時は1999年8月、東洋のある国にある生命体が降りた。ある予言書ではそれを「恐怖の大王」と呼ぶ。それは遥か宇宙の発生と共にあった負の存在、物理世界を生み出している究極の力と言えた。その生命体は肉体を持たず、電磁波のような生命体である。その生命形態は、幽霊と呼ばれる存在とよく似ている。だがそれは、人間の生み出す負の感情を食べて生きている。それが彼らの栄養素であり、それを宇宙に満たすべく常に暗躍して来た。
 聖書の終末予言では、それを「悪魔」と呼んだ。かの存在がいよいよ地球に降り立ったことで、地球の終末戦争は始まった。

 生命体は地球のオゾン層を通過する際、予想以上に傷つきエネルギーを消費した。消費したエネルギーを補うため、一刻も早く負の感情を吸収しなければならない。そこで生命体は強烈な悪の心を持った人間を探した。人を人と思わぬ行為が平気ででき、人間としての感情を最も失ったできる限り傲慢な人間。何の罪の意識も同情心も持たず、力のない者を容赦なく地獄へ突き落とせる人間。強い差別意識と、さらには人間の自由や尊厳を否定した、最悪の全体主義的思想を持った人物。全てをパーフェクトに備えた悪人を見つけなくてはならない。
 最も強い悪臭は、犯罪者よりもむしろそれを裁く立場にある裁判官のような官僚達から放たれていた。この事実は生命体に大きな興味をそそらせた。姿を持たないこの生命体の最も眼鏡に適った人物、それはあろうことか、犯罪を取り締まる筈の警察組織の内部で見つかった。警視庁上層部に、最高の条件に適合した人物がいたのだ。彼はその男の魂を食べ、肉体を持つに至った。悪魔と呼ばれる存在にとって、人間の魂を食べて体を乗っ取ることは実にたやすいことだったのだ。こうして抽象的な宇宙の力は、限定された世界で個性を得ることが可能になった。悪魔がこの世に姿を現した瞬間である。

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