「あんたがいらないもの、捨てようと思っているものを一つ、あたしにおくれ。それがお代だ。」
(廣嶋玲子 『作り直し屋』)
コンにちは。
銀ぎつねのブログへようこそ~
心に残った本をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、以前に少し触れたことのある「作り直し屋」、魔法使いのツルさんのお話。
情熱的で、それでいて、静かで穏やかな魔法。
お店にやってきた人々の想いが詰まった品々に新たな命を与え、新しい形に作り直す、職人のような魔法。
とってもファンタジック
『作り直し屋 十年屋と魔法街の住人たち』
廣嶋玲子 作
静山社
作者は『銭天堂』の廣嶋玲子さん。
文章の上手さはお墨付き。流れるように読み進められる本です。
様々な登場人物が、『作り直し屋』のドアをみつけてくぐり抜け、魔法使いであるツルさんと対面するのですが、その境界線・展開も鮮やか。
テレビ番組で家をリフォームする『ビフォーアフター』って番組、ありましたね。
リフォームされたおうちはもはや、リフォームのレベルを越えて新築と言いたくなるほどでした。
作り直し屋、ツルさんの仕事も、その変わりぶり、完成度の高さが『ビフォーアフター』の匠(たくみ)並み
この不思議なお店に導かれるようにやってくる人々は、いらなくなったものを一つツルさんに渡し、魔法で生まれ変わらせてもらうのです。
お店にたどりつく人はいろんな意味で悩んだり、困ったり…。
人生に迷いが生じています。
「…ねぇ、あんたには大事なものがあったんだろう?とっても大事にしてたもの。でも、こわれたり使えなくなったりしてしまったんじゃないかい?うちはね、そういうものにあたらしい形を与える商売をしているんだよ」
なかでも「星のモビール」はとびきり素敵なお話でした。
病気の弟のためにお姉ちゃんが自分の欲しいものをガマンして手に入れた不思議なモビール。それが弟の希望の星となったお話です。
弟を想う姉の優しさがもたらした奇跡のような未来に心打たれました。
ツルさんは大きな帽子に毛糸玉やはさみをのせた身なりも奇妙なおばあさん。
鮮やかな魔法を使うけれども、本当に変わったおばあさんなんです。
でも、実はツルさん、魔法使いの一家に生まれ、悩み苦しんだ人生を歩んできたのでした。
魔法使いとして期待をかけられ、自分を模索し苦悩し、長い長い諦念の果てにようやく自分をとり戻したツルさんが繰り広げる魔法。
そこがまた魅力的なお話なんです。
そのメッセージは、わかりやすく「なにかになろうとしなくていいんだよ」「そのままの自分でいいんだよ」
やっぱりね。
そこ、大事♡
それから、さらにこの本は。
以前ご紹介したこちらのお話ともリンクしています。
ぜひ、二冊あわせて魔法のお話をどうぞ。
ストーリーテラーの作者、廣嶋玲子さんの魅力がいっぱい。
それにしても、佐竹さんの描く表紙絵、綺麗ですね~
映える~
今日は、読んだ人に希望を与える楽しく美しい物語、安心して読める児童文学にふさわしい本のご紹介でした☆
それでは、また