再び銀行の窓口に呼ばれると、数枚が複写になった二種類の書類の説明を受けた。
片方は生年月日の部分が複写になっておらず、三枚目をめくって再度記入せねばならなかったり、もう一つは最後に反社会勢力と無関係だとの黄色い用紙の確認書があり、息子の名前の横に親権者の文字と真由美のフルネームも書く必要があった。

記入台に移り、暫しペンを走らせる。
言われた記入先に間違いや漏れはないか、最近の自分の記憶力の悪さを自覚したくないから指摘を受けない様に注意深く見直した。
老眼鏡をしまい、コートと鞄を左腕にかけて右手には書類を持ち窓口に声をかけた。
先ほどの女性行員がチェックする。
「では、口座開設のご入金をお願いします。」
処理を進めるその言葉が不備の無かったのを証明していた。
樋口一葉さんを一枚預けると「15分程お時間頂戴いたします。」と57番の札を渡された。

15分…か。

その間に真由美はATMコーナーで下宿代を下ろした。
諭吉さまが15人。

張りや手触りは新券そのもので、このまま使えるかと思ったが一枚ずつ確かめると真ん中に微妙な折り目が入っていた。
しょうがない。
ついでだからお財布の中の諭吉さまお一人と4名の野口君も一緒に交換することにした。