「えー、毎度おなじみになりました廃品回収でございます…ご不要になりました…
ございましたら……と交換させていただきます」
ああ、いいとこなのに所々聞き損ねたやん!と外からの雑音にあつこはイラっとした。
毎日、テレビで放映している韓国の時代物のドラマが好きで、在宅している日はお昼ご飯を食べながら見るのがお約束だった。
少しでも韓国語に触れたいから第二音声で聞くことにしていた。
CMが終わり再び集中する。
が、またも音が入ってきた。
「毎度おなじみになりました、廃品回収でございます」
えー、もう、早くどっか行ってよ〜
と思うがその声は動く気配もない。
うちの前から聞こえている。
確実にうちに向かって。
「ご不要になりました〝椿のお湯のみ〟ございましたら新茶と交換させていただきます」
ん?
何か変じゃないですか?
ご不要になりました〝椿のお湯のみ〟?
〝新茶と交換させていただきます〟?
あつこはリモコンの録画ボタンを押して玄関に向かった。
白いドアを開けると門扉のこちら側に
見覚えのある割烹着姿のたぬきのお母さんが立っていた。
「あつこさん、お久しぶりですね〜。よもぎ餅ではお手伝いありがとうございました」
あ、やっぱり。
「こちらこそ。楽しかった上にごちそうさまでした」
「ところで、その時の椿のお湯のみ、お手元にありますか?」
「ありますよ。綺麗だったから飾ってるの。取ってくるからちょっと待ってて…いや、中に入って」
「いいんですか?」
「だって誰かに見られるとマズイでしょ?」
「あー」大丈夫ですよ、とたぬきのお母さんが言いかけた時にはもうあつこに抱っこされていた。