台湾(中華民国)が何故、半導体製造に於いて世界をリードしているのか。それはモーリス・チャン(張忠謀)という偉大な電気技師・企業家のお陰である。

しかしチャンは台湾人ではない。元は1931年に中国の浙江省で生まれた中国人なのである。子供の頃、日本が中国を侵略してきたせいで、彼の家族は南京や上海など、中国を転々とした。裕福な家庭に生まれたチャンは戦後、混乱していた中国を去り、アメリカに移住。ハーヴァード大学、そしてMITに入学する。そして電気技師として頭角を現し、テキサス・インストゥルメントに25年間勤務、半導体部門の責任者となるのである。

しかし80年代、これから半導体の生産はアジアが相応しいと考え、台湾にTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)を設立する。1987年の事だ。当初は数年、台湾に住む予定だったが、TSMCの急成長により、台湾に留まる事になった。しかし彼はアメリカ市民権を取得しているので、国籍はアメリカ人である。

8月26日、河野太郎が自民党総裁選挙に立候補することを表明、会見を行った。この中で河野は中国(とロシア)には独裁者がいて、中国は台湾を侵攻する可能性もある、と発言した。

アメリカがそう言うので、日本人もその見解を鵜呑みにする訳だが、中国が台湾を手中に収めたいのは台湾の半導体産業を乗っ取りたいからだ、という事を言う人もいる。しかしその中心にいるのは中国人なのである。もちろん、チャンは国籍はアメリカ人ではあるが、シー・ジンピン(習近平)とも接触している。例えば2022年、APEC首脳会議に特使として出席した彼はシーと「楽しく、礼儀正しい」交流をしたと述べている。中国を敵視している訳がない。

ただし、モーリス・チャンも既に93歳で、その影響力はかなり小さくなっているに違いないが。

話しは飛んで、プロ野球選手として通算最多本塁打を放った王貞治の話題に移る。2年前に村上がシーズン本塁打56本を打ち、王の55本を上回った。外国人選手では60本を打ったバレンティンがいるのだが、メディアは日本人記録保持者の王を上回る56本、という伝え方をした。これは正確に言うと間違っている。何故なら王貞治は日本人ではないからだ。

彼は高校生の時、日本人じゃないから、という理由で国体に出場出来なかった。彼の国籍は台湾(中華民国)である。そして彼の父親は中国浙江省出身の中国人である。父親は1922年に日本を観光に訪れたそうだ。一度は中国に戻るが1925年、中国の貧しい生活から逃れる為、日本に入国している。富山県に住み、富山の日本人女性と結婚するのだが、日本国籍は取得していない。そして日本が中国を侵略し、戦争になってしまう。

今では中華民国というのは台湾を指す。しかし元々、中華民国とは1912年から1949年まで中国本土に存在した。だから王貞治の父は中華民国の国籍なのである。そして王もそれを受け継いで中華民国、つまり台湾の国籍を保持している。今も日本国籍は取得していない。だから日本人ではないのである。そして父親も含めて、台湾とは何の縁はないのである。

ややこしい話しなのだが、中華民国とは元々、大陸に存在した。ところが内戦で中国共産党に敗れ、蒋介石が台湾に逃げ1950年、そこで中華民国を成立させたのである。何故、台湾が中国からやって来た蒋介石を受け入れ、中華民国となったのか?これも簡単に説明出来る。何故なら1945年までの50年間、日本が台湾を支配したからである。それまで日本語教育を強いられてきたのが、また中国人の支配に戻り、中国語の教育に戻るのだから、大きな抵抗はなかったはずだ。

そしてアメリカも日本も、共産党率いる中国とは1970年代前半まで国交がなかった。だから台湾が中国と名乗っていた。しかし中国との国交樹立で、日米とも台湾とは国交を断絶した。しかし表面下ではアメリカが台湾に武器を供給しているのは周知の事実。

河野太郎は総理になりたいらしいが、こうした歴史が分かっているのだろうか?日本は中国とは国交があり、台湾とは国交がない。だけど親分アメリカが戦争を仕掛けたいから、それに黙って協力する、つまり台湾の肩を持つというのだろうか?

いずれにせよ、今後も中国は進歩を続け、我々が生きているうちに世界最大の経済大国となる。それを邪魔する一派に巻き込まれている日本。とてもではないが、明るい将来があるとは思えない。