ツアー終了後、逃げるように大阪から戻ってきたのは、今回のツアーが、やや面倒だったこともあるが、次の仕事が待っていたせいもある。


10日間のツアー最終日と、次のお客様への電話連絡日が重なっていた。


恐らく午後15時、16時に到着し、ホテルチェックインは17時台か?

それに合わせて、部屋に電話を入れないといけない。


最悪は、帰路途中から電話をすることも可能だが、新幹線内からはかけたくない。


だから12時10分の関空行きで、最後8名を送り出した後は、フロントに戻り全員のチェックアウトと出発の確認をして、急いで帰ってきた。


皆さんよ。私はもう次の仕事に向かっているのだ。

あなた達は、空港は向かう道すがら未だ、この写真を誰それに送ってくれなどと、旅の余興に浸ってWhatsAppして来るが。


いくつかのエージェントのいくつかのブランドのシリーズツアーを定期的に受けていて、私にとっては一番慣れた環境のはずなのだけれど、今回は久しぶりに難しさを感じた。


価値観の違う人々が、同じツアーにたまたま乗り合わせたというだけで10日を共に過ごすことの難しさ。


たまたま上手く行った時に、私の仕事は、ただ観光地の情報を流すだけではなく、人と人を繋げることだなどと満足気に頷くことがあるが、偶然の奇跡をまるで自分の手柄のように思っていた。


そうではない。お客様の努力だ。

周りと上手く合わせ、グループの皆に迷惑をかけないようにと、正しく行動する人達がたまたま多くいらっしゃる結果だ。


今回はとうとう最後まで、FITの寄せ集めが便宜上大型バスに同乗している感を醸し出したままだった。


初日から危険なほどの高気温で、2日目の都内発着富士箱根は、夏休の週末で高速道路が混雑。極めつけは3日目の新幹線メンテナンス車両衝突での丸一日不通。


こういった事件で、皆が結束する場合もある。

今回は逆に作用し、個人旅行の群れのまま終わった。


個々は皆良い人達だ。

が、必要以上にグループのメンバーと関わろうという意識はなく、グループの人達を尊重しようとすらしていない人達もいた。


例えば、夕食に出発する時間に、その場に家族全員揃っているのに行かないという。

彼らの意志確認をガイドがすることを当然と思っている。その時間のためにバスが出発できず、他の人達が待たされているのに。


例えば、最終日は、伊丹か関空かでバスターミナルが違う。関空発はホテルの目の前から出る。切符も事前に渡せる。伊丹行きは裏手から出発で切符は当日購入のみなので、当日ガイドが購入。

12時発伊丹と12時10分発関空があるので、伊丹を送ってから関空バス停に急いで行きます。関空組とはバス停で会いましょう。

何度も説明したのに、既にチケットを持つ関空組が、自力でホテルのドアを出ようとしない。

連れて行ってもらえると思っている。

ホテルの大きなガラスのドア越しに、自分達が行くべきバス停が見えているのに。


ドクターというタイトルを持つ、普通の人よりは頭脳明晰であろうという人が、直前になって出発時間の前にロビーでキミを待てばいいのかと、前日も前々日も説明していないことを書き送ってくる。


いや、私はあなたのバスより10分前に、別の場所で別の行き先のバスに乗る人達を送らなければいけないので、それが済むまであなたに会うことはできない。バス停で私を待ってくれ。


今読み返しても、日本人の英文ながらちゃんと趣旨が伝わる文で返しているはずだ。


その答えが、

OK, we will see you a little bit before 12 noon in the first-floor lobby.


全然分かっていない。

その12 noonは8名の人の出発時間だ。

チケットを持たない8名を放って、チケットを持ち、ホテルの目の前からバスに乗ればいい人のところに行かなければいけない理由はなんだ?


どちらも同じお金を払ったツアーに乗ってきている同等に扱われるべき人であることを理解できないで、自分達が特別と思っているのであろう。


こういう人達は確信犯で、敢えて情報を聞き流し、都合の良いところのみを選び繋ぎ合わせる。


それとは別に単に天然に自己中心で平然と人を待たせる無邪気な人達もいる。


そこに今回は用心深く立ち回る人達もいた。

彼等はとても良いゲスト達で、静かに話を全て聞いている。そして周りを見ている。

これは付き合いきれないなと思うとさっと消える。

個人行動をする際の理由は理論整然ごもっともで、しかも財力もあるので、こちらを一切頼ってこない。

が、その金銭感覚に他の人は着いて来れないので、結果、これもまたグループに分裂が生じる理由となった。


そういう方達からいただくチップは他の方達よりも多い。

が、受け取る側の心を突き刺す。

チップとは顧客満足度を測るツールではなく、その人の社会的立場や価値観、その人にとってモノやサービスにどれくらい払うことが常識なのかを窺い知る物差しだと思う。


よくクレームが起こるとき「心外です。お客様からはチップもいただいています。」と当該のガイドさんから聞くことがあるが、その度にそれとこれは別だよと思う。


それよりなにより、一番高齢のご夫婦で、一番周囲の身勝手さの迷惑を被り、いつも表情が芳しく見えず気を使って接していた別のドクターから、


よくやってくれた。特にグループの人達をまとめることについて。


と言っていただけたことはありがたかった。


逃げ帰ってきた私に、東京駅到着寸前に連絡が入った。

これからのお客様が空港を出発しホテルに向かったとのこと。


そして今回のツアーのエージェントからも電話がかかってきた。

曰く、某観光箇所が、私から予約確認の電話を受けるも訪問をしなかったと言っているという。

行きました。

エージェント名で領収書取ってます。

なに言ってんの?


自宅に着いてちゃんとツアーの資料を並べて、余裕を持って次のお客様達と電話できてよかった。

このツアーで利用のホテルさんは協力的で、お客様が到着されると、私に電話をくださる。


その同じホテルさんから夜分にまた着信があった。

朝になり気づいた。

まさか何か緊急?

ホテルだから朝早くてもいいだろうと6時に折り返し。

大きなことではなかった。


仕事は続く。