昔むかし

あるところに

とても愛らしいお姫様がいました。

見目麗しく、歌も踊りもお上手で

おまけに悲しんでいる人がいれば

一緒に悲しみ

喜んでいる人がいれば

我が事のように喜ぶ。

他人の気持ちにも寄り添える

それはそれは素晴らしいお姫様でした。


ある一点を除いては…





「姫、今日こそは私のプロポーズを受けてください」

華美な花より野の花を愛する純朴な姫に

森の可愛らしい花をブーケにして

隣の国の王子様が今日もやってきました。

これで100回目です。

さすがの姫も申し訳なくなってきました。

それに本当は王子様が大好きだから

断りたくはなかったのです。

でも、でも

王子様の国には〝カエルの森〟

と呼ばれる

カエルの沢山住む森がありました。

お姫様はこの世でただ1つ、

カエルが大嫌いでした。

悩んだ末に王子様にこう言いました。

「カエルの森からカエルを追い出してください」

王子様はお姫様と結婚できるなら

と大勢の兵士を使い

森からカエルを追い出すことにしました。

慌てふためいたのは森のカエル達です。

池に逃げ込んだり土に潜ったり。

中には畑に向かったものがありました。

が、遅れてもう隠れる場所がありません。

追い詰められ


ええぃ、ままよ!

仕方なくジャンプしたら


クション

そら豆のさやの中に落ちました。




春から夏の時期に

さやからつるんと飛び出すそら豆は

あの時のカエルの血を引いているのかもしれません。