<松岡圭祐小説を時系列順に読もう~その15~>
松岡圭祐『蒼い瞳とニュアージュⅡ 千里眼の記憶』(角川文庫)
『蒼い瞳とニュアージュ完全版』と『千里眼とニュアージュ完全版』を繋ぐ物語で、角川文庫版しかありません。表紙は前作に引き続き、ドラマ版で一ノ瀬恵梨香を演じた深田恭子さん。
岬美由紀の両親の交通事故について詳しく書かれていますから、千里眼シリーズしか読まないという方もぜひ読んでいただきたいと思います。
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・名乗らずに電話して、事故で入院したとか病院はどこだとか答えてしまうとは、株式会社リビルトはなかなかアブない企業ですね。
・宇崎俊一は、前作『千里眼とニュアージュ完全版』の最後で課長職へ昇進が決まったはずなのに、その辺の描写はありません。ただのヒラ職員といった印象で、情報課の横溝課長からは「いまは手が空いてる職員はおまえぐらい」などと言われています。
・前作でいろいろやってしまった高津朱美は警察庁刑事局特別捜査支援室長となっていました。しかも結局、警察庁から内調国内二部に出向してくるという、なんて怖い世界だ。そういえば、小学館版で宇崎は経済産業省からの出向という設定でしたが、完全版ではバッサリと削られていました。
・再会時には「内調の人だっけ?」と言っておきながら、一ノ瀬恵梨香は宇崎の携帯電話番号を諳んじています。
・本作の時期に、岬美由紀は「アル=ベベイルの日本人人質事件がらみで、イラクに飛んでる」ことになっています。これが『千里眼トランス・オブ・ウォー完全版』の話です。この記述を根拠に、本作の時系列を『トランス・オブ・ウォー』の前に置いてあります。
・岬の両親の交通事故については、本作のほかにもいくつかの作品で記述されています。
・宇崎と恵梨香の関係は今後の作品で描かれることはありません。『千里眼とニュアージュ』や『ブラッドタイプ』に恵梨香が登場しますが、宇崎は名前すら登場しません。
・萩原県に住むことになる恵梨香ですが、事件解決への貢献度を考慮し横溝課長が厚生労働省に話を通して優先的に入居が認められた、という経緯があるようです。