あさま山荘(上、下、続)
を読んだ。著者の坂口弘はかつて連合赤軍のNo.3として山岳ベース事件(12人の同士が凄惨なリンチにより殺害された)及びあさま山荘立て籠り事件に関わった中心メンバーの
一人である。現在も坂口弘は死刑囚として刑務所に服役中である。
まず驚くのは彼自身が体験した学生運動、労働運動をかつての仲間の動向、時系列など含め極めて忠実かつ詳細に描いてる点だ。そして自身の共産主義についての認識を論理だてて追求し、連合赤軍のNo.1である森が同士を『総括』という名のリンチに追い込んだ動機をも理解しようして仮説を立てている。
誤解を恐れずに言うなら彼は間違いなく頭がいい。しかしながら森、永田(No2 )に渋々従いながらも凄惨なリンチに加担していく。それは
異常な行動なのだが誰も止めることができない。坂口は自責の念にかられながらも最後まで森に逆らうことができなかった。その理由として直接的表現はないが共産主義の革命闘争を最後まで諦めていなかったこと(30人で武装闘争とかまず不可能だろ!)
目的達成のために『総括』も必要悪として認めそれに仮に関わらなかった場合自身が総括される懸念があり自己保身的に行動をおこしたということだと思う。
人権どころか人の命も蔑ろにした彼らからは立憲主義や民主主義などという言葉は一度も出てこない。マインドにあるのは国家権力に対する闘争のみなのだ。何故にそこまで先鋭化したのか?
以下は自分の勝手な解釈だが先の大戦後も日本人は経済活動にひたすら明け暮れ戦争に到る経緯をきちんと政府国民共々精査し反省してこなかった。それは元海軍の源田実や大本営直属であった辻政信を国会におくりこんだかつての日本人の投票行動を見れば明らかである。馬鹿な権力者にいつまでも騙される日本人に対する強力なメッセージのようにも見える。赤軍の彼らにそのような認識はなかったのかもしれないが全く無関係でもないような気がする。
皮肉なことに坂口自身も馬鹿な権力者、森、永田にいつまでもついていき捕まった。暴力はいけません。