2018年4月25日
彼女から一件のメッセージ
「仔猫ひろった。育てたい」
学校にいた僕は講義終了後
彼女が待つ駅へ自転車を飛ばした

駅に着くと彼女が仔猫を抱いていた
小さな小さな命
彼女は嬉しそうにその仔猫を見せてきた
「かわいいでしょ!」
正直一目惚れした
犬派か猫派か聞かれたら犬と答える僕であったが
その仔猫は違った
運命だったのかもしれない
まだ開かない目に高い声、綺麗な縞模様の胴体
小さいその仔猫は「熊本みかん」と書かれたダンボールにはいっていた

近くの大型スーパーで猫の用品をいっぱい買った
仔猫用の粉ミルクに哺乳瓶、トイレの砂に大きくなった時用のご飯、離乳食、ピンクの首輪、おもちゃ、猫じゃらし、沢山買った
その日は給料日だったが、ほとんどなくなってしまった
でもこれからこの仔猫と過ごすワクワクが強かった

近くのコンビニでお湯をもらい、初めて粉ミルクを作った。スプーンすりきり一杯とお湯を一杯と半分

人肌になるまで冷まし
となりの公園でミルクをあげた
でも上手に飲むことができない
やっと頑張って飲んでくれたときは嬉しかった
1mlも飲んでないと思う
でも初めてこの子のために出来たとおもうと嬉しかった
そのあと彼女の膝に乗せて背中を撫でた
仔猫はいつのまにか眠っていた
彼女はバイトがあったため
僕は仔猫と2人公園で待ってた

1時間くらい経った頃
女子高生2人がやってきた
自撮りだろうか写真を何枚か撮った後
僕の手の中でタオルに包まり眠る仔猫に気づいた
「仔猫がいるよ!見てもいいですか?」
僕は嬉しかった
女子高生に喋りかけられたからという変態的な喜びではなく
自分の家族になった仔猫が「かわいい」と言われることが

女子高生にお願いして僕はもう一度温かいミルクを飲ませるためにコンビニに哺乳瓶を持って走った
店員さんもお客さんもこの歳で哺乳瓶を持つ僕に少し興味がでたのかチラチラと見てきた
少し恥ずかしかったけど
親になれた気がして嬉しかった

お湯の入った哺乳瓶をもって公園へ帰ると仔猫は女子高生の膝で寝ていた
「寝ちゃいましたw」
女子高生は僕に仔猫を返し帰って行った

僕が受け取ると目を覚まし、僕のシャツの胸ポケットに顔をうずめ、入っていった
すぐに顔を出し出ようともがいた
仔猫を膝に抱き、ミルクを飲ませた
少し最初よりも飲んでくれた
ミルクをあごひげにつけて仔猫はまた寝た

少し肌寒くなり、仔猫を温めるためにコンビニの待合室のようなところに行った
鳴いたら怒られるなと不安だったが
タオルの中で仔猫は寝てくれた

少し起きても
お腹と服の隙間に入れてあげるとすぐに寝てくれた

目は見えないけどお母さんだと思ってくれたのかな

彼女のバイトが終わる時間に僕は仔猫を抱き
バイト先へ向かった
出てきた彼女は仔猫をみてほっとしてた

「名前どうしようか」
沢山案を出した
「みかんのダンボールに入ってたから「みかん」は?」
「熊本みかんだから「くまもと」は?」
「うーん、ねこ!」
いっぱい案を出した
でもどれもしっくりこなかった
「耳かきのぼんてん(上のふわふわしてるやつ)に触り心地が似てるから「ぼん」は?」
と僕がきく
「ぼんがいい!」
名前が決まった
ぼん
いい名前だ
彼女は親が迎えにきていたため、1人帰った
僕は、ぼんと2人で駅に向かった
ぼんにとって初めての電車
他の人に迷惑かからないように人が少ない端っこ車両に乗った
ぼんはずっと寝てくれていた

家に帰り
ぼんのスペースをつくった

新しいミルクをあげて
寝たところで僕も眠りについた

4月26日
朝起きたら隣でぼんが寝ていた
ダンボールから抜け出し僕の隣に来て寝ていた
潰したと思い焦り、彼女に電話した
すぐにタクシーをよび彼女の家へ向かったが
タクシーの中でぼんは元気になってた
眠たかっただけのようだ

ぼんのお家を買いに行った
ふわふわしたお家を買った
哺乳瓶では飲まないので注入器も買った
防音と保温のためのマットもかった
熱中症防止の扇風機もかった

家についてお家に入れた
持っていたフシギダネの小さいぬいぐるみも一緒に入れた
ぼんはまたミルクを飲んだあと
ぐっすり眠った

ぼんのために部屋を借りようと部屋を探した

4月27日
部屋探し2日目
彼女は一泊二日の宿泊研修のため僕とぼん2人で電車に乗り
駅近くの不動産に行った
二件程度ペット可能な部屋を見せてもらった

色々な準備をするためその日は帰った

家に着くとぼんはフシギダネの隣に行きすぐに眠った

4月28日
夕方まで弟とぼんと僕は一緒に遊んだ
遊んだと行っても
歩くぼんを2人で見つめてた

もともと飼っている犬に近づくぼん
興味津々な犬と無関心なぼん

スマートフォンを床に置いているとそこに乗りまた寝た

夕方ごろ彼女が帰ってくるので彼女の元へぼんと向かった
彼女は嬉しそうにぼんとおしゃべりをしている
水筒に入れたミルク用のお湯はいつもカバンの中で溢れてた

ぼんと彼女と僕と3人でいるのはなんか嬉しかった

彼女のスマートフォンにまたぼんは乗った
そのあと彼女の膝の上で寝た

4月29日
ぼんと一日中家にいた
親に見つからないように二階でこっそりお世話した

ぼんの目が開かないのが不思議になり
目を温めて開いたら目やにが固まっていた

すぐにペットショップにむかい
目薬とダニノミ避けの薬を買ってぼんの待つ家に帰った
目薬をすると
目ヤニが減った

見えているのかわからないが、
ぼんはその日1番歩き回った

4月30日
1日中バイトの僕は弟にぼんのお世話を任せた

弟はぼんの動画を送ってきた

初めてぼんのお家から脱走しようとしてる動画
頑張ってた
やっと出れたが
クッションの上に落ちたぼんはコロっとこけた

大変なバイトだったが
疲れが吹っ飛んだ

深夜一時に家に着くと
弟は寝ていた
ぼんのお家にはぼんが寝ていた
スプーン一杯とお湯一杯と半分

弟はちゃんとミルクと目薬をあげてくれてた

本当にありがとう

5月1日
朝起きるとぼんに元気がない
眠たいだけかなとおもい抱くと体が冷えていた

少しばかり動き、
いつもより小さな声で泣いた

温かいミルクをあげようとすると
指を噛んだ
今まで痛くなかったのに少しだけ痛かった
口を見てみると
歯が生えてきていた

成長が嬉しかったが
体が冷たく元気がなかったため、
すぐに彼女のとこへタクシーを走らさせ
彼女と病院へ行った
一つめの病院につくと
お医者さんが言った
「だいぶ衰弱しています。脱水症状です」
「もって、明日か明後日か」

僕は信じられなかった
彼女も信じていなかった

病室で僕は思わず泣いてしまった

ぼんの体調にきづけなかったのが、
昨日ずっと一緒にいてあげれなかったのが悔しくて
ぼんがいなくなるのが怖くて

抗生物質を打ってもらったが、ぼんは弱ったままだった

「ごめんね、ごめんね」しか出てこなくて泣く僕だったが、彼女は「次の病院探そう」と諦めていなかった

2キロくらい離れたところにある病院にいった

そこでもお医者さんは同じことを言った
「だいぶ衰弱しています」
「低体温です。それもかなりの、脱水症状も起こしています。栄養剤を打ちますね」

血管がうまく出なかった為皮下注射をした
するとぼんは立ち上がり
今までで1番の声で鳴いた
とりあえずこれで様子をみます
夕方にまたきてください

僕と彼女とぼんは一緒に帰った

でもこれが3人で歩いた最後の道だった

彼女の手の中で体温を下げないようタオルに包まり眠るぼん
匂いを嗅ぐとミルクの匂いがした
「ぼんの匂いだ」
ぼんの匂いは口についたミルクの匂いだった

タオルの中で少し動いたりした

でも家に着くとぼんは動かなくなった

「ねえ、ぼんが」

彼女がいう

焦った僕は彼女の腕で寝ているようなぼんに駆け寄りぼんに触れた
とても冷たかった
舌も白くなっていた

すぐに分かった
ぼんは彼女の腕の中で息を引き取ったんだと

僕らは泣いた
彼女もついに涙を流した

0.1%でものチャンスにかけて
ぼんを抱きしめさっきの病院へむかった
タクシーの運転手もなく僕らをみて
腕に抱かれたぼんをみて察してくれた

病院に着いたが
ぼんはもう一度鳴くことはなかった

ありがとうございました
と病院を出た

彼女は膝から崩れ落ち泣いた

拾ってごめんと泣く彼女に
「そんなことはない、出会わせてくれてありがとう」
と行って彼女の頭を撫でることしかできなかった

僕にも余裕がなかった

悲しかった

涙が止まらぬまま
家に帰った

病院の先生が言ってくれた
「ぼんちゃんは、拾ってくれたおかげでここまで生きれたんですよ」
って言葉を思い出し

少し落ち着いた

少しだけぼんの毛を切った
忘れないように
そばに入れるように

埋葬か火葬かとても悩んだ

ずっと一緒にいたかったので
骨をもらえる火葬を選んだ

火葬場に着いた
涙もおちついていた

でも今からぼんを火葬すると考えると涙が止まらなかった
一週間もない思い出だったが
とても濃かった
全部楽しかった

それをまた思い出し泣いた

身体あるぼんに最後の別れをいった

火葬する機械に入っていくぼんをみるのはとても辛かった

でもちゃんと「ありがとう」って言えた

火葬している30分の間
2人で外に出て語った

本当にいい子だった

可愛かった

感謝しかでてこなかった

火葬場に帰るとぼんは骨になって帰ってきた

小さな身体でほんの少ししか骨は取れないと言われていたが
沢山骨を残してくれた

ほねはいつでもそばにいれるように
アクセサリーにする予定だ

火葬場の人にも「出会ってよかったんだ」
と教えてもらった

火葬場をでて
僕らはぼんの写真を印刷して、アルバムにするためのケースを買った

6日しかなかったのに
170枚もぼんの写真があった
色んな思い出があった

全部見返した
どれも可愛かった
どの猫よりもかわいかった

家に帰って弟にぼんの死を伝えた

弟は沢山泣いてくれた

僕らくらいぼんのことを愛してくれてた

弟には感謝しかない

ありがとう

アルバムに写真を入れていった

お家にフシギダネを入れてぼんの写真と骨を隣に飾った

ぼんがいるきがした

ぼんとの思い出は消えないし
ぼんも骨になってそばにいてくれる

ぼんありがとう

本当にありがとう

俺らと出会えて幸せだったかな

俺らはぼんに出会えて本当に幸せだったよ

いつでも待ってるから

どんな形でも帰っておいで

ぼん

大好きだよ











5月2日

朝起きてもぼんはいなかった
でも確かにぼんはいた
昨日の朝
ぼんは初めてのおもらしをしていた
また帰ってこれるようにマーキングしてたのかな

そんなことしなくてもいつでも僕らのところに来てほしい

ぼんのいないぼんのお家はぼんのミルクの匂いとおしっこの匂いがした

また泣いてしまった

ぼんと出会ってから始めてのぼんのいない朝


もっといっぱい一緒に寝たかった
もっと美味しいもの食べさせたかった
もっと彼女にお世話させてあげたかった
もっと「ぼん!」って呼びたかった
もっと色んなところ行きたかった
新しい部屋で住みたかった

してあげたいことは沢山でてきた

まだ使ってない砂や大きくなった時用のごはん、おもちゃは開けてないままだった

でもまた猫を飼った時のために取っとこうと思う

ぼんとおなじくらいの愛情と
ぼんにもっとしてあげたかったことを
その子にしてあげる

ぼんもそれが嬉しいだろうなって気がして

学校に向かうために家を出た
ぼんの骨と毛と写真をもって

ぼんが降らせているのか
ぼんが亡くなった後から止まない雨の日だ

「行ってきます」とぼんのお家の中でフシギダネの隣に置いたぼんの写真ないっていえをでた

ちゃんとミルクも置いてきた

スプーン一杯とお湯一杯と半分の温かいミルクをおいて