遂に今年もマーベル・シネマティック・ユニバース始動ですね。
して、1ヵ月後にはMCU到達点、「アベンジャーズ エンドゲーム」の公開。「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」の最速上映で観て指パッチンのせいで深夜の新宿を2、3時間徘徊した去年が昨日の事のよう。

インフィニティ・ウォーで最後に提示された希望「キャプテン・マーベル」。


インフィニティ・ウォーを打開する希望としてだけではなく、MCUとヒーロームービーを新たなステージに運ぶ新星でした。

エンタメとして50000億点満点ですし、前情報を知ってるほど裏切られるサプライズに満ちていて……アベンジャーズの事はすっかり忘れて観てしまう。そしてベストオブ ベン・メンデルソーン。
アベンジャーズに繋がるポストシーンでアベンジャーズに戻され、逆に現実に戻された気分に不思議となってしまいました。
それほどまでにストイックでユーモラスなオリジン。唯一無二のスーパーヒーロー映画。

こないだ、全てのMCUの制作を担当するケヴィン・ファイギからアジア系のヒーローやLGBT系のヒーローを今後、このユニバースに登場させる計画だという話が出て話題になっていました。
事実、ブラックパンサーは黒人を強く押し出し、米国で歴史的なヒットを飛ばしました。
本作でもMCU女性初監督作、MCU初女性がヒーローのオリジンという尾ひれが強調されている部分もあります。

しかし、本作のいい所は、ポリコレ的配慮とか体裁は二の次で、その姿勢は必要であるからこう描いた。キャロル・ダンバース/キャプテン・マーベルというヒーロー誕生はそう表すようなストーリーとして描かれていて、最高に気持ちよかったです。

ヒーロー映画というものは、ヒーローにパーソナルに向き合わなければならない性質があります。その上でどうしても人種的問題や政治的問題、生きる上で個人にまとわりつく様々な問題からは避けて通れないわけです。
そう、でもそれはそのキャラクターを描く事で必然の事で、それはそのキャラクターにとっては当たり前の事でしかないのです。
それをどう観客が自分の問題として考えられるかが大事で、MCUは今までどのヒーローも誠実に描かれてきました。

キャプテン・マーベルがヒーローとして誕生した瞬間は、性別、境遇、人種……様々なしがらみに関係なく、問題に向き合う力強い姿勢が描かれ、爽快感溢れる場所に連れて行ってくれます。
現実では生きてる以上は困難な問題に立ち向かわなきゃいけない時があるでしょう。そんな問題に倒れる事もある。それは現実である以上、仕方ないことです。
だからこそ、ヒーロー物という存在は必要なのです。
例え現実でつらい問題に倒れても、ヒーローという存在はどんな困難でも何度でも立ち向かう。その爽快感をヒーローというメタファーを通して、得たり、学んだりすると、ちょっとは現実でまた厳しい問題にぶち当たった時に以前より立ち向かえる気がしませんか?
キャプテン・マーベルは、その役割を誠実に、キャッチーに、エモーショナルに果たしています。キャロルの記憶を巡るサスペンストーンのストーリーもその為のマクガフィンなんです。

キャロルを取り巻くキャラクターもすごく魅力的なキャラクターばかり。
MCUお馴染みのニック・フューリーは若い時代のフューリーなので、知らない一面ばかりで事ある事に好きになっちゃうと思います。
キャロルの親友のマリアとその娘も、キャロルをしっかり支えてくれて……マリアが困惑するキャロルにかけることばがすごくいいです。

中でも特にいいのは、ベン・メンデルソーン演じるスクラル人のタロス。スクラルといえば、マーベルではスター・ウォーズのウーキー(毛色は違うけど)くらいファンにとっては有名な宇宙人。なんでも姿を真似られる変身能力を持っている宇宙人ですが、いい意味で観客を裏切ってくれます。
そして、あのベン・メンデルソーンですよ。宇宙人姿じゃないベン・メンデルソーンがスーツを着て殴る、蹴る、膝蹴りをして、眼鏡を外してすごくクールなセリフを吐くシーンがあるんですが、もう実はそれだけで個人的にはこの映画、5000億点なんですね。ほんとありがとうございますていう感じです。



ベン・メンデルソーンとあともう1人、強烈なインパクトを残すのが猫のグース。
キャラクターポスターの中に紛れ込む普遍的な猫の姿にメロメロになった人も多いでしょう。僕もその1人です。原作でも猫以上に強烈なインパクトを持っていて、そこは引き継いでいるのでお楽しみに。フューリーがよちよちする為だけのキャラクターではないです。この映画の最高のユーモアです。



キャラクターばかりではなく、作品のトーンももう最高で、前述で90年代が舞台……とはいいましたが、これは紛れもなく90年代の映画なんですよ。そうゆうノスタルジーがありつつ、でも新しい。
勿論、マーベル・スタジオって妥協を知らない制作スタジオなので小物も当時の再現度が異様に高い。トレイラーで話題なったブロックバスターの再現度、中の凝り具合も徹底しててユニークでした。加えて主に95~96年が舞台ですが、89年とかそれ以前もキャロルの過去として出てきますが、その時のカメラの再現度にも注目です。
でも、それ以上に、もうこれは感覚的なことばでしか表せないんですけど、広大な世界観からSF的サスペンス。身近な場所を旅するロードムービー感。キャラクターの味付けがT2とかトップガンとかフィフス・エレメント、バック・トゥー・ザ・フューチャー(微妙に時期ズレますが)……どれも明確にオマージュされてるとか似てるとか言えないんですけど、ほんとにその辺に観た!!ていうノスタルジーを感じたんです。たぶんこれ、他のヒーロー映画に比べても趣きが違っていて、でもあまりにもスタンダードだから感じたんでしょうね。

DCも活性化し、ソニーもスパイダーマン派生の映画を次々作っていく予定。スパイダーバースでアニメという表現からも広く注目される展開が始まり……そして、MCUは、アベンジャーズ エンドゲームという頂点を迎え、さらにそこからディズニーの配信サービスのドラマ、新しいアプローチのヒーローの登場と更なる飛躍、そしてFOX所有ののマーベルとの合流とさらにヒーロー映画は大きな展開を迎えようとしてます。
その転換期に、ヒーローとは何かを堂々と証明したキャプテン・マーベル。それは大傑作ですよ。狙った効果なのかどうか知らぬところではありますが、ほんとにこのタイミングで出るべき素晴らしいヒーロー映画でした。
パンフでキャプテン・マーベルの原作者ケリー・スー・デコニックはこう語ってます。
「彼女は女のヒーローじゃない。ただのヒーローなんです」
まさしくそうです。
そして、キャロル・ダンバース/キャプテン・マーベル演じるブリー・ラーソンは、誰かの示しになろうとするのではなく「自分が自分であろうとしてるだけ」と女性たちの影響について意識したところはあるか?というインタビューに答えています。
これは、キャプテン・マーベルのストーリーに直結していて、アベンジャーズ絶体絶命の危機に最強のヒーローが僕たちの前に現れてくれました。俄然、アベンジャーズ エンドゲームとこれからのMCUが楽しみでしかないです。

これからのヒーロー映画、そして映画を楽しむ上で見逃せない1本だと思います。