その頃、まりるは湖面に映し出されたほーいさんの様子を眺めていました。
「へぇー、あの石、持ち上げられるんだ」
まりるが驚きを声に出しました。
「必要な人の掌は気持ちが良いから、自分から乗るっかるんだよ」
まりるがいつも座っている腰掛け石が話しました。
「必要な人⁈」
「不安を素直に認めて表している人だよ。なんとかしたい心の暖かさともうどうしようもないかもしれない諦めに近い冷たさ。それがマーブル模様のように渦巻いていて、その加減が丁度良いらしい」
「それはよく分からないわ…」
「あいつも分かってないさ。石に意識はあるが知能とは違う。人や生き物の様な皮膚はないが、感覚はある。あいつが感じて動いた、それしか分からないさ」
微かに聞こえる足音の振動で湖面は揺らぎ、ただの湖の水面となった。
思ったより細い脇道に生い茂る木々の葉の重なりの隙間から、キラキラとは言い難い瓦屋根のように光る水面が見え隠れしています。
ほーいさんは歩みを進めました。