最初に約束を破ったのはテミンだった。
そしてスジョンは本能に従った。
ジョンインは最後まで3人でいられると信じていた・・・
異質なものに異常に拒絶反応を示す
閉鎖的な地域であったため
外国から越してきたテミン親子には
ひと際周りからの風当たりが強かった。
母親はダンサーで、女手ひとつでテミンを育て
誰もが振り返るほどに美しい女だったのと
その血を引き継いだテミンは母親以上に美しく
その類まれな美貌にやっかみ、やれ妾の子だ
やれ父親はだれだかもわからないと
そうとう大きくなるまで周囲からは
好奇の目で見られていた。
そんなテミンと最初に仲良くなったのはスジョンだった。学校の裏で泣いているテミンを見つけたスジョンはポッケに入っていたアメを黙ってテミンに差し出した。
テ「いらない・・・」
ス「泣き虫」
そう言ってスジョンは包み紙を剝き
テミンの口にアメを押し込んだ。
テ「・・・ソーダの味」
ス「うん」
そしてスジョンと幼馴染だったジョンインとは
高い木の上にいじわるで放り投げられていた
ランドセルを取ってやったのがきっかけで
いつのまにか何でも話せる親友になっていた。
ジ「お前は俺たちが守ってやるから」
テ「なんだよ、僕だっていつまでも
こんなんじゃないから!」
ジ「はいはい、わかったわかった」
そんな二人の会話をスジョンは
呆れつつも楽しそうに見つめていた。

ス「ずっと一緒ね私たち!大人になっても一緒」
テ「うん、秘密も無しだよ」
ジ「破ったらどうする?」
ス「どうしよっか?」
テ「スジョンがくれたあのアメ1000個ちょうだい!」
ジ「バカじゃねえのお前」
3人は夕暮れの中いつまでも笑っていた。
いつまでも変わらないと誰もが信じていた。
時が経ち、同じ高校に進んだ3人は
相も変わらず行動を共にしていた。
テミンだけでなく、スジョンやジョンインもまた
負けず劣らず美しい容姿を持っていたので
周りからは一目置かれる存在になっていた。
でもそんなことは本人たちは気にもせず
いつも一緒に笑い、ケンカし、また笑いあう
そんな毎日を過ごしていた。
ただほんの少しお互いを思い合う気持ちに
ずれが生じてきていたのを感じながらも
それを口に出すことなく心にそっとしまい込んでいた。
ジ「オレ放課後職員室に呼ばれてるから
先に帰ってていいよ」
ジョンインは頭はいいのにちゃんとそれを
自分で生かそうとしない。
勉強など全くせずに、毎日毎日
町はずれのダンススタジオに通い詰めては
日付が変わるぐらいまで踊り続けていた。
テミンもまたジョンインと同じように
ダンスに夢中だったが
幾分ジョンインより要領がよく
成績は真ん中ぐらいをキープしていた。
そんな二人にノートを写させたり
テスト中にこっそり答えを書いた紙きれを
丸めて二人のテスト用紙の上に
投げ込んでやるのがスジョンの役目だった。
テ「どうする?先に帰る?待つ?」
ス「ヒマだから待つ」
テ「じゃあ僕も待つ」
ス「はぁ~!風が気持ちいい!」
開け放った窓から吹く風に向かって
両手を高く広げたスジョンの制服の脇から
薄ピンク色の肌がのぞく。
テミンは慌てて目をそらしたが
高鳴っていく心臓の音が
スジョンに聞こえてしまいそうなほど
ドキドキしていた。
テ「ねぇ、ジュース飲む?僕売店行ってくる」
動揺を打ち消すかのように
平静を装って話しかけたが返事は無く
スジョンは窓からじっと校庭を見ていた。
その横顔はあまりに美しく
またそれ以上に悲しげだった。
視線をたどっていった先に見たものは
テトラパックのジュースを3つ持って
職員室棟からこちらに向かって
歩いてくるジョンインだった。
見てはいけないものを見てしまった。
そう思ったテミンは本能的に
スジョンを抱きしめていた。
なぜか知らないけどそうしないとスジョンは
ジョンインのものになってしまうと思った。
ス「えっ?!」
そう言ったままスジョンは
あまりの驚きに身動きもできず
テミンを振りほどくこともできなかった。
テ「・・・そんな目でジョンインを見るなよ」
ス「テミン・・・」
テ「何も言わないで!言ったら現実になる・・・」
あまりの驚きに身動きできなかったのは
ジョンインも同じだった。
教室のドアまで来て二人の姿を見たジョンインは
そっと静かにまた来た道を戻っていった。
「わりぃw あれからチキン食いに誘われて
腹減ってたからそのまま着いてっちゃった!」
なぜきのう教室に戻ってこなかったのか
スジョンとテミンに責められたジョンインは
笑ってそう答えるしかできなかった。
歯車が噛み合わなくなるのは簡単だった。
それから何をするにしても何だかしっくりこなくて
前のように常に一緒にいることは
少しずつ減っていった。
でもお互いが心の中ではいつも
ほかの二人のことを考えていた。
そして誰もが思っていた。
「約束を自分は破ってしまった」と。
テミンはジョンインの居ない間に
スジョンを抱きしめてしまった。
スジョンは誰にも言えない気持ちを
テミンに知られてしまった。
ジョンインは自分さえ黙っていれば
元のままうまくいくと思っていた。
それぞれが思いを抱えたまま半年が過ぎ
最終学年になる前の春休みのある日
3人は駅前の31にいた。
ジ「俺、学校やめてNYに行く」
テ「はぁ?冗談だろ?」
ジ「いや、本気。あっちでスクールに通いながら
オーディション受けてプロになる」
テ「いつだよ?」
ジ「あさって・・・」
テ「おいおい!なんで勝手に1人で決めてんだよ!」
ジ「パボかお前。俺の人生なんだから当たり前だろ」
テ「スジョンもなんか言ってやれよ!」
ス「・・・ジョンインらしい」
テ「なんだよスジョンまで・・・」
ジ「見送りはいらないって
カッコつけて言いたいとこだけど
二人は特別に許可する」
テ「寂しいって正直に言えよ」
ジ「うるせぇよ、そんなんじゃねえし!」
ジョンインが町を去る日。
3人の心とは裏腹に、まだ3月だというのに
少し汗ばむような晴れやかな日だった。
テ「なんかあっついな今日」
ス「夏みたい。でも風が吹くと気持ちいい」
ジ「うん」
3人は言葉少なにベンチに座ったまま
電車が来るのを待っていた。
そして3人ともあの日のことを思い出していた。
あの歯車が狂いだした日のことを・・・
遠くから電車がくるのが見えた。
待ち構えてたかのようにスジョンは立ち上がり
ポケットからアメを二つ出した。
ス「テミン・・・これ」
テ「あっ・・・」
そして持っていたもう一つのアメを
自分の口に放り込んだ。
その時電車がホームに入って来て
ゆっくりと止まりドアが開いた。
ジョンインは立ち上がり
ドアに向かって歩き出す。
ス「ジョンイン!」
呼び止められて振り返ったと同時に
スジョンの唇と重り、何かが口に転がり込み
そして突然甘い味が広がった。
ス「1000個買うのめんどくさいから1個ずつね」
そう言ってスジョンは
いたずらっぽい笑顔を見せた。
ス「ジョンインずっと好きだった。
これからもずっと好き・・・」
ジ「スジョン・・・」
ス「言わないで! 答えはいらないの」
ドアが閉まり、電車は走り出した。
ホームにいる二人が
どんどん小さくなっていく。
と同時にジョンインの目から
涙が止めどなく流れだした。
駅から家に帰ると玄関にはテミンあての小包が届いていた。
そのまま部屋に持っていき
箱を開けたとたんテミンの目から涙が溢れ出した。
段ボールいっぱいのソーダキャンディ
そしてその上にそっと置かれた
見慣れた文字の走り書きのメモ。
テミン
俺は約束を破ってウソをついていた。
あの日お前とスジョンが抱き合っていたのを見た俺はそのことは自分の中に一生しまっておこうと誓った。
親友二人がそれで幸せになるのなら
俺はそれでいいと思った。
でもそのことで自分の本当の気持ちに
気づいてしまったんだ。嫉妬で苦しんで
頭がおかしくなりそうだった。
俺はお前にではなくスジョンに嫉妬していたんだ。
その気持ちに気づいてしまった以上もうここに居てはいけないと思った。
今は二人に感謝の気持ちでいっぱいだよ。
ありがとうテミン。
p.s.アメ、一気に食うなよ
ジョンイン
涙で文字が揺れて読めなかった。
何が何だかわからなかった。
無性に二人に会いたかった。
「私たちずっと一緒ね!大人になっても一緒」
あの日のスジョンの言葉と笑顔が
何度も何度も頭の中でリフレインしていた。
テミンはアメをひとつ口に放り込んだ。

・・・という妄想♥
なげぇーよ!!!(笑)

