こんばんは!
西尾で読書会。の宮子京(みやこ けい)です。
今は、季節の変わり目ですが、読者の皆様は体調にお変わりは有りませんか?
私は、季節の変わり目に体調を崩すことが多く、不覚にも咳の風邪を引いてしまいました…。
読者の皆様、体調管理にはくれぐれもお気を付けください。
さて、今回、ご紹介する一冊は、
千野帽子『物語は人生を救うのか』筑摩書房、2019年
です。
この本は、世の中に存在する様々な話の種類を大別しており、また人間が自分の人生に見出す「物語」について書かれている本です。世の中にあふれている話をフィクション、ノンフィクション、嘘、間違いなど、大まかにジャンル分けをしたうえで、それらのジャンルについて説明しています。
私たち人間が生きていく過程には、日々あらゆる出来事の経験を積み重ねたり、その一つ一つの経験に意味を見出していくことが含まれています。そして、そこに自分なりの人生の物語を紡ぎだしていく、という一面があります。
この本には、著者のある経験をもとにして語られる心の物語が載っています。生きてきた中で体験しえたことを物語としての視野でとらえ直してみるということは、大変興味深いことです。
少し話がわき道にそれますが、本文中に登場する専門用語として、「ナラティヴ」という考え方が大変興味深かったです。この「ナラティヴ」という考え方は、「ナラティヴ・アプローチ」というカウンセリングの手法につながります。これは、心理学の中(とくにカウンセリングの場)に関係してくるもので、「社会構成主義」という考え方に基づいています。この社会構成主義とは、リタリコ仕事ナビの定義によると「ものごとは社会との相互の影響の中で形づくられる」という考え方だそうです。
実際に、この本の本文中(205頁より引用)では、「物語は一義的には言語(音声言語、文字、手話など)による表現」であり、また「広義には他の表現方法(一枚から多数の静止画像、動画、音の表現など)と組み合わせられたものを含む、という話が登場します。
私自身、「ナラティヴ(・アプローチ)」の考え方に興味があるので、そういった意味でも、この本はとても好奇心を掻き立てられる一冊でした。私自身も一日一日生きていくことで物語を紡いでいっているのだな、という実感を持つことが出来ました。
最期になりましたが、この本のタイトルは、「物語は人生を救うのか」と疑問文になっています。今の時期は、新しい進路の決定などのように、自分の物語が新たな方向性に進んでいく時機に差し掛かっている方が大勢いらっしゃると思います。皆様が、これから先の自分の物語を、存分に楽しめるような毎日を送っていっていただけることを願っています。
一読していただいてあなたの中に湧いてきた考えが、あなたの心が示す回答だと思います。そういった観点でも読んでみることのできる一冊だと思います。
それではまた次回!