こんにちは。前回のふざけた前置きからだいぶ間があきましたが、いよいよ小説本編をアップしていきます。今回は、主人公6人のプロローグです。
:仮面の囚人
「扉を開け。囚人に話があるそうだ。」
「話、だと?懲役250年の囚人にか?…聞いて無い。」
第一級特殊刑務所。ここは主に大量殺人等の重大な犯罪を行った人間が収容される。そして、この二人がいる先には、刑法改正後初の
超長期刑囚の監獄がある。
「厚生労働省からの指示書だ。…問題無いな。」
サングラスを掛けた男が書類を提示する。
「言っときますけど、何も話しませんよ。覚えちゃいないんだから…」
警備の一人が呟きながら鉄格子を開け、三人はその奥に歩いていく。通路の突き当たりに、何かを封印しているかのような大きな扉があった。警備の二人がその両側に立ち、扉の電子ロックを解除した。一瞬だけ音がした後扉が開き、中から白い霧が漏れ出た。
部屋の中は暗かったが、よく見ると人が一人ベッドに座っていた。
「…久しぶりだな。」
サングラスの男が呼びかけた。
「…何の用だ。」
部屋の中にいた男は、ロボットを思わせるような無機質な仮面を被っていた。
「司法取引だ。お前にオペを頼みたい。」
「俺に…オペを…」
仮面と同じ位無機質な声に、僅かな驚きがあった。
「そうだ。書類がある。…読むか?ゆっくり考えろ。だが…」
言葉が一瞬途切れた。
「お前が命を救う最後のチャンスになる。」
「命を…救う…?」
仮面の奥の赤い相貌が見えた。
「もう一度…俺が…。」
:火の玉GIRL
入江港、倉庫地帯。
倉庫を改装したらしい家の中で暖炉の火が燃えている。壁にはカラフルなポスターが何枚も貼られ、屋内のはずなのに何故か大型バイクが鎮座している。テーブル代わりらしいサッカーゲームの台の上に置かれたマニキュアや化粧品から、かろうじてこの部屋の住人が女性である事が分かる。
「ふ~…」
その時、シャワールームの扉が開き、"住人"が現れた。ローライズのボクサーパンツのみを身に付け、首からタオルを掛けている。そのせいか、彼女のグラビアモデル顔負けの体型がますます強調されている。
と同時に暖炉の上に置かれた携帯電話が鳴り出す。彼女は歩き出し、電話を手に取った。
「はい、二階堂…ああ、医局長?」
"まりあ⁉14番で火災発生よ。直ぐ、応援に向かって!"
この"住人"の名は二階堂まりあ。聖カタリナ総合病院の救急救命医で、かなりの美人として名を馳せる一方、
「…はぁ⁉馬鹿言ってんじゃねぇ、今日は非番だぜ!」
単純直情、傍若無人、男勝りな性格でも有名で、誰が付けたかそのあだ名は、"火の玉ダーティガール"。
"皆、出払ってるのよ!愚痴ってないで早く行きなさい!"
電話の声には怒気が含まれている。
「チッ…仕方ねぇな。次のボーナスに割増付けとけよっ!」
まりあは電話を切ると、おもむろに服を着始め、それが終わると壁のシャッターを開けた。外には暗い港の輪郭がある。
「ヘッ…!行くぜコノヤロー…」
言いながらバイクのスロットルを上げていく。
~*~
「イヤッホ~っ!」
車の無い、夜の国道に彼女の声が響き渡る。
「退け、退け!退けぇ~ぃっ!」
:キャプテン•イーグル
湊園市内のとあるコンビニ。大手チェーン店では無い為、客の出入りは少なめである。だが、この日に限ってはいつもより賑やかだった。
「サ…サッサと金を出せ!早くしろ!」
一人の男がレジにいる店長を脅している。つまり、強盗だった。店内にいた僅かな客も身を縮めて怯えていた。
「…そこまでだ、悪党!」
その時、どこからともなく男の声が響いた。
「…愛と正義の使者、キャプテン•イーグル!」
振り向いた強盗の目に、全身青色のスーツに身を包み、赤いスカーフをたなびかせた巨漢の姿が映った。
「な…コスプレ野郎め、撃ち殺してやる!」
強盗が銃の引鉄に指をかけた瞬間、彼はその下顎に鉛直上向きの力を受けて天井に消えた。
「…店主、怪我は無いか。」
ひと昔前のアメコミヒーローのような格好をした男が呆然としている店長に言う。
「すまないが少し店を壊してしまった…これで直してくれ。」
そう言って彼はテーブルに手を置き、
「…さらばだっ!」
風のように去っていった。
再び元の静けさを取り戻した店内で店長は呟いた。
「…全然足りねぇよ…。」
~*~
花壇には様々な植物が植えられていた。そして、その側に佇む人影があった。2mはあろうかという長身に鍛え抜かれた筋肉。初めて見た者なら格闘家か何かだと思うだろうが、彼の職業はそういったものでは無い。
彼の名は江崎恭一郎。聖カタリナ総合病院所属の整形外科医である。自衛隊員時代から衰えていないその強靭な身体に温厚な心を秘めた彼は、今日も人々に命の素晴らしさを説いている。
:宗家の娘
湊園の一角に立つ豪邸。広大な日本庭園には様々な樹や花が植えられている。
~*~
「…蘇芳様、出立の準備が整いました。」
立ち込める湯煙の中に老年の男の声が聞こえた。
「分かりました。…半蔵、下がっていなさい。」
湯に浸かる人影が垣間見える。
「…御意。」
男の気配が一瞬にして消えた。
~*~
「…常世に有りて天地を守りし八百万の神よ」
言いながら服に袖を通す女が一人。
「我、今日も武の道をひた行かん。…ご照覧あれ!」
彼女は黒宮蘇芳。聖カタリナ総合病院の内視鏡医にして世界規模組織、黒宮財閥のひとり娘である。古来より武家として名の知れたこの家に生まれた彼女は文武両道を信条とし、「可憐なる花の佇まいを要しながら、時として歴戦の勇者の如き強さを見せる」と賞されている。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様!」
彼女の両脇に並んだ人々が一斉にお辞儀をする。
忙しくとも、やり甲斐のある仕事。己の自由を確かめるため、今日も蘇芳は職場へ向かう。
:灰色の日常
「オペレーション、コンプリート!」
「よしっ…次の患者を運べ!」
「御厨先生!こっちもお願いしますっ!患者さんが痙攣して…!」
「クソッ…キリがねぇ!」
「行け!ここは私が…!」
~*~
彼が目を覚ますと、そこにはいつもの見慣れた天井があった。電話の呼び出し音が聞こえている。
「んー…?」
少し薄暗い部屋の中、ソファに寝ていた男が体を起こした。ボサボサの髪を後ろで無造作に結び、顔には無精ヒゲを生やしている。
「…寝ちまったな。」
大きな欠伸をしてソファに座り直した男は、シャツの胸ポケットから煙草を取り出し、一本口に咥えて火を付けた。
御厨薫。それが、この冴えない男の名だった。聖カタリナ総合病院所属の診断専門医であり、ここは病院内の彼の自室である。
ボンヤリと煙草をふかす薫の前で電話が鳴り止み、代わりに留守電の声が響く。
"…理紗よ。自宅に電話しても無駄だと思って。今度の日曜日、護の荷物を取りに行きたいの。……。どうせ…貴方は留守でしょうけど。鍵は…ポストに入れておくわ…"
メッセージはそこで終わった。
「さて…と…」
薫は立ち上がり、そのまま真っ直ぐ部屋のドアへ向かった。
そうして、彼の憂鬱な一日は始まった。
:予期せぬ再会
湊園法医学研究所(通称、湊法研)所長室。
一人の男が書類にサインをしている。広い部屋にノックの音が響く。
「…入りたまえ。」
ドアが開くと、そこに背の高い、端正な顔をした女が独り、立っていた。
「剣持所長、お呼びでしょうか。」
「おはよう、由良君。今朝、湊園署から君宛に連絡があってね。…至急、現場に向かって貰いたい。」
「…私は法医学者です。警察官になった覚えはありませんが。」
由良と呼ばれた女は無表情のまま言った。
「そう言わないでくれ、無下には断われんよ。」
由良ナオミ。日系3世のアメリカ人で、かつてはアメリカで外科医をしていたが、現在は日本国籍を取得し、この研究所に勤務している。
「……。分かりました、では…」
そのまま部屋を出ようとするナオミに所長が声をかける。
「ああ、由良君。もう一つ…」
部屋の奥から細身のスーツを着た男が出て来た。
「彼が署の方の担当者だ。挨拶しておきたまえ。」
「…?貴方…」
彼女は、目の前の人物に見覚えがあった。
「湊園署捜査一課刑事の、安斎です。…よろしくお願いします。」
「……。ええ、よろしく。」
~*~
「…どういうつもり?貴方が刑事なんて、何かの冗談でしょう。」
研究所の中央ホールを歩きながらナオミは言った。
「…怒らないで下さいよ。お会いするのは、例の事件以来ですね?証人保護プログラムを適用された貴女と違って、こっちは苦労しているんです。」
突然、ナオミが立ち止まった。
「Shut up(黙りなさい).…良い、私がここにいるのはビジネスよ。貴方が名前を偽ろうと、刑事になっていようと、私には関係無い。…私の前で、二度と過去の話はしないで。」
「…分かりました。」
安斎は素直に従った。
「Good…」
再び歩き始めたナオミを安斎が呼び止める。
「おっと…何処へ行くつもりですか?」
「…現場よ。場所はGPSに転送しておいて。」
「あ…では、正面に車を…」
「貴方はここで待機。私が行く事を、現場へ連絡しておきなさい。」
「え…⁉ですが、その…」
ナオミは安斎に近寄り、彼のネクタイを軽く締めながら言った。
「…良いネクタイね、little guy.大人しくしていなさい?」
「え…?あ、ドクター⁉」
相手を呆然とさせる事に成功した彼女は、早足でホールを出て行ってしまい、完全に置いてけぼりにされた安斎は独り溜息をついた。
「やれやれ…」
研究所の門から黒い車が一台、事件現場へと走っていった。
と言うわけで(どういうわけで)プロローグでした。キャラたちの名前は完全に独断と偏見とそのときの気分で決めました。こんな低クオリティーですが、これからもよろしくお願いします。
p.s.
検視編で、リトル・ボーイがlittle guyになっているのには訳があります。
以前、英語のスラングを調べていたときに偶然見つけてしまったんです。意味は…ま、まあ勇気のある方は調べてみてください。これを知ったとき、私はショックで一週間くらい立ち直れなかったです…。海外版でlittle guyになっている理由を理解しました…。
:仮面の囚人
「扉を開け。囚人に話があるそうだ。」
「話、だと?懲役250年の囚人にか?…聞いて無い。」
第一級特殊刑務所。ここは主に大量殺人等の重大な犯罪を行った人間が収容される。そして、この二人がいる先には、刑法改正後初の
超長期刑囚の監獄がある。
「厚生労働省からの指示書だ。…問題無いな。」
サングラスを掛けた男が書類を提示する。
「言っときますけど、何も話しませんよ。覚えちゃいないんだから…」
警備の一人が呟きながら鉄格子を開け、三人はその奥に歩いていく。通路の突き当たりに、何かを封印しているかのような大きな扉があった。警備の二人がその両側に立ち、扉の電子ロックを解除した。一瞬だけ音がした後扉が開き、中から白い霧が漏れ出た。
部屋の中は暗かったが、よく見ると人が一人ベッドに座っていた。
「…久しぶりだな。」
サングラスの男が呼びかけた。
「…何の用だ。」
部屋の中にいた男は、ロボットを思わせるような無機質な仮面を被っていた。
「司法取引だ。お前にオペを頼みたい。」
「俺に…オペを…」
仮面と同じ位無機質な声に、僅かな驚きがあった。
「そうだ。書類がある。…読むか?ゆっくり考えろ。だが…」
言葉が一瞬途切れた。
「お前が命を救う最後のチャンスになる。」
「命を…救う…?」
仮面の奥の赤い相貌が見えた。
「もう一度…俺が…。」
:火の玉GIRL
入江港、倉庫地帯。
倉庫を改装したらしい家の中で暖炉の火が燃えている。壁にはカラフルなポスターが何枚も貼られ、屋内のはずなのに何故か大型バイクが鎮座している。テーブル代わりらしいサッカーゲームの台の上に置かれたマニキュアや化粧品から、かろうじてこの部屋の住人が女性である事が分かる。
「ふ~…」
その時、シャワールームの扉が開き、"住人"が現れた。ローライズのボクサーパンツのみを身に付け、首からタオルを掛けている。そのせいか、彼女のグラビアモデル顔負けの体型がますます強調されている。
と同時に暖炉の上に置かれた携帯電話が鳴り出す。彼女は歩き出し、電話を手に取った。
「はい、二階堂…ああ、医局長?」
"まりあ⁉14番で火災発生よ。直ぐ、応援に向かって!"
この"住人"の名は二階堂まりあ。聖カタリナ総合病院の救急救命医で、かなりの美人として名を馳せる一方、
「…はぁ⁉馬鹿言ってんじゃねぇ、今日は非番だぜ!」
単純直情、傍若無人、男勝りな性格でも有名で、誰が付けたかそのあだ名は、"火の玉ダーティガール"。
"皆、出払ってるのよ!愚痴ってないで早く行きなさい!"
電話の声には怒気が含まれている。
「チッ…仕方ねぇな。次のボーナスに割増付けとけよっ!」
まりあは電話を切ると、おもむろに服を着始め、それが終わると壁のシャッターを開けた。外には暗い港の輪郭がある。
「ヘッ…!行くぜコノヤロー…」
言いながらバイクのスロットルを上げていく。
~*~
「イヤッホ~っ!」
車の無い、夜の国道に彼女の声が響き渡る。
「退け、退け!退けぇ~ぃっ!」
:キャプテン•イーグル
湊園市内のとあるコンビニ。大手チェーン店では無い為、客の出入りは少なめである。だが、この日に限ってはいつもより賑やかだった。
「サ…サッサと金を出せ!早くしろ!」
一人の男がレジにいる店長を脅している。つまり、強盗だった。店内にいた僅かな客も身を縮めて怯えていた。
「…そこまでだ、悪党!」
その時、どこからともなく男の声が響いた。
「…愛と正義の使者、キャプテン•イーグル!」
振り向いた強盗の目に、全身青色のスーツに身を包み、赤いスカーフをたなびかせた巨漢の姿が映った。
「な…コスプレ野郎め、撃ち殺してやる!」
強盗が銃の引鉄に指をかけた瞬間、彼はその下顎に鉛直上向きの力を受けて天井に消えた。
「…店主、怪我は無いか。」
ひと昔前のアメコミヒーローのような格好をした男が呆然としている店長に言う。
「すまないが少し店を壊してしまった…これで直してくれ。」
そう言って彼はテーブルに手を置き、
「…さらばだっ!」
風のように去っていった。
再び元の静けさを取り戻した店内で店長は呟いた。
「…全然足りねぇよ…。」
~*~
花壇には様々な植物が植えられていた。そして、その側に佇む人影があった。2mはあろうかという長身に鍛え抜かれた筋肉。初めて見た者なら格闘家か何かだと思うだろうが、彼の職業はそういったものでは無い。
彼の名は江崎恭一郎。聖カタリナ総合病院所属の整形外科医である。自衛隊員時代から衰えていないその強靭な身体に温厚な心を秘めた彼は、今日も人々に命の素晴らしさを説いている。
:宗家の娘
湊園の一角に立つ豪邸。広大な日本庭園には様々な樹や花が植えられている。
~*~
「…蘇芳様、出立の準備が整いました。」
立ち込める湯煙の中に老年の男の声が聞こえた。
「分かりました。…半蔵、下がっていなさい。」
湯に浸かる人影が垣間見える。
「…御意。」
男の気配が一瞬にして消えた。
~*~
「…常世に有りて天地を守りし八百万の神よ」
言いながら服に袖を通す女が一人。
「我、今日も武の道をひた行かん。…ご照覧あれ!」
彼女は黒宮蘇芳。聖カタリナ総合病院の内視鏡医にして世界規模組織、黒宮財閥のひとり娘である。古来より武家として名の知れたこの家に生まれた彼女は文武両道を信条とし、「可憐なる花の佇まいを要しながら、時として歴戦の勇者の如き強さを見せる」と賞されている。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様!」
彼女の両脇に並んだ人々が一斉にお辞儀をする。
忙しくとも、やり甲斐のある仕事。己の自由を確かめるため、今日も蘇芳は職場へ向かう。
:灰色の日常
「オペレーション、コンプリート!」
「よしっ…次の患者を運べ!」
「御厨先生!こっちもお願いしますっ!患者さんが痙攣して…!」
「クソッ…キリがねぇ!」
「行け!ここは私が…!」
~*~
彼が目を覚ますと、そこにはいつもの見慣れた天井があった。電話の呼び出し音が聞こえている。
「んー…?」
少し薄暗い部屋の中、ソファに寝ていた男が体を起こした。ボサボサの髪を後ろで無造作に結び、顔には無精ヒゲを生やしている。
「…寝ちまったな。」
大きな欠伸をしてソファに座り直した男は、シャツの胸ポケットから煙草を取り出し、一本口に咥えて火を付けた。
御厨薫。それが、この冴えない男の名だった。聖カタリナ総合病院所属の診断専門医であり、ここは病院内の彼の自室である。
ボンヤリと煙草をふかす薫の前で電話が鳴り止み、代わりに留守電の声が響く。
"…理紗よ。自宅に電話しても無駄だと思って。今度の日曜日、護の荷物を取りに行きたいの。……。どうせ…貴方は留守でしょうけど。鍵は…ポストに入れておくわ…"
メッセージはそこで終わった。
「さて…と…」
薫は立ち上がり、そのまま真っ直ぐ部屋のドアへ向かった。
そうして、彼の憂鬱な一日は始まった。
:予期せぬ再会
湊園法医学研究所(通称、湊法研)所長室。
一人の男が書類にサインをしている。広い部屋にノックの音が響く。
「…入りたまえ。」
ドアが開くと、そこに背の高い、端正な顔をした女が独り、立っていた。
「剣持所長、お呼びでしょうか。」
「おはよう、由良君。今朝、湊園署から君宛に連絡があってね。…至急、現場に向かって貰いたい。」
「…私は法医学者です。警察官になった覚えはありませんが。」
由良と呼ばれた女は無表情のまま言った。
「そう言わないでくれ、無下には断われんよ。」
由良ナオミ。日系3世のアメリカ人で、かつてはアメリカで外科医をしていたが、現在は日本国籍を取得し、この研究所に勤務している。
「……。分かりました、では…」
そのまま部屋を出ようとするナオミに所長が声をかける。
「ああ、由良君。もう一つ…」
部屋の奥から細身のスーツを着た男が出て来た。
「彼が署の方の担当者だ。挨拶しておきたまえ。」
「…?貴方…」
彼女は、目の前の人物に見覚えがあった。
「湊園署捜査一課刑事の、安斎です。…よろしくお願いします。」
「……。ええ、よろしく。」
~*~
「…どういうつもり?貴方が刑事なんて、何かの冗談でしょう。」
研究所の中央ホールを歩きながらナオミは言った。
「…怒らないで下さいよ。お会いするのは、例の事件以来ですね?証人保護プログラムを適用された貴女と違って、こっちは苦労しているんです。」
突然、ナオミが立ち止まった。
「Shut up(黙りなさい).…良い、私がここにいるのはビジネスよ。貴方が名前を偽ろうと、刑事になっていようと、私には関係無い。…私の前で、二度と過去の話はしないで。」
「…分かりました。」
安斎は素直に従った。
「Good…」
再び歩き始めたナオミを安斎が呼び止める。
「おっと…何処へ行くつもりですか?」
「…現場よ。場所はGPSに転送しておいて。」
「あ…では、正面に車を…」
「貴方はここで待機。私が行く事を、現場へ連絡しておきなさい。」
「え…⁉ですが、その…」
ナオミは安斎に近寄り、彼のネクタイを軽く締めながら言った。
「…良いネクタイね、little guy.大人しくしていなさい?」
「え…?あ、ドクター⁉」
相手を呆然とさせる事に成功した彼女は、早足でホールを出て行ってしまい、完全に置いてけぼりにされた安斎は独り溜息をついた。
「やれやれ…」
研究所の門から黒い車が一台、事件現場へと走っていった。
と言うわけで(どういうわけで)プロローグでした。キャラたちの名前は完全に独断と偏見とそのときの気分で決めました。こんな低クオリティーですが、これからもよろしくお願いします。
p.s.
検視編で、リトル・ボーイがlittle guyになっているのには訳があります。
以前、英語のスラングを調べていたときに偶然見つけてしまったんです。意味は…ま、まあ勇気のある方は調べてみてください。これを知ったとき、私はショックで一週間くらい立ち直れなかったです…。海外版でlittle guyになっている理由を理解しました…。