私は、ただ普通の子になりたかった。
お父さんとお母さんがいて、それなりに広い家があって、帰ったらお母さんがご飯を作ってくれてて、みんなと同じようなランドセルを持って、同じお道具箱を持って、同じ裁縫道具を持って、同じクレヨンを持って、優しくておおらかで少しぽっちゃりなお母さんが授業参観に来てくれる、そんな普通の子になりたかっただけなの。

母が嫌いなわけではないし、もちろん大好きだけど、母だから、好きなんだと思う。私がここまで周りから期待されて空気が読めて気を使えるのは母のおかげ。だけど、私は自分が何が好きかも分からない私になりたくなかった。好きなことがないのは私のせいかもしれない、いや、私のせいなんだけど。それでも、私は普通の生活を送りたかった。
お父さんが、欲しかった。なんかあった時にビールでも飲みながら「はははっ」って大きな声で笑ってくれるお父さんが。授業参観に似合わないポロシャツとか着ちゃうお父さんが。お父さんとお母さんに挟まれて、手繋いで、お家に帰る、そんな幸せを味わってみたかった。もう絶対に無理な話なんだけどね。

私は絶対にそんな家庭を持ってみせるよ、絶対に、子供に寂しい思いも辛い思いも、お金で悩ませるようなことはしないよ。死にたいなんて、考える暇もないくらい楽しい家庭にしたい。ぬるい人生でもいいよ、幸せになってくれるなら、それでいいんだよ。