酷暑と外国人まみれの東京から約3時間とわずかな予算で(1万5000円程の料金:往復料金)中央アルプスの絶景に出会えます。山に興味があってもなかなか足を踏み出す勇気がない方にはこの中央アルプス千畳敷カール、木曽駒ヶ岳がオススメです。



「テントを背負って、満天の星空の下でコーヒーを飲もう!〜木曽駒ヶ岳編〜」2025年8月27、28日


 東京からのアクセスに「駒ヶ岳千畳敷カールきっぷ」を使いました。この切符は往復高速バス料金、路線バス、ロープウェイ料金が含まれていて「11500円」。上高地片道高速バス料金が「12000円」と比べたら格安です。ただし、事前に新宿バスターミナルの伊那バスの窓口で購入する必要があります。インターネットでは購入できません。この切符は行きの高速バス切符、帰りの高速バス切符、千畳敷カール切符の3枚からなります。高速バスは新宿バスタ発、駒ヶ根車庫行のバスに乗りますが、しらび平行きの路線バスは駒ヶ根インター前か駒ヶ根バスターミナル、どちらかの停留所で乗り換えます。新宿を出発する時間により、停車する停留所が異なりますので、注意してください。

私は新宿バスタ6:45に乗車しました。駒ヶ根バスターミナルで10:15到着予定が途中工事渋滞で、30分遅れて、10:45到着。ここから駒ヶ岳ロープウェイ線「駒ヶ岳ロープウェイ駅」行きの路線バスに乗り換えです。一番近いバス停が歩いて2分の「すずらん通り」ですが、一つ手前の始発の「駒ヶ根駅」も歩いて5分ぐらいですから、待ち時間に余裕があれば、「駒ヶ根駅」方が良いでしょう。私はそんなに近いとはわからず、「すずらん通り」から乗車しました。11:02発です。「千畳敷カール切符」を運転手さんに提示し、乗車です。途中、「菅の台バスセンター」で乗用車組が大勢乗車して来ます。大きなザックを抱えても、満席になりますから、ザックは予め膝の上に抱えていた方が良いでしょう。路線バスの終点「しらび平」に11:45到着。ロープウェイに乗り換えますが、ロープウェイは30分おきに朝の7時から夕方5時まで運行されてます。切符販売の窓口で「千畳敷カール切符」を渡して「往復ロープウェイ切符」と「帰りの路線バス切符」を受け取ります。ロープウェイ乗車口で「往復ロープウェイ切符」を提示して、12時発のロープウェイに乗車。12:07に千畳敷駅に到着です。標高2615メートル。日本一標高の高い駅です。

 車で行かれる方は中央高速駒ヶ根インターで下りて、菅の台バスセンターの駐車場に車を駐車して、しらび平行きの路線バスに乗り換えです。しらび平でロープウェイに乗り、千畳敷駅です。


ここ千畳敷駅で売店とカフェテラスがありますので、昼食を取る方はここで。私はテント場で食べる予定でしたので、トイレを済ませて、呼吸を整えて12:30 左回りコースでスタート。登山届より30分遅れです。実は初日はガスがかかっていて絶景は見れませんでした。





通路は1人通れるくらいの道幅ですので、登り組と下り組で譲り合いながら進みます。私みたいにテントを背負った大型のザックを背負った方は見かけません。家族連れ、中高生の団体客がほとんどで、皆さん軽装です。さすがに8月下旬なので、私みたいな半ズボンの方はいません。最高気温19℃、最低気温10℃の世界なので、皆さん、長袖、長ズボンです。ここはもう秋です。アキアカネが飛んでます。高山植物の見頃も7月中旬から8月中旬までで、今は見れず、ナナカマドの赤い実がキレイです。右回りコースとの合流地点から、登山口になります。高度差240mを登ります。ロープウェイで1000mを7分で登っての、急勾配を登って行くのですから、自分の体と相談しながら、途中で休憩を挟みながら登っていきます。軽装の10代の女の子が走って登って行きます。結局はまた、私に途中で抜かれるのですが。登山は変な競争意識持ったら、ダメですね。絶えず自分のコンディションを把握しながら、進まないと息が切れます。でも、後を振り返ると絶景です。絶えず前を走るランニングとは違います。体力のある方には道を譲って先に行ってもらいます。




30分くらいで急登は終わり、乗越浄土に到着です。一面ガスっていて視界は5〜6mという感じでしょうか。風が吹き、寒いので、上だけヤッケを着ました。どっちに進めば良いのかわからないので、標識で確認します。



ふむ、「駒ヶ岳」だから、左に進めだな。右手には宝剣山荘があり、中学生の団体登山客が班ごとに列を作り、座って先生のお話を聞いていました。

「霧がかかって何も見えない。こういう日もある。でも、君たちはこうして皆と頂上まで登ったのは事実である。」

せっかくの青春の思い出が天候に恵まれなかったのは残念だね。と心の中でつぶやく。前回の涸沢と同じく、自分も残念だなと思いながら、進むと、変な鳴き声が聞こえてきます。

「クックックッ」

ネズミのような、ヒマラヤ周辺で見たマーモットのような、思わず、下山して来る40代くらいの夫婦に聞いてみました。

「あれがライチョウの鳴き声だそうですよ」

ほう、鳥らしくない声だなと思いつつ、

「そこら辺に5羽くらいますよ」

鳴き声のする方に目を向けると、霧の中に見え隠れする鳥らしい物体をチラッと拝見できました。

さらに進むと、中岳山頂の標識が見えました。



頂上山荘のテントが霧の合間から見えてきました。

ここから、急な岩場を下ります。ここで登ってくる

40代くらい女性と挨拶を交わします。

「あいにくの天気ですね」と声をかけると、同じ状況を体験してる共有体験で、心が打ち解けるのでしょうね。本音がポロっと出ます。

「母と来てるのですが、遅いから先に来てしまいました」とチラッと下にいらっしゃる母様をご覧になります。

涸沢では、老夫婦が疲れて動けない奥様が動けるまで、じっと何も言わずに待っていた方とは正反対だなと思いながら、苦笑い。それとも、夫婦と親子では違うのかな。登山では色々な人生模様が交錯してます。

こういう岩場はトレッキングポールよりは手を使った方が安全と思い、ザックにしまい、手を使いながら下ります。

さあ、今日、テントを張る頂上山荘に到着です。

14:20 ちょっとゆっくり目です。



なんか霧が晴れたみたいです。山の天気は変わりやすい。

山荘に入る手前で、同年代の男性の方が声をかけてきました。

「修学旅行生が多くて、大変でしたでしょう」

都会では知らない人から声をかけられることはまずないので、新鮮です。

「テント場の近くにも、ライチョウが沢山来ますよ」

穏やかな笑顔で尾張訛りで話されます。だと思っていたら、後で聞いたら、山口県から来られてる方でした。

山荘に入ると、山焼けしたおば様が受付にいらっしゃいました。テント代2000円を払うと、レシートは出ないらしく、領収書を書いてくださいました。

昼食もやってるらしく、聞いてみると終了していました。

頂上山荘のランチタイムは10時から14時までだそうです。

トイレは昼間は山荘口から、夜は夜間口から入ります。

ここは涸沢カールのようにテントに幕営札を付けることなく、そのままテント設営です。

私はトイレからは遠いのですが、風があたらず、景色の良い、一番下に陣取りました。

テントの撤収時間は翌朝7時です。8時から7時に変更になったようです。

テントを設営して、山荘から水をもらってきて、昼食です。自宅で作って冷凍してきたカレーが溶けて良い感じです。ご飯は1合白米を持ってきました。今日はメスティンを使ってはんごう炊飯です。水がもったいないなと思って、米を研がずに火にかけました。10分くらいして、湯もこぼれたから、これで良いだろうと思ったら、熱くて蓋が外れない。腹が減ったので冷凍カレーをお湯で温めて、ご飯にかけて、一口。

「なんだこれは。研いでない米はこんなに不味いのか」

粉っぽくて、食べれない。思わず、アルファ米にお湯を注ぐ。不味いご飯もゴミで持ち帰るのも荷物になる。仕方なく全部食べました。せっかくの絶景のおかずを前に不味いご飯を無理やり腹に押し込めるなど。残念。これも経験か。この年になってやってないことがまだまだある。失敗を恐れて行動しないことの何という愚かさ。


という間に、空模様が激変。大雨が降ってきました。

「テントを張り終ってから良かった」

雨音を聞きながら、横になって、テントの天井を仰ぐ。天候に恵まれないな。30分くらい降り続いたろうか。雨が止みました。薄っすらと晴れ間がのぞいています。16時30分。

まだテント場の皆さんは様子を窺ってるよう。ガスはまだ西から東に流れている。風も止んではない。

「このチャンスを逃すまい。山頂に上がろう」

1人だけ、木曽駒ヶ岳の山頂を一目散に駆け上がりました。誰も上がってきません。山頂は霧が晴れています。ガスはものすごい勢いで流れています。

「やった!山頂1人じめだ」

山頂の木曽側の祠で、祝詞を奏上。西空から真っ赤な太陽が顔を覗かせます。御嶽山がくっきりと見えます。最高の瞬間です。





霧が晴れたら、こんなに素晴らしい絶景を見せていただけるんだ!感無量です。日が落ちると足元が危ないので、下山します。やっと日没を見るために、2、3人が登って来ました。降りながら、日没を拝ませていただきたいなと思っていると、宝剣岳の下の通路から日出を眺めているの人影が見えます。私も日が落ちるまでそこにいました。


テントに戻り、夕飯とコーヒータイムです。



満天の星空の下、エチオピアのコーヒードロップ。

念願が叶いました。テントを背負ってコーヒーを飲みに行こう!木曽駒ヶ岳編でした。


 河童橋から眺める穂高の山々。この光景を一目見たい。2023年8月初めて上高地を訪れました。澄み渡る梓川と2時間ばかりのハイキングコースは早期退職者の傷ついた心の癒しになりました。





 それから2年、テントを背負って、満天の星空の下でコーヒーを飲みたい、という夢を実現するために、涸沢カールでのテント泊を実行しました。これは2025年8月3日から5日の旅日誌です。

 単身でテント泊を計画されている方に少しでも参考になったら光栄です。


 登山初心者でテント泊をするのだから、それなりの装備品が必要になります。今回、準備したもの以下の通りです。

 ザック、UL(ultra light)を目指したので、ハイパーライトの35L、こちら耐水性をうたってますが、ジップロップやスタッフバックにまとめて入れた方が良いです。シュラフをシュラフ袋に入れて収納していましたが、帰りの雨で少し濡れてしまったようです。2泊3日で35Lではザックがパンパンで、最低でも40Lは欲しいと思いました。

 シュラフはmont-bellのドライシームレスダウンハガー#3。今回、初日、徳沢園で1泊。長袖シャツの寝巻で寝ましたが暑くて、シュラフから上半身出してしまうぐらい暖かい。2泊目の涸沢カールでは夜間冷え込むので、ちょうど良ったです。ちなみに、4日夜間の涸沢カールの最低気温は11度。

 テントはプロモンテのVL294S、ダブルウォール✖️自立式、ポールの組合せが簡単で、設営が楽。なおかつ、ウォールが2つあるので、今回の暴風雨でもびくともしませんでした。

 テントマット。クローズドセルのEvernewの深山寝そべり、安価で軽いので、今回はこれにしました。35Lのザックでは中に入らないので、ザックの外付けになるのですが、ザックの上げ下ろしの際に

面倒です。涸沢カールのような石だらけの地面でも、コンパネなしでも快適に睡眠が取れたので、マットとしての機能は最高でした。

 テントシート。デュポンのタイベックシート。今回のような涸沢カールでの豪雨で大活躍でした。テント下まで雨が染み込んできていましたが、このシートのおかげで、テントマットやシュラフ、持ち物が濡れませんでした。

 クッカー。Evernewのチタンクッカー、500、400、220。チタンなので軽くて、3つ重ねて収納できるので良かったです。ただ加熱時は持ち手が熱いので、リフタートングが必要です。ちなみに持って行ったのが、Sotoの持ち手リフタートング。

 バーナー。Sotoのウインドマスター。これは優秀でした。着火装置が付いているので、ライターの必要なし(一応、ライター持っていきましたが)。風避けのウインドスクリーンも持参しましたが、涸沢カールで風速9m近くでもスクリーンなしで着火できました。

 コーヒードリッパーはmont-bellのスナップフォールドコーヒードリッパー。こちらは折り畳み式で簡単に組み立てられて、計量で持ち運びも簡単でした。

 レインウェア。山と道さんのUL オールウェザージャケットとパンツ。上下で約250gの軽さ。長時間着ていても蒸れない。2日目からはずっと帰るまでお世話になりました。

 登山靴。私のような扁平足だとなかなか合うシューズがなくて、アルトラさんのロングピークのワイドが欲しかったのですが、どこも売り切れ。普段履いてるトレッキングシューズのNordaで行こうと思っていましたが、登山ソックスを履いたら、足が痛くて、これでは登山どころではない。登山ソックスは普通のソックスより厚いんですね。たまたま、YouTubeのMTさんの動画を観ていたら、スポルティバのボルダーXを紹介していた。ネットで調べたら、扁平足が多い日本人に合ってるらしいから、一か八かAmazonで購入。今回、これが大正解でした。登山では登山靴が命。岩や石が多い道でも楽でした。なお防水性もある。助かりました。ちなみにソックスは友人の勧めで中厚手にしました。

 後、涸沢カールでは最高気温が15度前後でしたので防寒着は持って行って良かったです。無いと夜、テントの外に出れません。

 まだ、他にも多々ありますが、持ち物はこのくらいにして。


 3日、午前7時30分、新宿バスターミナル発。大正池、11時54分到着予定でしたが、途中、道路工事中で渋滞。約30分の遅延で12時30分頃下車。上高地バスターミナルまで行ってしまっても良かったのですが、大正池に反射する焼岳を見たかった。


 

 午後1時30分、上高地バスターミナルで登山届を提出。嘉門次小屋の岩魚の塩焼定食が食べたいので、河童橋付近は通過。最終受付が午後2時半か3時だったので急ぎます。河童橋から明神池までは徒歩で約1時間かかります。

 午後2時30分頃、嘉門次小屋に到着。岩魚の塩焼単品は終了。定食はOKということで一安心。岩魚の頭から尻尾まで美味しくいただきました。苦味もなく、薄塩で優しい味。私がいただいてる途中でオーダーストップでしたので、行かれる方は午後3時前にはお入りください。

  明神池を見学。ここは絶景です。池に点在する岩岩とさざめく水面からは京都天龍寺の曹源池庭園を彷彿とさせました。人間が手を入れずに作り出した天然の造詣に時間を忘れて見惚れてしまいました。 





 不細工なオッさんですが、ここで顔出し。明日はこの裏に登るんだと調子に乗ってます。この先訪れる難題も知らずに!



 穂高神社奥宮で礼拝して、今年初めて踏み入れる徳沢園に向かいます。

 徳沢園で初めてのテント泊。徳沢ロッジでの外来客への夕食のテイクアウトが午後5時なので、午後3時30分出発で、急ぎます。ちなみにここで、午後7時までなら外来入浴もできます。ここから先は行き交う人は皆旅人ですが、めっきり少なくなります。時々、前後人とすれ違うことなく、1人で歩いてる時間もあります。お猿さんたちに何度か会いました。熊でなく、良かったです。そして、夕陽に輝いたお花が美しい。名前はわかりません。わかる方いたら教えてください。

 



 午後4時30分頃に徳沢園到着。テント泊受付。1泊1800円です。受付バッチをもらって自分のテントに貼ります。京都嵯峨野高校生たちがキャンプをしていました。既にキャンプ食の支度で皆さん大騒ぎ。楽しそうでした。もうこの時間になると広い牧草地のキャンプ上でも張れる場所が限られてしまいます。気まずく思いましたが、カップルさんの隣に張らせてもらいました。テント張りは自宅で予行演習してきたので、スムーズに設営。サンダルに履き替え、徳澤ロッジに夕食テイクアウトの予約に行きます。徳澤ロッジのカウンターのお姉さんが、活き活きして、接客丁寧で感じの良い方でした。都会と違って、久々に人間らしい方にお会いして心が救われます。午後6時に取りに来てくださいというので、6時に行き、そのまま入浴。(入浴料は1000円)入浴後、徳澤ロッジの外テラスで牛丼を食べました。定価1500円。プラッチック製容器は徳澤ロッジで回収してくれます。玄関横に回収ボックスあり。

 夕食後のお楽しみ。今回のメインイベントの一つ、自分でコーヒーを淹れて飲む。豆は狛江のダグラスコーヒーのエチオピア。自宅でドロップしてきた粉をペーパーでハンドドリップ。水はいくらでもいただける徳沢園の天然水。隣のカップルの声は気になりますが、川のせせらぎとアカハラの囁きを聞きながら、自然の中での一杯は最高でした。都会の40度近い猛暑から解放され、快適な25度前後で森林浴。正に楽園です。



 良かったのはここまで。最終日の6日から雨の予報でしたが、初日の晩から天候が急変します。山から谷底に吹き下ろすような突風が木々を唸らせます。小雨ですが、雨が降り始めます。それでも熟睡。日の出時間の小鳥たちの囀りで目を覚まします。次第に周りのキャンパーたちの声やテントを撤収する音が聞こえてきます。突風は止みましたが、小雨は降っています。

 登山天気のアプリの時間ごとのピンポイント情報では涸沢ヒュッテは風速9から10mで一日中雨。10mを超える時は稜線に出るのは控えた方が良いと書いてある。ここまで来て、残念。今晩も徳澤泊かと思案して、トイレに行こうと午前7時頃、テントを出ると、驚く勿れ。周りのテントはほとんど撤収されて、残るのは数えるほど。あの大集団の高校生たちも忽然と姿を消している。この雨と風の中、次の目的地、どこを目指して旅立つたのか?とりあえず、今日、徳澤でもう1泊するにせよ、一度撤収して、横尾まで行ってみようと決断します。ちなみに、水洗の綺麗なトイレは徳澤までです。横尾から先は山小屋の昔風のトイレになります。レインウェアを着ていざ横尾へ。

 横尾到着が午前9時。雨は小雨ですが降り続いてます。常駐の登山員さんに、この天候で登山道に入るはどうか、聞いてみると、「風速10m近くなると稜線近くは危険ですけどね」と言うだけで、行くなとか行かない方が良いとも言いません。まあ、自分次第で判断ということか。

 帰って来る人は沢山いますが、橋を渡って行く人はいません。自己責任で判断するしかない。滅多に来れないし、来年リベンジでは悲しい。体力は充分あるし、行ける所まで行ってみようということしました。


 途中、雨が降ったり止んだりの天気。山の天気はわからないものです。いっとき青空が見えたりして。お陰様で風は止んでくれています。前に進んで良かった。下山組は後から後からやって来ますが、上り組は途中、誰にも会いません。軽装な格好の大学生風の2人組の男の子が抜いて行ったっきりです。

 沢の流れの音が近づいてきました。ここで70代と40代の親子、母親と娘さんを抜きます。あの天候で私より前に入山した方もいたんだと感心する。午前10時頃、本谷橋到着。沢山の下山組がここで小休憩をしていました。下山組が休憩してるんだから、まだまだ先が長いんだろうなと思いました。素足を水に浸けたり、顔を洗ったり。タンクトップの上に長袖シャツを着て、レインウェアを羽織っていましたが、さすがに暑い。雨も止んだので、人の会話もかき消してしまう沢の爆音の中で、レインウェアを脱ぎ、タンクトップ、下は山と道さんの5ポケットパンツになりました。


 ここから先が本格的な急登続きでした。途中、小学生2年生くらいの女の子と母親が降りて来て、挨拶してきました。こんな登り坂を女の子が登って行ったのかと思うと、「よく頑張ったね!」と思わず声をかけていました。周りの景色は目に見えず、目の前の第一歩、どこに足を置こうか、一歩一歩に集中。家康公の「人生は重い荷物を背負って、一歩一歩歩むようなものである」を思い出しました。30分歩いては休憩、また、30分歩いては休憩。休憩食で食べたセブンの「黒糖わらび」。これは良かったです。

 11時頃、腰を下ろして休憩してると、ポンチョを羽織った軽装の30代男性が下からやって来ました。ここを登るのは初めてだと言います。「午後2時まで登って、涸沢に着かなかったら、横尾の登山員さんに電話連絡して、帰ることにします」と。まさか、ここから3時間もかかるはずないと思ったけど、黙って聞く。2人で休憩していると、上から降りて来た50代の夫婦が声を掛けて来ました。普段は南アルプスをメインに登っていて、アップダウン続きが多いのに比べて、ここは登り一辺倒だから良いとおっしゃられた。ポンチョ男は「ではお先失礼します」と言って先に行ってしまった。30分進んだ頃、会社の同僚風の40代の男女の集団に会う。思わず、「あとどのくらいでしょうか」と尋ねていました。「40分くらいですかね」「さあ頑張って、いってらっしゃい」の言葉に勇気をいただきました。暫く行くと眼前に涸沢小屋が見えてきました。まだあの上まで行くのかと内心思いましたが、前を見ずに足元を見て、一歩一歩進むしかありません。実生活でも、大きい目標を立てても、最初はできるはずないと思ってしまいますが、足元の一歩一歩をこなして行けば、いつかできてしまうものです。「千里の道も一歩から」。前進あるのみです。しんどい山登りのどこに魅力があるんだろうと思ってましたが、この心境が登山の魅力のひとつなんだと今回実感しました。

 


 涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐点に到着。ここまで来たら、後はラストスパートです。マラソンと似てますね。午後12時30分、涸沢小屋到着です。横尾から3時間30分でした。テント受付は午後3時から。受付前に空いているスペースにテントを先に張ってください、と看板が出ていました。コンパネを借りる方も先に借りて良いようです。雨は止みましたが、突風が吹いてます。風を凌げる通路沿いを探します。既に前泊している大学生のサークル集団の他に、個人で張っている方は2、3基ぐらいしかありません。既に立っているテントの側は避けようと思いましたが、風を避けれる場所は一つしかありません。オレジ色のmont-bellさんの隣にしました。ここは石だらけ。ペグは使えません。フライシートに付いているロープを石に括り付けて、固定するしかありません。初めての使用。聞くのも恥ずかしいので、お隣のmont-bellさんを参考にして、見よう見真似しました。オッさんになると、素直に教えを乞えない、「かわいい子には若いうちに一人旅をさせよ」と言うのは、世間が教師として、教えてくれるからなんだなあ、と思う。若いうちに、いろんなことにチャレンジすべきです。世間が支えてくれます。午後3時過ぎにテント受付の放送が入り、受付終了。テント場代金は1泊 2000円。


 テントが張れたら涸沢小屋で遅めのランチ。手作りおでん、と生ビールをいただきました。運動した後の食事は、食欲旺盛。貪るように食べました。喉もカラカラなので炭酸が欲しくなりましたが、なぜか炭酸水がなかった。生ビール大ジョッキーを飲み、喉を潤しましたが、標高が高いせいか、その後、軽い頭痛がして、2、3時間寝込みました。

 そして、夕飯前のコーヒータイム。


 突風が吹き荒れてましたが、Sotoのウインドマスターは優秀。ちゃんと着火してくれました。午後5時、夕食にはまだ早いので、コーヒーを飲みながら、目の前の景色を眺めていました。すると、一点に霧が発生すると、それが塊になって、スウっと雲になっていく。こうやって雲になるんだね!


 午後7時、満天の星空はなく、夕食の仕度。重量を抑えるために、今回はお湯を注ぐだけのα米と即席パスタ。これが思った以上に美味しかった。周りは大学生たちのパーティーが賑やかで、楽しそうでした。自分にもあんな時代があったなあと感慨深くなりました。隣は50代の1人テントを楽しんでいる男性。上は女の子の孫を連れてきている家族連れ。この非日常空間は皆、心が開いて幸せなひと時を繰り広げている。

 午後9時を過ぎると周りはぴたっと静かに。就寝タイムに入ったようです。皆さん、マナーが良いのですね!

 うとうとし始めると、天井に微かな電光が走ります。まさかと思いましたが、雷雨です。そのうち、突風が吹き始めて、稲妻が轟きました。ものすごい豪雨です。この雨でテント内に浸水しないか、気になりましたが、大丈夫のようです。ダブルウォールのおかげで室内も暖かく快適です。この悪天候でも守ってくれているテントにただただ感謝で、熟睡していました。上は半袖Tシャツ、下はジャージでしたが、朝方、若干寒かったです。最低気温、10℃

 ここも、日の出の鳥の囀りで、皆さん起床のようです。風は治り、小雨のようです。夜間の豪雨でテント内はどうなっているのか心配で、荷物を見てみましたが、濡れてないようです。マットの下のタイベックシートをまくってみると、テント底は濡れていました。タイベックシートを敷いてなかったら、ザック類の荷物は濡れていたでしょう。敷いておいて良かった。

 隣のmont-bellさんも動き始めているようです。上高地バスターミナル14時30分なので、徒歩6時間として、休憩入れても、遅くても、7時には出発しないといけません。とりあえず、ザックに荷物をまとめる作業を開始です。テント撤収するため、外に出ると、もう既に、隣りのmont-bellさんはいなくなっていました。動作が早い。雨が小降りになってから何て言ってられません。午前6時に涸沢小屋を出発。途中、本谷橋で、朝食、コーンポタージュとコーヒー。横尾には午前8時に到着。登りと比較して1時間の短縮です。



 徳澤に9時、明神に10時、小梨平キャンプ場に11時に到着です。横尾から徳澤の途中で撮った梓川の様子がこれです。昨晩の豪雨の凄まじさがわかります。


 小梨平キャンプ場で「日帰り入浴 受付12時から」という看板見つけました。上高地温泉ホテルで入ろうと思ってましたが、河童橋から近い、こちらにしました。日帰り入浴料 1000円。入浴後は小梨平食堂。山賊カレーは売り切れでしたので、普通のカレーライスをいただきました。とても美味しかったです。

 ここで最後の出会いがありました。私のテーブルの右前方で、山賊定食とビールを召し上がっている50代くらいの男性。目が合ってしまったので、軽く会釈して、話かけました。「登山帰りですか?」と。「焼岳から涸沢抜けを計画してるんですが、この天候で小梨平に2日も足止め食らってるんです」と。普段の都会ではこんなことはありえない。山を登るという共通の目的で、同じ時間と場所を共有してる。その共有感が人と人の距離を縮めてくれるのだろう。いつも殻に閉じこもっている50代独身男性の不思議な体験でした。バスターミナルに早めに行こうと、弾む話も途中にして、お互いの安全を祈念してお別れしました。

 最後にネット環境ですが、奥地に行くほど繋がらなくなります。その際は、中継地点でフリーWi-Fiで繋いでください。何かあった時の連絡手段としてスマホは無くてはならないものです。紛失することないように気をつけましょう。ちなみにauは涸沢でも電話繋がりました。

 自然と対話、自分との対話、この環境を支えてくださっている方との対話、盟友との対話、山はいろいろな体験をさせてくれました。ありがとう!

 さあ、次はテントを背負って満天の星空の下でコーヒーをぜひ飲もうではないか!

 最後まで読んでくださった方、ご清聴ありがとうございました。