【写真入門】写真の世界から「漫画」を分析する【エッセイ】
漫画の作者は人も違えば知見も十人十色だから、読者としても分野によって読み方は様々だ。例えば、模型好きな鳥山明先生の作品に登場する乗り物は、実際の乗車まで想定された圧倒のディテールで描き出されている。
もし読者が乗り物に長けていれば、この絵を見て「あ、ここが〇〇方式だから〇〇できるんだ。」といった楽しみ方ができる。この文とタイトルから分かる通り、本稿では6年間写真部に所属していた筆者が「写真」という分野から漫画を紐解いてみる。
- 美しいとは?
- 構図が「良い」とは
- 上達のために
- 余談
「美しい」とは?
……とはいえ、写真と漫画の共通点と言われてもあまり具体的なイメージは浮かばないかもしれない。
美しい写真 ───────「美しい」ってなんだ?
そもそも、多くの人の中で写真というものへの解像度は漠然としている。そこで、美しさというものをベクトルで分解してみる。美術の採点項目のような要領だ。色遣い、画質、明暗、etc……。
項目のひとつには「構図」がきっと含まれていることだろう。この構図こそが、写真や漫画、更にはアニメや舞台演劇にも通ずる、作品よ「良さ」を大きく左右する要素となっている。
構図が「良い」とは
下の図1-1と1-2を見てほしい。
どちらの方が「良い」と思うだろうか。
図1-1 ¦ 図1-2
当然、多くの人が1-1を選ぶだろう。次は図2-1、2、3を見てほしい。
図2-1 ¦ 図2-2 ¦ 図2-3
この写真の主目的が空を写すことをならば2-1、家なら2-2になるだろう。ちなみに2-3は撮られがちだが、コンクールの表彰台ではあまり見かけない。もちろん例外はあるが、主題のはっきりしないアンバランスが理由だ。
これを突き詰めることで、良い写真はできあがる。即ち、美しさとは合理性に根ざしているのだ。
この考え方は、枠を用いたあらゆる表現に応用できる。例えば、Twitterやpixivで流れる、かわいい女の子がドン!といるだけのイラストでも、バズっている投稿の中でキャラの紙面占有率が8割を切るものはほぼ無いはずだ。
余談だが、アニメだと宮崎駿が構図のうまさは最強格という筆者の私見がある。
上達のために
簡単に説明してはみたものの、やはり構図にもセンスが必要なことは否めない。しかし、このセンスは磨くことができる。
個人的には写真からの入門がおすすめだ。これは筆者の体験談なのだが、実際に写真を撮ったり、評価されている写真を見ていくと感覚を養える。こんな視点が身について他分野にも応用が効くというのは意外な発見だった。歴史的には写真は生まれたてのため、初期は芸術として認められず排斥され気味だったのだが、この話をしだすと横道に逸れてしまうため割愛する。
構図が分かるだけでも、漫画を始めとした世の作品の楽しみ方が増える。カオスな美術館の絵も、構図は少しがわかるようになる。ぜひ皆さんも、作品を楽しむ際には「構図」に意識を向けてみてほしい。
余談
コンクールは芸術分野、コンテストは競技分野に用いられるらしい……。