<松岡圭祐小説を時系列順に読もう~その4~>

松岡圭祐『千里眼 完全版』(角川文庫)

・酒井経済産業大臣、旧作では酒井経済企画庁長官でした。完全版発売時には、省庁再編で経済企画庁はなくなっていますので、経産大臣に変わったのでしょう。しかし、Wikipediaで調べたところ、廃止された経済企画庁の業務は内閣府へ継承されており、経済企画庁長官にあたる後継ポストは内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)のようです。また、経済産業省も同じタイミングでできた省ですが、これは旧通商産業省です。よって、名前こそ似ているものの、性質の違う役職についています。
・「ジンバテック」「フォレスト・コンピュータ・エンターテイメント」の名前も出てきます。シリーズ読者へのサービスですね。というか「テ"ィ"メント」となっているのに気づきました。誤植でしょうか。
・東京湾観音。この作品をきっかけに年1回、訪れるようになりました。
・柴片和夫という畳屋が登場します。旧作では苗字が違います。その畳を取り扱う商社の名前も違います。いろいろと変更されています。
・JAI(日本・エア・インターナショナル)、松岡圭祐作品に登場する航空会社といえばJAIという感じですね。
・友里佐知子が岬美由紀に健康診断を受けるよう指示をしています。基本的に年一回は従業員に健康診断を受けさせる義務がありますから、それほど不自然ではありません。しかも友里は院長という立場ですから。健診を受けない岬の方が悪いのです。もちろん一般論ですが。ここで友里のいう「健診」は特殊ですから。
・センター試験レベルの問題を解いてしまう小学2年生、宮本えり。岬美由紀に解法を教わったとはいえ、短期間でその方法を頭の中に入れ、問題を解いてしまう、スーパー小学生です。
・蒲生誠の車の中で、蒲生と岬が観音を見張ります。初めて読んだ時には「トイレ行かなくていいのか」と思ったものですが、松岡作品には基本的に「トイレ」という概念は登場してきません。ただし、たまに汚物は出てきます。
・「宇治木一等空佐」のルビがおかしなことになっています。
・観音からの脱出シーンも変更されていますが、旧作読者用のサービス台詞があります。
・岬からの連絡を受けて仙堂空将がすぐさま要撃中止を命じるシーン。間一髪。鳥肌が立ちます。私の好きなシーンです。
・「キバアユコ」と聞いて「すごい名前ね」「改名したほうがいい」という岬。この時点では音を聞いただけで、鬼芭阿諛子という漢字表記は目にしていないはずです。それならばそれほど奇異な名前ではないはず(例えば「木場亜祐子」とか)。気になってしまう部分です。