「支度できましたよ〜」

体育館の入り口から子イタチのリーダーが叫んだ。

中に入るといつの間にどこからどう集まったのか
イタチに紛れて沢山のたぬきやきつね、
ネコが座っていた。

銘銘の前にきな粉のかかったよもぎ餅が置かれていた。
ツヤツヤしたお皿は椿の葉だった。

「それではみなさまご一緒に
〝冬のだるさよさようなら
春の力をありがとう〟
いただきます」

体育館が揺れるほどの大合掌。

あつこも食べ始めた。

しばらくすると

「たんぽぽのお茶いかがですか?女性には嬉しい効き目がありますよ」

と割烹着姿のたぬきのお母さんが深みのある赤い小さな湯呑みを差し出した。

「丁度飲み物が欲しかったんです。
ありがとうございます」

その湯呑みは薄くて繊細だけれど滑らかで温かみのある独特の感触だった。

椿の花びらで出来ていた。

お茶は香ばしい香りで
じんわりと身体を巡る優しい味だった。


「ごちそうさまでした。おやすみなさい」

子イタチが次々と帰って行く。

はっ、とした。

私も帰らなあかんやん!

「おばあちゃん、そろそろ帰るわ」

「そやな。御苦労さん。お手伝いありがとうね。ホンマ助かったわ」

「よかったらこれ…」

イタチのお母さんが竹皮の包みを手渡した。

「ありがとうございます。
みなさん、ごちそうさまでした」

頭を下げると方々から

「あつこさん、来年もよろしくお願いしますよ」

と声が飛んできた。

「はーい。楽しみにしています。でもどうやって…」


かぶせるように

「私がお迎えにあがりますから」

公園で話しかけてきたイタチがそばにきた。

「ではそこまでお送りしましょう」