私はこの間アイドルみたいな仕事をした。
それなりに有名なキャラクターの内臓となり、
デパートを徘徊するという仕事である。
つまりどういうことかというと、
着ぐるみの中に入る仕事をしたということである。
この仕事は初めてで、しかもなんだか嫌なニュースを見ていたから
正直適当な理由をつけてこの仕事から逃げ出そうかと考えるほどにかなり腰は重かった。
昔から汗かきで暑い中少し動いただけで滝のように汗をかいてしまう私が好奇心だけでこの仕事を引き受けてしまったのを
しばらく後悔し続けていた。
そんなこんなで嫌々ながらも当日を迎えた。
準備などをいろいろし、息をつく暇もなく運営の人から
「じゃ、入ろうか!」と促され、私は突然変身することになった。
体の構造上、頭が非常に重く、
ただでさえ足りない身長がもっと縮んでしまうのではないかと思うほどに頭が重かった。
ただ、案外外気が入りやすく、
汗の心配は 初めのうちは 心配していなかった。
ただ突っ立っているなら汗はかかないがひとたび動き始めると
汗が吹き出しすぐに息切れをしてしまう。
キャラクターはニコニコでも内臓は
苦しみに満ちた顔をしているのである。
そして全く見えていない、ノーマークの背中に
突然後ろからちびっこが突撃してくると
一気にバランスが崩れてしまうので
うっかり苦しみに満ちた声が漏れそうになる。
どうか着ぐるみには飛びつかないでほしい。
だが、もちろん楽しいなと感じることもあった。
合理的にイケメンとハg…。
着ぐるみを通して普通の生活では決して向けられることのない視線を
集めることができるのである。
それはたぶん犬とか猫に向ける「あら、めんこいわぁ」という視線と同じものではなかっただろうか。
着ぐるみに興味を示すのは決して子供だけではなかった。
老若男女問わずみんな着ぐるみを見つけたとたん
へにゃっと顔を崩しこちらに手を振ってくるのだ。
それに応えるべく私も動かしづらい腕を懸命にふって期待に応えた。
すると相手は自分の想像以上に喜んでくれたのは
なんだか嬉しかった。
あまり聞きなれない仕事をする醍醐味にはこういった点がある。
特にこれといってオチはないが
人生で最初で最後になるであろうこの仕事の感想を
書き残しておこうと思う。