前回の「いつか~」を読んだ後に本屋に行って買ったこちらの小説
「落下する夕方」 江國香織
P288
裏表紙に書いてあるあらすじ、表紙のデザインに惚れて購入しました。
主人公の「梨果」とその恋人「健吾」 そして謎の少女「華子」の奇妙な三角関係のお話です。
喧嘩をしたわけでもないある日、いきなり8年付き合って同棲している恋人が新しい恋人をつくり出て行ったらどうしますか?
そして、その相手の女性が自分の家にすみ始めたら、どうしますか?
私は、わけがわからなくて発狂するでしょう(笑
けど、梨果のとこにいきなりあがりこんできた華子は「自然だった」そうです。
いてもいなくてもわからないくらい自然で、そんな彼女と親しくなっていく梨果は、いつのまにか健吾よりも彼女を大切にしていたのではないか。と思いました。
私は最初、健吾と華子は恋人同士ではないと思っていました、
だって、梨果が健吾に「華子とはどう?」のように尋ねたとき「全然だめだ。振り向いてくれない」みたいなことを言っていたのですから。
それが、まさか、ちゃんと恋人同士だったんですから驚きですよ!
梨果が、それを悟ったときの驚きに、私も共感してしまいました。
けど、だからといって梨果の中には健吾の存在が消えない。
健吾だって、やはり8年も付き合った彼女ですからフッたはずの健吾から数日に一回、必ず電話がかかってくるし、家にも会いに来るというハチャメチャな関係。
家に来るのは、華子が家にいるからとわかっていても梨果は受け止めていたようです。
私だったら辛すぎる。
ある日、華子が健吾のことを好きじゃなくなったことを梨果に伝えます。
梨果は健吾を「可哀想」と思いますが、その時点で梨果は健吾に愛を抱いてなかったと私は思いました。
梨果は、いつの間にか健吾を断ち切れてたのだと思います。
ある日、華子が自殺したという報告。
しかも、初めて二人で健吾から逃げて別荘に泊まった数日後に、その別荘で。
梨果は葬儀中も「華子にこのことを話したい」と思っていたようです。
華子が死んで、華子の葬式なのに、それは充分理解しているのに。
梨果の中で華子は生き続けている。
こう表現するのは違う気がします。
もっと、軽い感じで、梨果は、捉えていたような気がします。
そんな梨果を同情する健吾。
梨果の周りが「違和感」に包まれ始めた。
その中でも生きている梨果。
どのような感じなのだろう・・・。
そして、健吾が言った。
華子に恋してたんじゃないって知ってたんだ。
じゃあ、なに?
「執着」
私はこの言葉が頭から離れなかった(笑)
自分と重ねて、あぁ、私もそうなのかも、と気づいたから。
すごく、共感。
私も健吾のように、自分がいくら辛くても馬鹿みたいに追いかけて後悔して
これを「執着」してるっていうんだって、学んだ。
掃除中、窓を開けていたら部屋から華子が流れ出していくような気がした梨果。
私はこのとき、やっとわかりました。
華子が、どこにいても自然で、わけのわからない魅力を持っていたのは
きっと、華子は空気のように軽く、ある意味重みを持っていたからなんだと。
そんな華子の存在を部屋から出し、健吾のもとにいき、梨果が言った言葉
「引っ越そうと思うの」
健吾と別れても、何があってもそう思わなかった梨果からの言葉。
数ページ前では「ここから出るわけにはいかない」と言っていたからこそ驚きの終末。
華子という人物の回り与える影響力の強さ。
所々、凄く驚かされた作品だった。
けど、本当に私自身も華子に惹かれた。
今回も江國さんの小説を呼んでみて、彼女の文章は表現が綺麗だなと思った。
不思議と入りこませる魅力があるようです。
この小説、私は失恋した人に読んで欲しいかも。(笑)