「だから、君がこんなにも強情でいる理由はもしかして・・・・。」
言葉を濁しながら周囲を窺ったトギが、小さい声で囁いた。
「後ろ盾となってくれる誰かがいるんだろ?」
「後ろ盾となってくれる誰かですか?」
「なに、だからそんな感じの人がいるんだろ。」
「そんな感じの人とは?」
ラオンに言葉の意味が通じないので、トギはじれったそうな表情で胸を叩いた。
「この宮殿に君が信じて頼れる人がいるのかと言うのだ。」
「あぁ、そういうことですか?そのような人ならいるにはいます。」
「いる?やっぱりそうだと思った。」
トギは大きな好奇心を覗かせ、ラオンの顎の下へと接近して来た。
「誰だ?どんな官職に就いている方が君の後ろ盾となってくれる者なのだ?」
「花草書生とキムヒョンと言って。特にどんな官職に就いているのかは知らないのですが・・。宮殿で私が頼ることのできる方々ではあります。」
「なに?何の官職か知らない?それはどういうことか?」
「一人は一日中大梁の上にいらっしゃって、他の一人は、特に仕事もないように見えるのに、いつも忙しいとおっしゃっている方です。」
「大梁の上?仕事がなく見える?」
ラオンの言葉に、トギの表情が興味の冷めたものになった。
「聞いたところ、星を見ない両班たちのようだな。」
「宮殿にそんな人たちがたくさんいらっしゃるのですか?」
そうでなくとも、その二人が何をする人たちなのか知りたかったところだった。ラオンが問い返すと、トギが短い首を頷きながら、分かった風に言った。
「そんな人たちがたまにいるんだ。庶子(ソオル)身分の武官だったり、あるいは、権力者の列に入れなかった田舎出身の官吏たちがしばしば閑職に引き下がって、無駄飯を食らっているらしい。」
「あぁ、そうなのですか。」
聞いてみると、そんな感じだ。
キムヒョンと花草書生も、私のようにコネづくりを間違えた人たちなのね。
どうしてだか二人に対して、同病相憐れむ痛みが感じられた。ラオンが少し切ない表情をしていると、トギが突然、指を三本立てた。
「この宮殿で、力もなく、後ろ盾もない私たちのような内官たちは、気を付けなければならない人が三人いる。その一人目が、実にミョンオン公主(コンジュ)様だ。公主媽媽(コンジュママ)のことについて申し上げれば、主上殿下(チュサンチョナ)と世子邸下(セジャチョハ)が最も大事にされている方でいらっしゃるので。しかし、その性格がかなり気難しい。その方の目に一度過ちが触れると・・・。」
トギが、突然身体をぶるぶると震えさせた。
「とにかく、この宮殿で生きていくためには、ミョンオン公主様の目の内にいなければならない。それから、二番目に気を付けなければならない人が、あの大妃殿(デビチョン)のソン内官だ。」
あぁ、二番目に気を付けなければならない人に目をつけられたのね・・。
ラオンが落胆していたが、トギの声は続いた。
「そして、最後の三番目が・・・・。」
トギが最後の言葉を言おうとした刹那、荒々しい声と共に、二人のそばに人相の悪い宦官が近づいてきた。
「そこ、お前たち二人!何の話がそうも多いのか。基本姿勢と教育場の広場を回る命を忘れたのか?」
その荒々しい勢いに、トギが身をすくめながら、ラオンに囁いた。
「あいつだよ。教育生たちを管理するマ内官と言うのは。この宮殿で注意しなければならない三番目の人物。名前がマ・チョンジャ。気性が荒いことで有名な奴で、私たちの間では、ケチョンジャ(犬チョンジャ:犬は軽蔑の言葉です)と呼んでいる。わけもなく因縁をつけてきて余計に荒々しくなるから、君も気を付けろよ。」
言葉を終えたトギは、マ内官から一番離れたところへと小走りしていった。
「そこのお前。初日から油を売ろうなんてことは考えるな!」
ラオンのまさに目の前まで迫ったマ内官が目を剥いた。マ内官の目が不満の色で溢れた。
「・・・・。」
どうしたって私、注意しなければいけない三番目の人にももう目をつけられたみたい。
急いで腰を曲げると、視線をつま先へと向けたラオンは、小走りで庭を回り始めた。
***
宦官とは、宮室の朝を始め、晩を閉める者たちであると言ったチン内官の言葉は事実だった。きつい日課は、宮門が閉じた後に終わった。疲れ果てた身体を引きづって、資善堂まで帰って来ると、大梁の上から無情な声が飛んできた。
「やっと帰って来たのか?」
「はい。」
力なく返事をしたラオンは、床にばたりと倒れ込んだ。
「キムヒョン。」
「・・・・・。」
「キムヒョンも、新参礼をしなかったので目をつけられたのですか?」
「何の戯言を言っている?」
「では、まさか庶子出身なのですか?」
「どこで何を聞いてきたんだ?」
「いえ、気になったので聞いたのです。キムヒョンはどんな理由でこのような廃墟にいらっしゃるのかと。」
暫くの間、沈黙が訪れた。
やっぱり答えたくないみたいね。
ラオンは答えを聞くことは諦めて、自分の疲れた脚を揉み始めた。その時、大梁の上から、低い呟きが聞こえてきた。
「・・・・・俺のような者にはこんな場所が似合うからだ。」
ふと、手を止めたラオンが、頭を上げてビョンヨンを見上げた。
「キムヒョンのような方とは、どんな方なのですか?」
「・・・・・・。」
「キムヒョン。」
「寝ろ。これ以上うるさくするな。」
ビョンヨンはラオンに背を向けたまま、目を閉じた。
「キムヒョン。」
読んでは見たが、答えは聞こえては来なかった。二人の間に、見えない頑丈な壁が建てられたようだった。その厚くて高い壁の前で、ラオンは何も話すことはできなかった。
***
召喚内官たちの朝は、夜明けの星がまだ消える前から始まった。薄明るい夜明け、教育場の広場の上に、朗々とした声が響いた。
「不通(プルトン)!不通(プルトン)!」
額に付いた二枚の不通。それでもラオンは、口元に笑みを浮かべた。
今日は二枚だ。内侍府を百周回ったらいい。
初日よりも一枚少なくなった不通の数に、ラオンは内心喜んだ。
「情けない奴。」
不通を受けても、そのようにすっきりした笑みを見せるとは。情けない視線でラオンをじっと見つめたチン内官が礼儀の優等生の行列を率いて、行廊斎(ヘンランチェ)の中へと消えた。その後ろに向かって、ぺこりと頭を下げたラオンは、内侍の雰囲気で姿勢を構えた。
「腰を曲げて視線はつま先へ。それから、歩幅は一尺を超えないように。絶対に、足音は立ててはならない。」
ラオンは独り言を言いながら、教育場の広場を回り始めた。後ろでは、他の召喚宦官たちとお喋りをするお喋りトギの声が聞こえてきた。中宮殿(チュングンジョン)のヒャングムと守門将(スムンジャン)が、愛を交わしているんじゃないかと言う噂と共に、ヒャングムの普段の振る舞いが話題に上がったかと思うと、誰が誰に目をつけただのという詳細な話の後に、トギが目を輝かせながら、新しい話題性の話を持ち出した。
「ところで、サンヨル、あの噂は聞いたか?」
「何の噂?」
「ミョンオン公主媽媽の病状が尋常じゃぁないようだ。」
「コイツ。それがいつの話でここに来てまた今さら言うんだ。公主媽媽が発病なされて何日になる。」
「君はもう知っていたのか?」
「知ってるだけじゃない。なんの理由であようにの床に臥せっておいでなのかまで知ってるさ。」
「その理由は何だ?」
「それは・・・・・。いや、駄目だ。聞かなかったことにしてくれ。」
「サンヨリ(サンヨルの呼びかけ方です)、コイツ。人が心配してるっていうのに。」
「これは言っちゃぁ駄目なんだ。」
「言ってみろ。私が誰だ?トギだぞ。君と一番近しい友、トギ。」
「それでもこれは秘密なんだ。」
「君、本当にそんなことするのか。」
「じゃあ君だけに教えるから。これは絶対、絶対秘密だぞ。」
暫く周りを見回したサンヨルが、うんと小さな声で囁いた。
「実は、公主媽媽(コンジュママ)は恋煩い(サンサピョン)になったらしい。」
「恋煩い?」
「しっ!コイツ。声が大きすぎる!」
「あぁ、分かった。あまりにも驚いたもんで。公主媽媽(コンジュママ)がどなただと。世の中の男たちは皆足元に見下ろすような傲慢な方ではないか。そんな傲慢な方が、恋煩いだって。ところで、一体だれを恋慕されて病気にまでなられたと言うんだ?」
「それを誰が知っているもんか。公主媽媽は貝のようにじっと口を噤んでいらっしゃるのに。彼女の本音を知る者がどこにいるもんか。とにかくこれは、絶対秘密だぞ。」
「心配するな。私の口がどれだけ硬いかは君が一番よく分かっているじゃないか。」
二人の会話を聞いていたラオンは、ぷっと笑いを噴出してしまった。トギを知ってからまだ数日も経っていなかったが、彼の口がどんなに軽いかは、ラオンも十分に知っていた。お喋りトギが公主媽媽の病気について知った以上、もう宮殿にこの事実を知らない者はいなくなったようなものだった。ところで、尊い公主媽媽の心を盗んだ男は一体誰なんだろう?その気高い方を恋煩いにしてしまうなんて絶対に容姿端麗な美男子なのね。
一体誰かしら、その容姿端麗美男子って?
二人のお喋りはその後も暫く続いた。清国(チョンナラ)で、新たに入った白粉(ペクプン)話と、なかなか整えるのが難しい世子邸下の正確の話が続いた。
男たちのお喋りは終わりがないわね。
中々終わらない二人の宦官の会話に、ラオンは舌を巻いた。チャン内官をお喋りだと言っていたが、そんなものではなかった。この二人に比べれば、チャン内官はそれこそ鳥のさえずりほどだった。百周を回る間、ラオンは耳が擦り切れるくらい多くの話を聞いた。おかげで退屈することはなかったが、蜂の群れが、耳の中に入ったくらい、耳が詰まった。広場を回る罰を終えたラオンは、うんざりした顔で、行廊斎(ヘンランチェ)の縁側に腰を下ろした。
その時、少しの間、一息ついていた彼女へと、誰かが近づいてきた。ラオンが宮殿で避けなければならない、三番目の人物である、マ・チョンジャだった。早朝から、思い切り不機嫌そうな表情のマ・チョンジャが、いきなりラオンに声をかけた。
「ホン・ラオン!」
「はい。」
「今日朝、世子邸下の寝所は君が掃除するようにとの、ソン内官の命だ。」
瞬間、おしゃべりをしていた宦官たちの声がぴたりと止まった。皆息を殺したまま、ラオンの方をじっと見つめた。
「・・・・・・?」
どうして皆そんな表情をするの?
ラオンに向かってくる人々の視線、まるで、屠殺場へと連れていかれる幼い子牛を見つめる眼差しだった。
どうしてなの??
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あっという間に、五月ですね!!
そして!!楽しみだった百想が終わりました!!(///∇//)
あ~~~~もう最高でしたね・°・(ノД`)・°・
年末からず~~~っとずっと、楽しみにしていた二人のツーショットが!しかも、あんなにも堂々とした、とても仲のいいツーショットが、たくさん見れました(*´艸`*)
想像以上ですっごく嬉しかったです!!
緊張で手に力の入ったユジョンちゃんを見て、余計に、ボゴム君が堂々と隣で自然に笑っててくれて、感動でした。:゚(。ノω\。)゚・。 ウワァーン
↑すっごく緊張してたんだろうね!!
ボゴム君がいてくれて笑わせてくれて、ほんときゅんきゅんしましたо(ж>▽<)y ☆
ボゴム君がユジョンちゃんにさらっと聞いて、一瞬で蝶ネクタイ、ユジョンちゃんが直してくれたりね!
こんなとこで(笑)
これ、一瞬なんですが(笑)ほんとグッジョブな写真です♡
ボゴム君からどう?って感じで一瞬聞いた後、
ユジョンちゃんがくいくいって、ボゴム君の腕ひっぱってから、こっち向かせるのね。
下手なドラマよりキュンキュンしたんですけど!!(♡ >ω< ♡)
自然なんですよね~☆ありがとうボゴム君が、ありがとうって言わないし♡
韓国では親しければ親しいほど、ちょっとしたことで「ありがとう」や「ごめん」って、言わないんですって。言いすぎたら喧嘩になるくらい。
ここから始まって、
AAAで、ツーショットが見れた後、ずっと見れなくて・・・
本当に、嬉しかったです♪
動画もたくさん上がってるから、楽しみましょうね(///∇//)
これでヨン世子とクルミとさようならなんて、悲しい・・
ということで、またぼちぼち、ここから始めますね♪楽しんでくださっている方がいらっしゃれば嬉しいです♪