ブログに書いた途端に

 

 私は12月5日の記事にて、「特別徴収税額決定(変更)通知書」へのマイナンバー記載は、企業が特別徴収事務を行うにあたってまったく必要なく無意味なので、やめるべきだと書きました。

 

 

 そして昨日ネット上で情報収集をしていたら、次のような記事がありました。

 


 

●しんぶん赤旗
2017年12月22日(金)
徴税額通知書のマイナンバー 「当面記載しない」総務省が方針転換
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-22/2017122201_01_1.html

●民商おおさか
2017.12.21
住民税特別徴収税額通知書 マイナンバー記載中止へ ねばり強い運動の成果
http://daishoren.org/topics/news/975.html

 


 

 記事によると12月15日に総務省から各市区町村担当課へ、「書面により送付する場合には、当面、マイナンバーの記載を行わないこととする」(※)という事務連絡文書が送付され、正式には今後の税制改正法案に盛り込まれて決定するとのことです。

 

※今後、この住民税通知書は、その通知方法を「電子媒体」か「紙媒体」か、企業が選べるようになります(5年以内に導入の「見込み」)。今回は、「電子媒体の場合はマイナンバーを載せ、紙媒体で通知するときにはマイナンバーを記載しない」ということですね。

 

「駄目だと思ったら早期撤退」は良いこと

 

 

 この通知書になぜマイナンバーを載せることになったのか、よくわかりません。

 

 

 平成29年5月23日の総務大臣会見(当時は高市早苗大臣)の概要をみると、

 

 特別徴収義務者用の「特別徴収税額通知」にマイナンバーを記載することによりまして、特別徴収義務者と市区町村の間で正確なマイナンバーが共有され、個人住民税の税務手続きを通じて、マイナンバー法が目的としている「公平・公正な課税」につながることが期待されると共に、「事務の効率化」につながると考えています。
(総務省HP http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02000589.html)

 

 マイナンバー制度自体が「公平・公正な課税」「事務の効率化」につながることは理解できます。

 

 しかし、この住民税通知書にマイナンバーを記載することが、どのように「公平・公正な課税」「事務の効率化」につながるのか、実務担当者としてまったく理解できません。

 

 総務省としても、今回方針を見直すことになったのは、一種の「恥ずかしいこと」だと思います。


平成29年度の通知書から法令上記載することになったが、記載をしない市区町村が出てきた。

→その団体に対して「法令にのっとって記載しなさい」とあらためて通知するも、なお従わない団体はあった。

→一年も経たないうちに「今後、紙媒体なら載っけないことになったよ」という方針を出した。

 

 なかなか気まずいでしょう。

 

 しかし、そんなことを気にせず、今回方針を見直したことは、素晴らしいことだと思います。

 実務担当者として、ただただ感謝です。

 

個人的には

 

 

 私はマイナンバー制度自体には賛成です。


 しかし、一企業が自社の社員のマイナンバーを管理することは、企業にとってコストでしかありません。漏洩リスクを高めるだけです。


 制度の導入以降、コスト増になるだけなのに、なぜ各企業が必死に対策をしているのか。

 単純に「法令遵守」、「そうすることが義務だから」、そして「自社が『法令違反をしている』と世間に思われるのは企業イメージの低下につながってしまう」という世間体だけです。

 

 税務署や役所、社会保険団体などが「マイナンバーが記載されていなくても書類は受理する」という取扱いを公表している今、「書かなくてもいいなら、そもそも社員から集めなくていいじゃないか」という企業も出てくるのではないかと考えます。

 

(もちろん、それは現在の法令上、違反になりますが、罰則規定はありません)

 

 

 

 法令違反でなく、コストが下がる状態。
 それは、企業として社員に対して収集依頼をするも、社員がマイナンバー提出を拒否するときです。
 

 法令にのっとってマイナンバーの提出を依頼したが、社員に拒否された、という経緯がしっかりと記録され、状況を説明できる状態であれば単純な法令違反にはなりません。
 そして、企業はマイナンバーを入手できないわけですから、各種書類に記入する必要もないし、マイナンバーが書かれた書類やデータを厳重に管理するコストも発生しません。

 

 

 よく誤解されていることですが、社員が企業に対してマイナンバーを提出するのは義務ではありません。
 企業には、特定の書類に社員のマイナンバー記載する義務があります。
 皆さんが会社にマイナンバーを提出したのは、次のような流れになっています。

  • 企業は皆さんが社会保険に入ったり、皆さんの給与を税務署や市区町村にお知らせする時にマイナンバーを記載する義務があります。
  • 企業がその義務を果たすためには、皆さんのマイナンバーを把握する必要があります。
  • だから提出してね。

 社員である皆さんは、上記の流れに協力してあげているだけなのです。

 会社としては義務を果たす必要がありますから、拒否された場合には何回も提出をお願いします。

 しかし、どこまでいっても社員には「提出する義務」など発生しませんし、罰を受けることもありません。
 

 その妥協点として、「社員から提出を拒否された時にはその経緯を記録しておくこと」ということで企業が収集、記載ができなくても許容されるのです。

 


 

 企業の担当者である私の負担を減らしたいがためにこういう考え方になってしまうのかもしれませんが、一企業がマイナンバーを管理するのは絶対にやめたほうがいい。

 

 今回の住民税通知書の件は、私の理想に一歩近づいたと嬉しく思っています。
 

 このままいろんなことが一気にいかないかなぁ。