根元に濡れたように光る石を抱えた松を見つけなさい。
そこが湖に繋がる脇道の入り口。
雨模様で日の陰った参道の杉並木を、視線を低くして歩きます。
ほんのりとこもった土の香りがしてきたので足を止めると、そこには初めて見る、真っ黒だけれど邪悪さも怖さも感じない石がありました。
確か
見つけたらその石を持ってご覧なさい
とも言われたっけ…
ほーいさんが両手ですくうように手を触れると、石の方からちょこんと乗っかるように掌に入って来ました。
かわいいなぁ~。
落としたらかわいそうだから…
胸の前で捧げ持つように、知らず知らずのうちに脇を締めて肘が身体にくっつきます。
ゆっくりと歩くほーいさんを雲が見守るように一緒に流れます。
ほーいさんの後ろでは脇道の入り口を覆う柔らかな霧が発生していました。