それまでは陽気だった怪しげな神さま風コスプレ人物が、泣いている赤ちゃんの方へ
ツツツ~と近寄ったかと思うや、ベビーカーの上に覆い被さり、しゅるんとらせん状の渦を巻き、煙が吸い込まれる様に赤ちゃんの中に消えてしまったのだ。

えっ?今のって…

慌てて周りを見回しても誰も変わった様子がない。
赤ちゃんのママは相変わらず気兼ねしてうつむきながら泣きそうな顔でベビーカーを少し前後に揺らしながら立っている。
直ぐそばの座っている銀縁眼鏡のサラリーマンは資格試験の勉強に疲れたのか、膝に広げたテキストの上で携帯電話をいじっている。
その向かい側の席では同じ大学に通っているらしいカップルが学食に加わった新しいメニューや学園祭の準備などたわいもない話を続けている。

いや、あの、あなた方の前にいた人が一人消えたんですけど。