三. 私は何になると言ったっけ?(4) | のあのあlife

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『雲が描いた月明かり(구르미 그린 달빛)』に史上最強にどハマリしてしまい♡2017年も自分の勉強兼ねて原作小説を翻訳しつつ、パク・ボゴム君とキム・ユジョンちゃんのボユカップル、密かに熱烈に応援中です~♡(笑)
2021年4月、またこのブログ再開します☆

五日後、戌時末(スルシマル:午後九時)

晴れた空に、散らばった黒雲が群がって来ると、しとしとと寂しく雨が降り始めた。しかし、仁徳院の柿の木の家に向かうラオンは、雨水に服が濡れず、いや、むしろ雨が降っているかも知らないまま歩いていた。

「家を離れたのは初めてね。」

ラオンの口元に寂しげな笑みが浮かんだ。貴人の助けで得た四百両のお蔭で、タニは神醫(シンウィ)と呼ばれるキム・ソンドン令監(ヨンガム)の治療を受けることができた。このまま続けて治療すれば、半年以内にぐんぐん良くなって起き上がることもできるという神醫の言葉に、ラオンは家族で、互いに抱きしめ合ったまましばらく喜びの涙を流した。そのように、以前にはない幸せな日々が過ぎ、今日が来た。貴人と約束した、その日だった。今回、家を離れれば、当分の間は家に帰ることはできない。

ラオンは懐から手のひらに匂い袋を取り出した。しばらく家を離れなければならないという言葉に、タニがくれたものだ。捨てられた端切れを集めて作った匂い袋の中には、去年の秋に取って乾かした花びらが詰まっていた。

匂い袋をあげると、タニは悲しそうに泣いた。鋭敏な子は知っていたのだ。ラオンが家を離れることが、自分の病気と無関係ではないことを。ラオンはタニの背をそっと叩きながら、慰めたりした。

「三年経てば終わる仕事よ。もしかしたら、ちょこちょこ家に帰って来ることもできるかもしれないわ。永遠に別れるわけではないから、悲しまないで。」

泣きじゃくるタニをかろうじてなだめ、やはり涙を流している母を慰めて、ようやく家を出た。遠くまで聞こえてくる母娘の泣き声に、ラオンも胸が詰まってきた。

「あまり心配しないで。無事に帰るから。」

ラオンは匂い袋を再び懐へ入れると、約束するように呟いた。これからの三年は、貴人から融通してもらった四百両を返すため、どうしても宮殿で過ごさなければならない。

一体どんな仕事をするんだろう?

宮殿で自分がすべき仕事が何であるかと、何度も聞いてみたが、貴人は、それはすぐに分かるようになると言うだけだった。大変できつい仕事だと言っていたので、確かに安易ではないはず。だから四百両という莫大な金を、まるで当然のように融通してくれたのだろう。ラオンは、自分に起こりうるあらゆるものを頭の中に描いてみた。最悪の状況に備えられる方法もそれなりに立てた。

「ここなのね。」

柿の木三本が植えられた古い瓦屋。貴人が教えてくれたのは、まさにここだった。ここで、宮殿へ入るための些細な手続きが履行されると言った。ラオンは咳払いをしながら声を高めた。

「もし?どなたか中にいらっしゃいますか?」

何度呼んでも、返事が聞こえることはなかった。

誰もいないってこと?確かに、ここなのに。

ラオンは首を傾げて門を開けた。閉ざされていないように、そびえ立つ門は音もなく開いた。

「誰もいらっしゃいませんか?」

門の中に入ったラオンは、周囲を見回した。

「何奴じゃ?」

暗闇の中で耳に響く声が聞こえてきた。いつ現れたの?目つきが刃のように鋭い男が、行く手を阻んでいた。

「ここで、私が老人のような方と約束があって来ました。」

「嚴公(オムコン)と約束があったと?」

男が妙な目つきでラオンをじっと見た。

「なるほど。」

意味の分からないことを呟いた男は、立ちどころに一方の脇へと身を引いた。ラオンへと、中へ入れと目配せした男は、そのまま背を向けて歩き出した。ラオンは急いでその後を追った。

そうしてどれほど経ったんだろう?男を追って到着したところは、巨大な邸宅の裏庭だった。

裏庭の右の隅の方へと歩いて行った男が、大きく育ちすぎたオオバギボウシ(ビビチュ)の影に、巧みに隠されていた取っ手を引いた。

キィィッ。古い木材がうめき声をあげ、口をぽかんと開けた。扉の奥へと一度足を踏み入れたら、もう二度と抜け出せない地獄のように陰惨な気がぷんぷん漂っていた。男は扉を開けたままで、ラオンへと、頭を振った。

「ここを下りて行けとおっしゃるのですか?」

ラオンが男に向かって尋ねた。男は答える代わりに首を縦に振った。地下へと下る階段を見て、ラオンは息を止めた。石階段のあちこちで炊かれたかがり火が、開いた扉から中へ入って来た風に、炎を揺らした。性質暴悪の鳥類の舌のように。

ラオンの顔に、どうしようもない恐怖感が浮かんだ。しかし、退きはしなかった。その闇の末にある、一筋の希望の光を掴むため、ラオンは、一歩一歩前に踏み出した。

ラオンが地下室に消えるや否や、木の扉は再び堅く、閉ざされた。これで、当分の間、この木の扉は開かれないということだ。

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あと1ページ分で三話が終わるのですが、一旦ここでアップしますね☆

「嚴公(オムコン)」という言葉。辞書にもなく、朝鮮時代の言葉辞書で、韓国人のお友達が、調べてくれました。韓国人のお友達でも初耳だって。で、一応、何か高麗時代の敬称ということで一つだけでたのが、これなんですが・・実際は、どういうつもりでこの言葉が出たのかまだ自信がありません。が、オムコンという人物との約束ではないし、恐らく、この敬称であっているとは思うんですが・・日本語でも出てこないので。。困った~(´Д`;)

 

オオバギボウシ(ビビチュ)というものらしいです♪調べてみました☆本当に言語は底がないですね~☆

 

1/4文章訂正しました。