「今の義務教育は、日本の高度成長を支えるためのスタイルだったんだよ」
そんな話を聞いたことがあります。
ずいぶん前のことで、誰から聴いたかも、出典もわかりませんが、未だに私の心に残っています。
私は30年近く、中学校の教員をしていました。
振り返ると上の言葉と符合することが多いんです。
学校では子どもたちに知識や技術を教え、スポーツや音楽などいろいろな世界を味わわせます。
今ではだいぶ変わってきた面もありますが、基本は「教える」というスタイルです。
一番のポイントは、頭ごなしに教えてスパルタでしごくのではないということです。
そして適度にグループで話し合わせて、いろいろな改善点を出し合い、よりよい学校生活を送ることができるようにしています。
これはちょうど会社の品質向上を目指したQCサークルのイメージと同じです。
ですから、一見各人の考えを尊重しているように見えますが、根本では集団の規律を重んじ、多くの場合個人の考えよりも集団の規律が優先します。
そして最後の方針を決めるのは先生であり、学校です。
これはある意味ではとても大切なことです。
なぜなら、会社や工場、組織が何かをしたり作ろうとした時に、みんなバラバラな考えでは困るし、かといって言われたことしかしないのも困るのです。
言葉は不適切ですが、わかりやすく言うなら、「日本の高度成長を支えるのに都合の良い人間を大量生産してきた」わけです。
その代わり、集団に馴染めない子や、集団の枠に収まらないような素質や能力をもった人は埋もれがちになったことと思います。
さて、時代が変わってきました。
これからは大量生産はロボットに委ね(実際多くの大規模工場はほぼ自動化されています)人間はもっとクリエイティブな部分や、ロボットや自動化ではできないソフトな部分にシフトしていくことと思います。
朝日新聞デジタルに面白い記事がありました。
タイトルは「出る杭、もっと伸びよ」
そこでは、エジソンのように突出した才能を持つ子には、コミュニケーションが苦手だったり興味が先走ったりして、学校の集団教育になじめない子も少なくない。そうした小中学生を世界のトップランナーに育てようと、昨年、東大先端研と日本財団が取り組み始めたプロジェクトに参加している子どもさんの例が語られています。
10人の募集枠に、全国から約600人の応募があったというからすごいですね。
ある小5の男の子は入学して1週間、担任から「落ち着きがない」「勝手に発言する」などと叱られ続け、ついには週1、2度の登校がやっとの状態になったようです。
彼の魚類、両生類等に関する探求心は突出しており、東大大学院を出て国立科学博物館で学んだこともある学芸員が「彼は僕を超えている。将来が楽しみだし、うらやましい」と語るほどです。
もし、あなたのお子さんが集団に馴染めずに、学校での居場所がなくて苦しんでいるようなら、逆に突出した能力がないのか見直して見るのも方法です。
冒頭のタイトル、「目の前のことがすべてではない!」
他の考え方、他のやり方、他の世界… そういうものがもっとあるではないでしょうか。