今学期、組織学なるものに初めて触れることができた。
一言感想を述べるとすれば、「とにかく面白い!」だった。
観察したサンプルは、ほぼ「ヒト;human」のものであり、これまでマウスのサンプルしか目にできなかった小生にとってはこれが第一の感激だった。
また、教科書のイラストで学んできたことを組織切片で実際を知ることができたし、
観察したものから実はこうなんじゃないか?と疑問をもつこともしばしばあった。
これはこれは充実した時間だった。

ではここで、試験勉強中にふと思い出したことをメモしておこう。
繊毛や鞭毛の運動、さらには軸索輸送までもが、微小管による9+2構造、ダイニンやキネシンといったモータータンパク質の働きによって実現されている。
軸索輸送については、細胞体から軸索終末方向への物質輸送(順行性輸送)はキネシンが、逆行性輸送はダイニンがモータータンパク質として機能する。
この程度の知識は、編入試験においても教科書レベルのものである。
組織学実習では、その軸索輸送が実際にどう機能しているかを観察できた。
抗TH(Tyrosine Hydroxylase)抗体を用いたマウス脳切片の免疫組織化学的染像を観察する機会があり、dopaminergic neuronやadrenergic neuronの局在や軸索の走行を観察しましょうというものであった。
ここで一つ疑問がないだろうか?
神経細胞でのタンパク質合成の場は細胞体である。
神経細胞のニッスル染色を見れば一目瞭然であるが、軸索はニッスル染色では染色されず、粗面小胞体や遊離リボソームを欠くことを確認できる。
では、なぜ抗TH抗体で軸索部分が染色されるのだろうか?
答えは簡単で、細胞体で合成されたTHが順向性輸送により終末方向に輸送されているのである。
実習の目的からは外れるが、こういうことを考えながら基礎医学を学ぶとなかなか面白い。
これまでに得てきた教科書レベルの知識を随所で体感できるのである。
おかげで、組織学実習を終えるといつも日が暮れていた。
話が逸れたが、ここでもう一つ疑問が残る。
なぜ、わざわざTHを終末に輸送する必要があるのか?
細胞体で合成したドーパミンやノルアドレナリンを輸送すれば良いのではないだろうか。
先生によると、THのみならず、基質となる物質も終末に輸送されており、刺激(活動電位)に応じて迅速に神経伝達物質を合成するためとのことであった。
確かに、とその時は首肯したが、、、次のような理由も考えられるのではないだろうか。
シナプス前細胞から放出されたカテコールアミンはシナプス間隙からシナプス前細胞の軸索に再取り込みされる。
その一部は分解され、一部はシナプス小胞に貯蔵される。
したがって、その分解されたものを再びドーパミンやカテコールアミンに変換するためにTHを終末に輸送するということも考えられるだろう。
そもそも活動電位にたいするレスポンスを重視するのなら、細胞体で合成した神経伝達物質をより多く終末のシナプス小胞に蓄えておく方が効果的ではないだろうか。
その備蓄できる量に限界があるのだろうか?
再取り込みされた物質を再び神経伝達物質に変換するというのも結果的には、活動電位に対するレスポンスを上げるということになるとは思うが。
この辺の詳細をご存知の方がいらっしゃればぜひご教示頂きたい。