まばゆい陽射しが鮮烈に、空から、海から、

あなたのシルエットを浮かび上がらせる。

その形だけを頼りに、ぼくは生きていた。
ひるがえるスカート、風をはらんで回る日傘、めくるめく蜃気楼の向こうにあなたは見えた。
ただ、激しい逆光で、その表情だけがわからない。
ぼくは焼けた砂を蹴って走り出す。
あなたの笑顔が待っていることを願って、波打ち際を走る。
冷たい海水に足首までつかって、その心地よさに酔いしれた。
跳ね上がる水しぶき、あなたの甲高い嬌声は、笑っているのだろうか。
沖へ沖へとぼくを誘ってやまない。
海は緑と紺碧に輝き、瞳に痛いほどの光を反射する。
あなたはどこ。あなたまでは、どのくらい。
あなたは、あのシルエットは、…あなた?
 
低く鳴く夕暮れのカモメの声で、ぼくは目を覚ます。
白く澄んだ輝きは水平線の向こうに消えて、
その余韻だけを空の際(きわ)に残していた。
オレンジ色の潮騒が、耳をふさいであなたの声も思い出せない。
だけどぼくは信じている。この夏の恋が夢でなかったこと。
砂に書いたLOVEだけが、波にさらわれず、瞳の奥に焼き付いて離れない。