「タケちゃんは将来、きっと"モノカキ"になると思っているよ。」
交際して8年が経つ、恋人のマミに言われた言葉である。
彼女とは大学入学時に偶然同じクラスで出会い、好きな音楽の話で意気投合した。
ロックが好きではあるものの、まともに楽器演奏や、ましてやバンド活動などを経験してこなかったことも同じで
心強い仲間が出来たものだと息を巻いて、軽音楽サークルへ入部した。
それからというもの、生活のためのアルバイト以外にはほぼサークルでの音楽活動と飲酒が生活の全てで
大学の授業を受けたことなど今でもほぼ思い出せない程に、熱中した。
当然のように留年をし、卒業後もそのままアルバイト先に半就職という
典型的ないわゆる「半端者」のような人生を歩んできた。
そんな私のそばにずっと寄り添い続けているのがマミで、気が付けば交際も始まっていた。
私たちがそもそもここまで意気投合できたのは
”毛皮のマリーズ”というバンドがすごく好きだったからで
サークルでもそのコピーバンドをで3年間も続けた程であった。
私にとって自信をもって言える「世界で最も好きなバンド」である。
第一回目のブログタイトル”ビューティフル”もこの毛皮のマリーズの代表曲のタイトルだ。
私はボーカル、マミはベーシストとして舞台に立っていた。
私はフロントマンの志磨遼平を敬愛していたのだが、
彼のパフォーマンスはとても破天荒なもので
マイクやマイクスタンドをしょっちゅう振り回し
一見気味の悪いダンスをしながらガラガラ声でシャウトする。
客席にダイブして腰骨を骨折したこともあったようだ。
私はそんな彼のパフォーマンスを日々研究し、模倣した。
私たちの所属していたサークルでは当時、ライブに頻繁出ていたのは
中学生や高校生の頃から楽器を演奏していたテクニックの高い先輩方が多く
難易度の高い曲をしっかりとコピーし演奏しているようだった。
私たちのようなビギナーが入り込む隙はないようだったが
派手なステージングでライブを行うようなバンドは少なかったため
だんだんとそのスタイルが受け入れられるようにもなり、
私の一つの存在価値?アイデンティティ?のようなものとなった。
いつしか、自分は憧れてきたロックスターになれるのではないかと
まるで中学生が授業中にぼーっとしているときの妄想のような
勘違いを本気でしていたほどだ。
勘違いとはいったものの、未だにその思いは完全になくなっているわけではなく
かといってバンドをしているわけでもなく、むしろ今もライブハウスに立ち続けている
マミのほうがロックスターになってしまったわけだが
私がこの妄想のような野望を、なぜ勘違いと言えるようになったかというと
「タケちゃんはロックスターになると思う。」などと
マミはじめ友人や先輩方にも言われたことがないことに気付いたからである。
もしかすると似たような文言を言われたこともあったのかもしれないが
覚えていないということはそこまで印象に残るような言葉ではなかったのだろう。
さて、どうしよう。私のこの拗らせた中2病のような
ピーターパンシンドロームのような
何かをやってやりたいという初期衝動のようなこの承認欲求を
どこにぶつけたら良いのだろうと考えたときに
冒頭の言葉が浮かんだのである。
活字を多く読んできたわけではなく、言葉は知らない。
当然、文章と呼べるほどのまともな何かなど書いたこともなく
彼女が読んだ私の文章などたまに送るキザなラブレターくらいだ。
しかし彼女はそんな私に、モノカキになると言った。
彼女は私にとって一番の理解者であり、私のことをよく知っている。
では逆らわずになってやろうと、モノカキに。