2010年の読書記録です。『はてしない物語(上)』の続きです。

 

 

女王幼ごころの君にモンデン・キントと言う新しい名前を差し上げ、ファンタージェンを滅亡の危機から救い出したバスチアン。女王からお印のアウリンを与えられ新しいファンタージェン王国を望むままに作って行く。だがバスチアンが1つ願い事をする=望みを持つ毎に彼は自分が居た世界(人間世界)での記憶を失くしていった。アウリンの力は無限ではない。自分の記憶を全て失くしてしまった時、バスチアンは人間の世界に戻れなくなってしまう。それに気付きバスチアンを守ろうとしていたアトレーユであったが、バスチアンは魔女サイーデの罠にはまりアトレーユとフッフール迄も遠ざけてしまった。バスチアンは無事に父が待つ人間の世界に帰れるのだろうか?

上巻でもう十分お話は終った様な気がしたのですが、物語はこれからが本番なのです。人間の世界ではただ毎日を送っていたバスチアンがファンタージェンでは誰からも崇められる存在になって行きます。 それと同時に自分の大切な物を失ってしまいます。彼は全てを失くした時、一番大事な事は何かに気付きます。そして本当の彼自信の物語が始まって行くのです。

モンデン・キントはバスチアンに助けてもらいながらその報酬は残酷な物であったと思いました。与えながら奪いもする.......与えられた物よりも奪われた物は大きかった気がします。けれど、滅亡の一歩手前でバスチアンに救いの手が差し伸べられました。これは彼自身の望みでもあったとは思うのですが、モンデンキントのお心であったのではないかとも思いました。

もしバスチアンが英雄気分のままで人間の世界に帰ったとしてもその後幸せになる事は出来なかったのではないでしょうか。全てを失ったからこそ、本当に大事な事......自分自身を愛する事やお父さんへの気持ちに気付いたのだと思います。そしてお母さんの死後、閉ざされていたお父さんの心の氷も溶かす事が出来たのだと思います。

このお話は単なるファンタジーではないと思います。読む人によって受け取るメッセージが違う不思議な物語です。