私は思わずおばあちゃんの顔を見つめた。

聞きたいことが山ほどありすぎて
頭の中で言葉が渋滞していた。

無駄にまばたきを繰り返すだけだった。

ピンポンパンポーン♪♪
「お知らせしま〜す。今年の〇△地区のよもぎ摘みは、余すところなく無事完了しました。
みなさんとあつこさん、ご協力ありがとうございました。
さぁ、もう一踏ん張り、あとはよもぎ餅をおいしく仕上げていきましょう!」


あっ、私の名前、呼ばれた。
全然大したことしていないのに…
なんか面映ゆいなぁ。


周りではその放送を聴いたイタチ達が
〝余すところなく摘めたんだって!〟と
小躍りしていた。

「そんなことで⁈」

思わず口に出てしまった。

「最初にイタチがよもぎ餅を食べたのはいつだか知らないけれど、その頃はどこのお宅でもよもぎを摘んでお餅を作っていたのよ」

おばあちゃんが懐しむように話しかけてきた。


「そうですね…偶然食べたよもぎ餅がおいしくて…我々のご先祖さまは毎年春になると人さまのおうちから失敬するようになりました」

さっきのきな粉屋さんのご主人が続けた。

「ところが年々よもぎを摘んで作るお家が減って来て、私たちの楽しみであるあのお餅が食べられなくなってきたのです。

よもぎはいっぱい生えているというのに…

よし、こうなったら自分たちで作ってみよう!ということになったのですが、作り方が分からない。そこでどなたかに教えを請うことにしたのです。

みんなで話し合った結果、満場一致であなたのおばあさまにお願いしたいとなりました。

味の美味しさ、人柄の良さ、何よりイタチと普通に話せる人間だったこと…」

そうだったのかと納得した。

「でも、こんなにたくさんのお餅、食べきれないでしょう?どうするの?」

「みんなで今年の健康を祈ってお腹いっぱいになるまで食べるんです。
人が食べなくなった分、近くに住むたぬきさんやきつねさん、ネコさんたちにも美味しさが知られていって、楽しみにしているから声をかけていますよ。残ったらたぬきさんやきつねさんに化けてもらって人に売っています」

きな粉屋さんがニヤリと笑った。