最高裁がパブリシティ権について初判断。「著名人は無断使用も正当な表現として受忍すべき場合あり」 | 中村物語(AKB研究生情報ブログ)

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大抵の方は興味ないと思いますが、個人的に気になる判例が出たので、ちょっとだけ書きます。

読み飛ばして下さい。


パブリシティー権に関して、判例が確立しました。

(最高裁が判例を出すと、最高裁が判例を変更するまで、全ての下級審が判例に従います)


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持ち歌「UFO」などの振り付けをダイエット法として紹介した週刊誌「女性自身」が写真14枚を許可なく掲載したとして、ピンクレディーが発行元の光文社を訴えていた事件で、ピンクレディー側が敗訴。

最高裁はパブリシティー権について、「商品販売で顧客を引き付ける力を排他的に利用する権利」との初判断を示し、「著名人は肖像などを報道で使われることもあり、無断使用も正当な表現として受忍すべき場合がある」と述べた。


その上で、記事の目的を「同じ振り付けで踊るダイエット法を勧める内容で、写真も振り付けの記憶喚起のためにすぎない」と判断。「2人が社会的に著名となっていく過程で一定程度許容しなければならない範囲を超えて権利が侵害されたとはいえない」と光文社の賠償責任を否定した。


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パブリシティー権とは、「商品販売で顧客を引き付ける力を排他的に利用する権利」です。


わかりやすく言うと、「芸能人・著名人は、自分の名前や肖像(写真など)を使って金儲けしてるんだから、他人がそれを無断使用して金儲けするのはダメですよ」ってことです。


今回の判例確定で、パブリシティー権は、商品販売目的で著名人の名前や肖像を無断使用された場合に問題なのであって、そこから利益を得る目的でなければ問題にならないという判断が確立したといえるでしょう。


下級審では、『他人の氏名、肖像権の持つ顧客吸引力に着目し、もっぱらその利用を目的とするものであるかどうか』(東京地判平成12年2月29日)という判断基準が示されましたが、これを追認する判例です。


今回の事件では、一見、商用雑誌でピンクレディーの写真などを無断使用してダイエット関連記事にしており、厳密に言えばその記事から対価を得ているといえるから、パブリシティー権を侵害しているようにも見えます。

しかし、それが「商品販売(今回は雑誌販売)で顧客を引き付けるものではない」と判断されました。


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例えば、握手会の会場付近で、AKBの顔写真を無断使用した生写真・グッズが売られてますよね?

あれは無断使用で利益を得ているわけだから、パブリシティー権を侵害しており、違法です。


何かの商品を宣伝するとき、勝手にAKBの名前や写真を利用するのは、パブリシティー権を侵害しており、違法です。


しかし、報道や趣味のために無断利用しても、パブリシティー権の問題になりません。

厳密には商用目的といえても、今回の事例のような場合は、パブリシティー権の問題になりません。


こうした場合に訴訟で争いたいときは、被写体のパブリシティー権や肖像権の問題ではなく、撮影者の著作権の問題として争うしかないのかな?


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パブリシティー権とは全く別ですが、有名人とプライバシーの法的関係について少し書いてみます。


一部週刊誌は、有名人のデート現場などを撮影して掲載してます。

これはプライバシーの侵害にあたらないのでしょうか?


プライバシー権について、公人には私人と異なる適用基準が採用され、芸能人も私人と異なる適用基準が採用されます。(個別具体的に判断されます)

実際争われるケースはありませんが、芸能人のプライベートを無断撮影しても、違法性はないと思われます。


かつてジャニーズタレントの住所を掲載した本の出版が差し止められたことがあります。

住所・電話番号など、本人の身に危険がおよぶ可能性のある重大なプライバシーについては、著名人であっても当然守られます。

もちろん、勝手に自宅に入るなどの行為は許されません。


例えば、一般人が芸能人のデート現場を盗撮して、それを無断でネット上に公開しても、おそらくプライバシーの問題にはならないと思われます。


最近、「けいおん」の声優が作曲者と同棲していることを、写真などの証拠と共に、素人ブログがすっぱ抜く事件がありました。

事務所は法的措置をとると表明しましたが、自宅付近の写真などにはモザイクがかかっており、訴えても事務所側は負けるでしょう。

ただし素人ブログは、「声優のブログを閉鎖しないと、さらに情報を公開する」としたので、これが業務妨害や脅迫にあたる可能性はあります。


ただ、これらはあくまで法的な問題であり、例えば街中で芸能人を見かけたら「写真撮ってもいいですか?」と一声かけるのが、最低限のマナーでしょう。

「法を犯さなければ何やってもいい」という考えは、間違いです。