美容皮膚科メモ Q&A14 皮膚とホルモンの関係、特に月経・妊娠・閉経がどのように影響するのか? | FF残日録のブログ

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広島県出身。各地で皮膚科の医療に関係してきました。2017年から,高槻の病院に勤めてます。過去の文書や今の心のうちを,終活兼ねて記して行こうと思ってます。2023/1/8に、dermadreamからFF残日録のブログに名称変更。

 

A10 皮膚は女性ホルモンの影響を大きく受けています。妊娠・月経・閉経における女性ホルモンの分泌の変化によりさまざまな皮膚症状が出現します。

 

■皮膚と女性ホルモン

 

人間の身体の機能はホルモンの作用をうけて調節されています。ホルモンは多くの種類があり、種々の器官から分泌されていますが、とくに女性は女性ホルモンの影響を大きく受けています。女性ホルモンは卵巣から分泌され、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つがあります。これらのホルモンの分泌量の変化によって女性の月経周期がなりたっています。

女性ホルモンの分泌は、思春期に増加して月経が始まり、20~30歳代でピークとなり、その後40歳代から急激に減少します。45歳過ぎには卵巣の働きが衰え、更年期、その後閉経(月経の停止)を迎えます。皮膚は女性ホルモンの影響を大きく受けており、女性ホルモンの分泌の変化で種々の皮膚症状が出現します。

 

■女性ホルモンの作用

 

エストロゲンは女性らしさをつくるホルモンで、第2次性徴発現など女性らしい体をつくります。卵胞の発育を促し、妊娠に備えて子宮内膜を厚くします。月経の終わり頃から排卵期にかけて分泌が多くなります。エストロゲンの分泌が多い時期は、卵胞期と呼ばれます。この時期は皮膚が潤い、余分な皮脂の分泌が抑えられて正常な皮膚の状態になります。プロゲステロンは妊娠を助けるホルモンで、受精卵が子宮内膜に着床しやすい状態にととのえ、妊娠後は妊娠を継続させる働きをします。排卵後から次の月経にかけて分泌されます。プロゲステロンの分泌が多い時期は黄体期と呼ばれます。この時期は皮脂の分泌が増え、メラニン色素を産生する働きが活発になり、にきびやくすみなどの皮膚のトラブルが起こりやすくなります。

 

■皮膚と月経

 

排卵後から月経前のプロゲステロンの分泌が多い黄体期は、皮脂の分泌が多くなり、肌荒れやにきびなどが生じやすくなります。また、メラニン色素をつくる細胞を刺激するホルモンもこの時期に多くなるため、しみやくすみが目立つようになります。

また、月経時に月経疹と呼ばれる皮膚症状がみられることがあります。じんましん、紅斑、湿疹、にきびなど症状はさまざまで、月経が終わると消褪します。月経に伴う中毒疹の一種で月経に対する反応性皮膚病変とされていますが、原因ははっきりしていません。月経前に悪化するにきびを月経疹と呼ぶこともあります。

 

■皮膚と妊娠

 

妊娠時にはホルモンの変化により、さまざまな皮膚症状が出現します。女性ホルモンや副腎からのホルモン、メラニン色素をつくる細胞を刺激するホルモンなどの影響により、乳首や腋の下、外陰部などが黒っぽくなる色素沈着や、頬に肝斑と呼ばれるしみがみられます。子宮の急激な成長と副腎からのホルモンの影響で腹部に妊娠線が発生します。エストロゲンの増加により手掌紅斑、くも状血管腫がみられます。その他、多毛、皮膚のかゆみなどがみられます。

 

■皮膚と閉経

 

40歳以降、加齢による卵巣の機能低下に伴い女性ホルモン、とくにエストロゲンの分泌が徐々に低下します。エストロゲンの欠乏により、のぼせやほてり、発汗、頭痛などの更年期症状が出現します。50歳以降はさらにエストロゲンの分泌は低下し、卵巣の機能が停止して閉経となります。エストロゲンは皮膚のコラーゲンの産生を増加させる働きがあるため、エストロゲンが加齢により減少すると、コラーゲンの産生も減少し、皮膚は薄くなり乾燥し、はりや弾力が減少し、たるみを自覚するようになります。閉経後は皮膚の老化は促進されます。

 

Q&Aで学ぶ美容皮膚科ハンドブックから主だったところを抜粋(この本はとっくに絶版となっていますが、3000部ぐらい売れたそうです。メディカルレビュー社 2010年)

本文は、金原彰子先生によるもので、新たに図表などをつけています。(文責 古川福実)

(文責 古川福実)