夕方

ラムネのオレンジみたいな色の

山の端を眺めながら坂道を歩いていた。

ほんのりと漂ってきたのは

金木犀の香り。

キョロキョロと探すが

薄暗くなってきてその姿は見えない。

諦めかけた時

急ブレーキを踏んだような勢いで

突然香りがキツくなった。

振り向くと植え込みに金木犀。

嗅覚と視覚とだけではものたりず

花に指先を伸ばす。

触れるか触れないかで輪郭を感じる。

ホロリと掌に落ちたなら

口に入れたかもしれない。

無色だった風に

かすかに色が混じった気がした。

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