問題はイスラエルの意図

レバノンのヒズボラへの通信網攻撃はほぼイスラエルの仕業で間違いないと思われる。

ただ最大の問題はなぜ今の時期にこの攻撃をイスラエルが行ったか、その意図が見えないことだ。

今回の攻撃は以前から用意周到に準備された物であり、適切なタイミングで行えば戦争の死命を決するほど極めて効果の高い物だ。

しかしこの奇襲効果は1回きりだろう。

だからこそなぜ今のタイミングなのだろうか?

ヒズボラとの大規模衝突中に行わなかったのか?

疑問は尽きない。

しかしあの合理性を貴ぶイスラエルがこんな有効な手札を軽々しく切るとはとても思えない。

しばらくはイスラエルの行動に注目するべきだ。

結果としてヒズボラはしばらく組織的な行動力を失っている。

何が起こってもおかしくは無い。

 

 手口は簡単

ポケベルやトランシーバーにプラスチック爆薬を仕込み、それを無線で起爆させるという簡単な手口だ。

こういった機器は中にびっしりと部品が詰まっていると考えがちだが、昨今の半導体技術の進歩により多くの部品が統合され、少数のICが乗るだけになっている。その一方で使い勝手の制約で筐体のサイズは変わらないのだから最近の製品の中身はスカスカだ。そこのプラスチック爆薬を仕込むのには十分なスペースがある。

さらにプラスチック爆薬は破壊力が高く、必要な重量はわずか10g程度で良い。重量の差は殆ど無いに等しいので違和感に気づくことは不可能だっただろう。

 

 狙われた改造過程

被害状況は明らかにヒズボラの関係者に集中している。決して無差別ではない。

これが手掛かりになる。

対象の機器は複数国で流通があるにもかかわらず、選択的に攻撃が行われたことから製造過程での混入という選択肢はほぼ無い。

だとすれば改造過程が狙われたと考えるのが妥当だ。

当たり前だが無改造だと通信はイスラエルに傍受・即座に解析されて筒抜けになる。

それを避けるためにヒズボラは暗号化の改造を試みたのだろう。

しかし製品のソースコードはそう簡単に破れるようなものではない。

そんな業者はそう簡単には見つからないのが普通だ。

だからそんな業者が見つかればすぐに飛びつくことになる。

それがイスラエルが用意したダミー会社であっても。

そうしてイスラエルは致命的な通信網攻撃手段を手に入れたわけだ。

 

 メーカーの責任範囲外

当然、このような改造はメーカーの保証責任の範囲外だ。

メーカーは何ら責任を取る必要は無いし、むしろ被害者の側である。