遠くから、子時(チャシ:午後11時~午前1時)を知らせる鐘の音が聞こえてきた。ヨンは書籍の一番最後の頁を閉じながら、固まっていた肩を軽く叩いた。
「もうこんな時間か。」
呟きながら席を払って、立ち上がろうとした時だった。後ろからポンッ、鈍重な音が聞こえてきた。ヨンの視線が後ろへと向かった。ラオンが被っていた官帽(クァンモ)がヨンの足元へとコロコロコロと、転がって来た。寝ないと、絶対に眠くないと、大口を叩いたラオンが、こっくりこっくりと居眠りをして、官帽を落としたようだった。彼の目に、目いっぱい身を縮めたまま眠ったラオンの姿が入ってきた。
「小さな奴が意地っぱりで本当に頑固な奴だな。」
昨晩は畏れ多くも私の肩にもたれて眠りについた奴が。今になって今更過ちだと言うとは、とんでもないことだった。
昨晩コイツに少しの間肩を貸してやるつもりが、寅時(インシ:午前3時~5時)までぶっ通しでその場に捕まっていなければならなかった。ふるい落とそうという考えさえ行動に移せば、いつだって振り落とせるところだった。しかし、深い眠りを邪魔したくはなかった。
実は、さっきラオンに言ったように、昨晩、奴はよだれを垂らしたり、いびきをかいたりはしていなかった。それなのに、そうしないことが健気だと思ってしまうほどに、奴は疲れ果ててぐっすりと眠っていた。
「昨晩は肩が凝るのも甘受して、隣にいさせてやったのに、何がどうだからどうしろと?馴染みの薄い友だと?」
もう一度考えてみても、胸のあたりがむかむかして、無意識に不愛想な言葉が出た。ヨンは眠ったラオンを少し鋭い目つきで睨んで見下ろした。整っている閉じられた瞳、薄く紅潮した両頬に、ツンと澄ました唇。男と見るには、あまりにも綺麗な顔だった。
去勢した男とはこういうものなのか?
宮殿の中の宦官たちを思い浮かべたヨンは、すぐに頭を振った。去勢した男だからと、皆がこのように美しくはない。恐らく、コイツが少し特別でなのだろう。男の顔がこのように綺麗だとは、生まれながらに持った星もあるのだろう。ラオンを見つめるヨンの眼差しが柔らかくなった。その顔に、少し痛ましげな様子が浮かんだ。
その一瞬、ヨン整った眉がふいに歪んだ。
コイツ、顔になぜ擦り傷があるんだ?
時間が経てば自然に消えるほどの小さな傷。しかし、血が固まってできたかさぶたが放置された傷を見ると、妙に心が騒いだ。
「血でも拭いたのか?何がそんなにも忙しくて自分の身体もまともに見られないのか。しかし、この小さな顔にはどうしてこんなにも傷が多いのか?」
独り言を呟いたヨンは、傷を確認するため、眠っているラオンの顔に自分の顔をぐっと近づけた。ところが、その瞬間、うんと縮まっていたまま眠っていたラオンが、不便そうに寝返りをうった。
「ううん・・。」
長く腰を回し、ラオンは壁に寄りかかっていた頭を、反対側へと移した。その瞬間、ふと、口の両側へと、慣れない感触が感じられた。
幼い鳥の羽のように柔らかくて、柔らかい新芽を浮かべたように、しっとりとしていながらも、あまりにも甘美な感じ。夢だとしたら、とても温かく、遥かな夢だった・・・・・と言うには、あまりにも生々しいんじゃない?
眠っていたラオンが、ちらりと、目を開けた。
「・・・・・・!」
たちまち、痺れるような冷たい氷を目いっぱい帯びた瞳が、彼女の目に入ってきた。遥か遠いところを眺めるような目の中に入っているその顔は、ラオン、自分であることは間違いなかった。それだけだろうか?高い鼻は、彼女の頬をくすぐっていた。彼の柔らかな唇は、私の唇を押し付けていた。
一体どうなった状況なの?もしかして・・・これ・・・口づけ?
「今、何をされて・・・いるんですか・・?」
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きゃ♡
次からのやりとりも、笑えますよ(笑)(*`▽´*)ウヒョヒョ
やだ~~~久しぶりにまたまた読んでみたら・・・ヨンの心情が最高じゃないですか(///∇//)
お楽しみに♪