『何がしたいかわからないあなたへ』立ち読みコーナー
世の中には仕事を何度も変える人がいる。
もちろん、本人はもっとたくさんの給料を得たいとか、独立して自由に働きたいとか、今よりもっといい環境で働きたいなどなど、
もっともらしい理由を口にはするが、実際のところは疑わしい。何かを始めてうまくいかずに、やむなく変えるというのが一般的なのかも知れない。
私は自社の中途採用の面接官を何度もしたことがあるが、ほとんどの場合、今の会社の不満から抜け出したいという思いが見え隠れする。
そんな人がいくら前向きなことを口先だけで話したところで、必ずボロが出てしまい合格には至らない。
新卒採用と中途採用の大きな違いは、人数を確保したいのか、良い人材を選びたいのか。それに尽きる。
中途採用はもちろん後者だ。企業側としては人員不足に対応するためとして募集するわけだが、
実際、合格までのハードルは中途採用の方がかなり高いといえるだろう。
企業の採用の話はひとつの例に過ぎないが、現状に不満を持ちやすい人は、
何度環境を変えたところで数年するとまた必ず不満が生まれ、その場から逃げ出したくなる。
仕事も家族でさえもそれは例外ではない。
そして、その逃げ出した先にも不満を感じるようになると『何がしたいかわからない』と嘆くのだ。
現状に不満があるだけなのに、それを認められず本来の自分の求める姿ではないと決めつけたり、本当にしたいことをしていないと理由づけしてしまう。
はたまた、自分の本当の力量を周りが誰も評価してくれないと他人のせいにして現状に不満を持つ。
こんな人たちは、どれだけ長く生き、何をしていたとしても『不満とやりたいこと』を結び付けて考えてしまい、
不満であることを『やりたいことができない』からだと結論づけてしまう。かといって、自分の理想とする環境や人間関係など絶対に手に入るはずもない。
すべては『ない』にたどりつき、そして『何がしたいかわらない』につながってしまう。
先日、天に召された渡辺和子さんの名著『置かれた場所で咲きなさい』という本がある。
この本のすごいところは、タイトルだけで何がいいたいかすべてがわかってしまうところだ。
とりわけ、今までお話してきた『現状』=『置かれた場所』に不満を持つ人にはぴったりの本といえるだろう。
自分の今いる場所。物理的な意味でも論理的な意味でも置かれている場所。
それは他の誰でもない、あなたが選んだ場所なんだということに気づいてほしい。
誰かのせいにするのは簡単だが、誰に何をいわれたとしても、
最終的に決断したのは自分であること。
自分の道を歩くのは自分でしかないこと。
そして、あなたの道はあなたの前にだけずっと伸び続けていること。
この大前提をもう一度腑に落とすことができれば、
『現状の不満』 = 『足りないもの』
ではなく、
『現状の充足感』 = 『すでに持っているもの』
に目がいくようになる。
一度、目を閉じてしっかりと考えてみてほしい。
今の環境であなたが持っているもの。それがあなたを満たす唯一のものであることを。
上や隣を見ればきりがない。下を見て安心しようにも、やっぱりきりがない。それでも、自分は満たされていると気づくこと。
これが、現状の不満を何がしたいかわからないに結びつけないための、たったひとつの方法といえる。
あなたの何倍もの給料を稼ぐ人が、子供が言うことを聞かないと本気で悩んでいること。
あなたよりずっと偉い人が、責任の重さに押しつぶされそうになっていること。
やっとの思いで見つけた結婚相手とケンカばかりしていること。
社長が自分の会社の中に友人を作れず、ずっと孤独なこと。
東大を出たのに借金まみれの人。
大好きなことをするために、それ以上の苦しいことに耐えている人。
リストラされてしまい、仕事など何でもいいのに再就職できない人。
ストレスで突然死する一国の長。
現状にそれぞれ差があるのは当たり前のこと。ただ、あなたの現状は、あなたのものでしかない。
他人の現状を、本当の姿も見えないまま羨ましがることに何の意味もないということに気づくと、
やっと自分の姿に目を向けられ、うっすらと自分の姿が見えてくる。
どんな現状も、そこで咲くことを考えれば、そこがそのままあなたの居場所となる。
そういった健全に諦められる心を持つことで、あなたはすでに最善の場所にいることに気づくことができる。
何がしたいかわからないと嘆く前に、自分がいったい何をしているのか。
こんなことにしっかりと目を向ければ、現状には不満も充足も当たり前にあり、
不満に目を向けてばかりに人には居心地が悪く、充足に目を向けている人にとっては心地の良い場所だと気づく。
それらがまったく同じ場所であることもまた、変えようのない事実だ。
結局、人は一本の道しか歩くことができない。受験に失敗し第2志望の学校を出た人に
『もし、第1志望の学校に受かっていれば』はないのだ。
通り過ぎた道を遡って、そこかしこにある『もしも』を憂いでも絶対にそこに戻ることはできない。
過去のもしもに縛られて生きることも、また意味がないこと。
今、あなたは最善の場所で自分の選択した自分がやりたいことをやっている。
まず、ここから始めて『ある』ものを探すことで、あなたの心は安らぐことと思います。
この本のテーマ、『何がしたいかわからない』
実は、この世の中の人全員が常に何かをしており、それには大きな意味があるということがお伝えしたかったんです。
むしろ、『何がしたいかわからない』と思い悩める人は、向上心がありつつ現状も維持できている幸せな人なんだと思います。
あなたは今この瞬間、必ず何かをしています。引きこもっていようが、病気と闘っていようが、極端な話、何もしていなかったとしても
何もしていないということを『している』と解釈することさえできないことはありません。
人生を長く生きていると、自分の人生が本当にこのままでいいんだろうか?と考えてしまう瞬間は誰にも何度でもあります。
もちろん私にも何度もありました。これからも何度も訪れるでしょう。そう考えてしまうことは悪いことだとは思っていません。
ただ、ひとつだけアドバイスさせていただくと、今していることを自分で否定することには本当に何の意味もありません。
すべての悩みは、自分で自分を否定することから始まります。例え他人に否定されたことが気になってしまったとしても
気にしているのはあなたであって、もしかしたらそうかもと思ってしまうのもあなたなんです。
自分よりも収入の多い人を羨むのも、友人が建てた大きな家を見て悔しがるのも、すべてはあなたの感情がもたらすこと。
誰のせいでもないんです。
世の中は不条理にできており、とても公平などといえる状態ではありません。そう考えると、今の気に入らない現状を
世間、はたまた日本のせいにしたくもなります。ただ、日本をいくら非難したところで、あなたの現状は何も変わらないでしょう。
イライラした気持ちの分だけ、あなたがあなたの心をすり減らし必要のないココロの疲れだけが溜まり続けてしまいます。
自分だけが気に入らないことを、誰かや何かのせいにすることで完全に気がおさまるなら、そうすればいい。
でもほとんどの場合、イライラはおさまることなく、それはむしろ増幅され、また新たな『的となる何か』を求めてさまよい、
どんどん自分の本心から目を背けていきます。最近のネット上での叩きや誹謗中傷は、とどまることを知りません。
自分のイライラに正義感という偽の鎧を被せて、さも正しいことをしているかのように『的』を攻撃する。そんな人がどんどん増えていく今の世の中に、
一人ひとりがため込んでいる鬱憤が計り知れない大きさであることが伺えます。自分のホントの気持ちには目もくれず誰かを叩き安心しようとする。
こんな人がどんどん増えると、『何がしたいかわからない』人は増えてしまいます。
しっかりと自分の感情を自分が気にしてあげることで、あなたのイライラは解消され、
『何がしたいかわからない』
から
『今、自分はこれをしている』
に、きっと心が変化します。そして、あなたの心はおだやかになり楽に生きていくことができます。
『何がしたいかわからない』というのは、自分の現状に不満があることを人のせいにしたい心の裏返し。
何がしたいかわからないと嘆くよりも、今まさにあなたがしていることに目を向けましょう。
自分を否定することなく、あー今、私はこんなことをしていると認識しそれをじっくり味わうことで、今の充足感を感じやすくなります。
あなたの周りには素晴らしい人たちがいて、いつも優しく接してくれる。腹が減れば、何かしらで満たすことができる。
雨が降れば、雨宿りする場所があり、夜は暖かい布団で眠ることができる。
それ以上の幸せはありません。
もっと、もっとと望まない限り、今のあなたが今のあなたの器をしっかりと満たしていることに気づけます。
あなたの器はあなただけのもの。その器だけが満たされていれば、あなたにとっては十分なんです。
あなたは、あなただけの人生をしっかりと生きてください。
周りと比べず
小さな幸せを見つけ
心おだやかに
あなただけの人生を、楽に生きましょう。
あなたの人生は、あなたが楽しむためにあるんです。
<本書内容>
はじめに
第一章 受入れられない自分
一-一・人生を楽に生きるために
普通ってなんだろう
俯瞰
一-二・あなたがすでに持っているモノ
モノがもたらす幸せ
不便の中にある幸せ
一-三・他人に受け入れてもらう
感じる言葉
受け入れる
一-四・起きたことの意味を知るとき
苦しい記憶は乗り越えた経験
一-五・無自覚の知
自覚できない自分のこと
一-六・生きづらい人 ~恥をかきたくない~
あなたの恥は誰かの普通
一-七・人生の分岐点
人生とは選択の連続
一-八・やめてもいい
なくならない悩みの行き先
第二章 生きて『いる』のか生きて『いく』のか
二-一・生きて『いる』のか生きて『いく』のか
地球に生きて『いる』ものたち
いのちは自然に還り新たないのちを生む
なぜ人はあらゆるいのちを奪ってしまうのか
二-二・見せかけの自分とホントの自分
若かりしころからのクセ
内面的な虚像
第三章 人の優しさを失わないために
三-一・便利さが奪ったもの
システムエンジニアの憂鬱
便利さが奪うたいせつなこと
三-二・他人の痛み、自分の痛み
心だって痛むもの
三-三・優しい花火大会
第四章 何がしたいかわからない
四-一・『何がしたいかわからない』の本質
人も羨む人生のはずが・・・
人生はこれから始まるというのに
やりとげた後の虚無感
働いて働いて。それでもわからないことだらけ
やるやる症候群
満たされない恵まれた主婦たち
四-二・別の悩みを『何がしたいかわからない』にすり替えてしまう
人間嫌いは本当に人間が嫌いなのか
自分の不満にさえ見返りを求てしまう
四-三・サラリーマンの憂鬱
矛盾だらけの資本主義社会に生きて
サラリーマンという仕事
四-四・気づけない親の呪縛
愛すべき自由人
ご立派な視野の狭い親たち
お金に支配される
第五章 そこは行き止まりなのか
五-一・出口はひとつじゃない
姿を変え続ける理想の自分
五-二・闇の中の光
凝り固まった古いオトナ
人生の暗闇は本当に暗いのか
五-三・あなたはひとりじゃない
ひとりぼっちの引きこもり
人と関わらずに生きることはできない
五-四・ココロの休めかた
モチベーションはコントロールできない
五-五・泣ける人
泣けといわれても・・・
泣きたいのに泣かないオトナ
第六章 ただ日々を生きる
六ー一・モアイ像を作り続けた人々
なぜ続けるのか
六ー二・ゆだねるということ
Let it be
宇宙と神
六-三・ムダをたいせつに生きる
誰にとってムダなのか
窮屈すぎる世の中
ムダを楽しむとムダではなくなる
六-四・『やるべきこと』の思い込み
人それぞれのやるべきこと
それってホントにやるべきこと?
六-五・日常のありがたみ
奪われた日常と戻りたい日常
第七章 中村美幸さんが教えてくれたこと
七-一・『いのち』とは、別れる悲しさではなく出会えた奇跡と共に過ごす幸せな時間
七-二・腑に落ちる言葉
七-三・ペットを飼えなかった私
七-四・震える魂
おわりに
本当のおわりに
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