私が自治会長を引き受けてから十年になる。
なった時には、役員はすべて年長者だった。
だから用事を言いつけてきた。それは総会の司会者などであるが、まともにできない副会長たちなのであった。三年たって、副会長から自治会長になった。
以前の自治会長が出来なくなったために受けたのであるが、
「前会長を押しのけて自治会長になった」と噂した人がいた。
それを信じて、我が家に泥酔して抗議に来たのは元公務員である。
あまりにもひどいために、警察に来てもらって決着をつけようと提案した。
しかし、前自治会長を呼べというので、呼んだらしかりつけられた。
そして、私に向かって、土下座するといった。
この酒乱気味は妻も心得ていたらしい。一緒に来ていた。
妻の存在を忘れているらしい。妻は終始うつむいていた。
それで土下座するという。政治家でもないのに。土下座は断った。
午後六時から十時半までの大立ち回りは終わった。
考えてみると、その年代の人には、ものすごい栄誉らしい。
今は、七十歳代と六十歳代の人が役職についているが、
すべて私が頼んだ人たちである。
でも私が十年だから、その人たちもそれくらいに頑張ってくれている。
そのあとは、自治会でボランティアをする人がいないのではないかという不安がある。
限界集落ではないが、後に続く人たちが極端に少ないのである。
ボランティア精神と、故郷愛だけでは、
自治会活動を維持するのが大変な予感がしている。