こおろぎの夢を見る時、自分が自分でなくなっていく
のを実感する。焼け爛れた胃の中を肉が踊り狂い、細
菌を撒き散らす。もがき始めた大動脈が、点滴を受け
付け可能性を探り出す。俺は、くそやろうだ。叫び
つづけることで餌を拾い、死んでいくこおろぎを踏み
潰す。感覚は、無意識のうちに身体を超越し、単純
な肉の塊が転がるように別れを告げる。あいつが
言ってた。混沌の中に秩序を生み出すために心は存
在していると。生産は矛盾の境地で破壊活動を行い、
信じられないぐらいのスピードで、世の中を食い
尽くしていく。簡単なことだ。短絡的に物事を捉
えることから人は成長を覚える。存在しない言語の
中に真実を見出し、才能の曲芸の中で神経を
研ぎ澄ませる。核が自分を刺激し、核膜を粒子が
飛び出していく。溶けそうな脳をしっかりと頭の中
に固定し、天秤にかかった命の切れ目を時間の中に
据え置くのだ。感動を覚えるたびに静寂が訪れ、
無に陥る。言葉で物事を解決するたびに、憤り
の谷底に転落し毒ガスを肺の中に溜め込む。
そうやって俺は生きているのだ。書きとめていく
言葉の羅列の中に自分が埋没していき、ユートピア
の幻覚が脳裏を過ぎ去る。自殺願望と生存
願望の両極に挟み込まれ、精神の統一に時間が
かかるのだ。浮き出た血管にグリーンの色素が宿り、
皮膚が骨格を包み込む。整理整頓が必要だ。
何から始めればいいのかわからないまま結果
の中で生きている。神がいるならば、鏡の奥にある
現実と虚像の分岐をはっきりさせるべきだと法廷
で争うことになるだろう。体を蝕む全ての茶番に
一喜一憂しながら、積み上げられていく
文字で埋め尽くされた壁の向こうに俺は真実を
見ているのかもしれない。

