(続き)


チチとハハは、おそらく、自分を守る術も戦う術も知らなかったのだろう。


どれほどの耐えがたい仕打ちに耐えたのか。


そして、ワタシたちを連れ、同じ敷地の、かなり古びた家へ移り住むことを選んだ。



ハハは後に、「オジーチャン達に、出てけっ!って言われたの」と、恨めしそうに言っていた。



チチが新居を建てるとき、祖父母は費用を全く援助しなかった。祖父は地元では「立派な」職を務めて定年退職していたのに。




家族の過去が暗いことを知っていたので、ワタシは子どもの頃から、ハハに昔のことを聞いたことがほとんどない。



でも本当は、


「ワタシが小さい頃、古い家に住んでたよね?」


「お風呂は五右衛門風呂みたいなのだったよね?」


そして、


「なんで、あの、古い家に住んでたの?」


と、口に出して言いたかった。



家族にいくつものタブーがあることが、ワタシの心に翳りの部分を生んだように思う。




それから数十年が経った後も、「古い家に四人で住んでいた」ことを、話題にすることはなかった。