偶然にも赤坂で訃報を聞く。
新藤兼人監督が100歳で亡くなられた。
29日だったらしい。

赤坂というのは、新藤監督の自宅、事務所がある。
有名な近代映画協会だ。

わたしは数年前、Esquire日本版で『背に、語る』(文:久世光彦)の連載をしていて、そこで監督を写真撮影させていただいた。

健康の秘訣はなんですか?
問いかけると、
「毎朝散歩してるんだ」
と、おっしゃった。

赤坂のとある坂を上って行かれるという。
そこで、その証拠写真を撮ろうと監督の後に機材を抱えて、付いていった。

早い、早い!追いつけない。


笑うとまるで少年のようである。可愛い!
話されると止まらない!
少し訛りのある広島弁で、緩やかに話す。
巨匠だというのに、全然偉そうにされず、逆に照れたように隠す感じで接してくださった。
眼力がスゴイ。

でも、わたしには優しい優しいおじいちゃんだった。


撮影現場(大船撮影所)にもお邪魔させていただいたこともあった。
普段と仕事の顔は別。

わたしがいちばん好きな作品は『北斎漫画』なんだ。
監督にも伝えたら、うんうんと嬉しそうに、あれは傑作だったね、とおっしゃった。


赤坂で監督の訃報を知るなんて、不思議だった。
涙があふれ出た。

写真はわたくしの宝となった。

心からご冥福をお祈りいたします。