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カエルの大将

ある日の昼下がり
私はベランダから庭に出て空を眺めていた

春の風が緑のにおいを運んでいる

「あしたも晴れるかな。。」

そのときふいに、刺すような視線が
背中にあるのを感じた

思わず振り返ってみると
体長15センチはあろうかという大ガエルが
半目を開けてこちらを見ている

「タダか?ゲーコ」

「え!?」

「タダでワシの庭に入ってきたんか?ゲーコゲコ
にぼし持って来い!」

そのとき私は、不気味というよりも
カエルが乾物を欲しがることに興味を持った

だからおとなしく家に入ると
台所からにぼしを5、6匹持ってきたのだった

「ゲーコゲコ、早く、ゲーコゲコ!!!」

一匹投げてやると、そいつはのっそりと寄って来て
ペロっと舌ですくい上げ、うまく口に入れる

そうして5~6個を全部平らげると
礼も言わずに茂みへと消えるのであった

その後姿には、大将の風格が漂っていた

ほかの家族はわからないが(聞かなかったから)
その後、私が庭に出るたびに大将は現れた

そして

「にぼし持って来い!ゲーコゲコ!」

が始まるのだった

もちろん私は
毎回5~6匹を投げてやる

そんなことが何度も続くのだが
いったいカエルの大将は何処から来て
何処へ行くのだろうか

庭は一方が石垣、二方はブロック塀が囲んでいる

また、庭には池も水溜りもないから
乾物が好きになってしまったのだろうか

ある日、私は母から庭の草刈を頼まれて
小遣い欲しさに引き受ける

もちろん、ポケットには
にぼしを5~6匹しのばせていた

草刈は予想以上にたいへんで
大将のことも忘れるくらいだった。。

。。やっとのことで草刈が終わる

そういえば、きれいさっぱり刈り上げたのに
カエルどころか
冬眠用の穴さえ見つからないね

ポケットのにぼしを無意識に捨てながら
頭の端ではそんなことを考えていた

そのようにして帰りかけたとき
足が何かを蹴飛ばした

そこには
ガーデニング用のカエルの置物が
泥だらけになって転がっていた

「。。。」

ああ!腹へった!
さあ手を洗って晩御飯だ!

家の中に突入した私は
晩のおかずが何か
嗅ぎ分けるのに必死だった

そうして晩ご飯を食べ終わり
お腹がいっぱいになったとき
カエルの大将は
記憶のかなたへと消え去っているのであった。
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