ん?
何かが落ちた音
そして、何かを落とした感覚
ズボンが少し軽くなったような気がする
オレかな?
オレが落としたのかな?
いや、待て、振り返るのはまだ早いぜ
よく考えてみろよ
お前はポケットにモノを入れるのが嫌いだろ?
いつも荷物は全部、バッグにいれているじゃないか
今日に限って、ポケットに何か入れていたとでも言うのかい?
いや、そんなはずないね
お前はそんなヘマをするような奴じゃない
ズボンが軽くなったように感じたのは、気のせいさ
早く先を急ごうぜ!
今日は予定があるんだろ?
確かに
君の言うことも一理ある
しかしそれは、たった一理に過ぎないじゃないか
悪いがちょっと確認させてもらうぜ
百歩譲ったとして、ズボンが軽くなったような気がしただけだったとしても
音はちゃんと聞こえたんだ
何かが落ちる音を
これは確かなことなんだ!
なるほど
お前が振り返って、何が落ちたのかを確認したいのなら、そうすればいい
しかし、何も落ちていなかったとしたら、どうする?
オレが正しく、お前が間違っていたということになるんだぞ
お前の負けで、オレの勝ちだ
お前の自尊心はそれに耐えられるのか?
いいや、耐えられないね
お前はそういう奴だ
オレはよく知っている
お前は決して振り返ることは出来ない
そのとおり
では、オレの自尊心が傷つかないようにしよう
そういうわけで、君には消えてもらおう
これでやっと、振り返ることができる