気に畳み掛ける。
そうそれはまるで最初の国立競技場のライブの時の様に。
そして涙でグシャグシャのまま、さいっこうの笑顔を見せた。
初めて見る広大なサイリウムの海。
そして彼女らはまだ全く衰えてはいなかった。
いや、むしろ遥かに成長し圧倒的な迄の存在感で、会場を痺れさせた。
観客は皆号泣している。
終わりが近づく恐怖を振り払うかの様に、喉も枯れんばかりに声援を送った。
何度かのお馴染みの茶番劇やMCを挟み、ライブは終盤に。
張り裂けそうな想いをそこにいる者全てが抱えたまま、アンコールも終え、最後のMCになった。
夏菜子が最早泣いているのか、笑おうとしているのか、上気した顔からは読み取れない程に複雑な顔をして、
とうとう最後の言葉を発しはじめる。
「今日でももいろクローバーZは終わりです。」
会場中から凄まじい悲鳴が起こる。
夏菜子は静かにその悲鳴が収まるのを待った。
会場が静けさを取り戻す。
「ももいろクローバーZは今日で終わりですが、今日みんなの笑顔を見てハッキリと判った事があります。」
会場がざわつく。
「それは私達はまだまだ諦めちゃいけないって事です。」
「こんなにも沢山のモノノフさんが、
私達が歌って踊る事を望んでくれている、きっと挫けて居たのは私達。
モノノフさんに教えられました。
私達はまだ終われないって」
その言葉を聞くと会場中が再び爆発する。
「なので今日は解散したももいろクローバーZの再結成式にしたいと思います」
「お前ら全員ついてこーーーーいっ」
もうみんな泣いている。
八万人以上のモノノフが1人残らず号泣している。
今度はモノノフがももクロを助けたのだ。
こうして笑顔の天下は守られた。
きっと永遠に続いていくのだろう。
この娘らの蒔いたタネは確かに大きく育っていた。
永遠に続く、ももクロのヒストリー。