家族がガンになった時。元気印の母が突然、末期癌を発病しました。 -3ページ目

家族がガンになった時。元気印の母が突然、末期癌を発病しました。

母はガンの病魔におかされるまで、元気そのものでした。毎年、健康保険未使用者で表彰されていました。このプログは、母が突然病に倒れ、、最期を迎えるまでの経過や家族との接し方の一助になればと願い綴りました。

白衣姿で診察室の机に向かう背筋は伸び、快活な笑顔で患者に聴診器を当てる──101歳にして台湾で現役医師を続けている田中旨夫氏の日常だ。戦前に台湾で生まれた田中氏は、戦後沖縄で内科医として勤めた後、2年前に生まれ故郷の台湾に戻った。現在も流暢な台湾語で患者と向き合う。

『101歳現役医師の死なない生活』を上梓した田中氏の話を聞くべく台湾に飛ぶと、数々の「長寿の秘訣」が見えてきた。

 月~金曜日の午前中は台北市内の産婦人科医院「正生婦幼聯合診所」に勤務している田中氏。アンチエイジングに特化した科で、ホルモン注射など健康寿命を延ばす医療を担っている。記者が病院を訪れた日も、診察室でパソコンに向かいカルテを見ていた。

「働く場所、通う場所があると身体にスイッチが入るんですよ」(田中氏、以下同)

 治療効果を自ら証明し続ける田中氏の、健康長寿の秘訣は何なのか。

「ホルモン注射の効果もありますが、何より、『日々の生活』ですよ」

 田中氏の日常に“死なない習慣”のヒントがあるという。

◆「悠々自適じゃ物足りない」

 病院近くのマンションに住む田中氏は、現在は94歳の妻とマレーシア人のお手伝いさんとの3人暮らし。妻が5年前に認知症を発症してからは、お手伝いさんに家事全般を任せているという。

 毎朝6時半に起床し、ベッドの上で10分間ほど、「両手で両足を抱え込んで10秒ほど膝を伸ばす」などの簡単な体操をする。膝や腰の関節や筋肉をほぐし、全身を目覚めさせるストレッチだ。

 取材日の朝食は、白粥と野菜スープ。スープにはオリーブ油を垂らす。

「オリーブ油には美肌効果や整腸作用もあります。おかげで私は便秘をしたことがありません」

 朝食後には近所の公園まで往復30分間ほど、空の車椅子を押して散歩する。車椅子を歩行補助器のように使い、歩き疲れたら座って休むのだ。

「これを使えば歩行が難しくなってきた高齢者でも、まだまだ歩けますよ」

 田中氏が散歩を欠かさないのは「日光浴」の意味もあるという。

「毎日15分日に当たることで体温が上がって血液の循環がよくなり、免疫機能が活発になる。大腸がんなど消化器系のがんの予防になります」

 病院に出勤すると、白衣に着替える。孫ほどに年の離れたスタッフたちにも、自分から進んで挨拶している。院長を務める陳先正氏が語る。

「病院内では、『みんなのおじいちゃん』として慕われています。田中先生がいると、なぜかみんな笑顔になるんです」

 確かに田中氏を見ていると表情が豊かで、笑顔が明るい。

「若い頃は無表情なほうでしたが、医学部の先生から『笑うと気持ちが前向きになれて健康にもいい』とアドバイスされたのです。それから人と接するときは笑顔でいようと心がけるようになりました。笑いは免疫細胞を活性化し、体の抵抗力を高める効果があると医学的にも実証されています」

 午後は地元名士が集まるロータリークラブの会合に顔を出し、地域のイベント企画などについて話をする。

「週の半分ぐらいは、予定が入っています。結構忙しいんですよ(笑い)」

 田中氏によれば悠々自適な引退生活より、多少のストレスがあっても現役で仕事やボランティア活動などを続けるほうが、生きる充足感を得られ、心身の健康にいいという。

 昼食後には、昼寝を日課にしている。

「30~40分ほど昼寝すると、頭がすっきりする。実は夜の睡眠の3倍リフレッシュ効果があるんです。高血圧や糖尿病などの予防にもなります」

◆「あと10年頑張りたい」

 夕食は毎日18時頃から。牛肉炒め、海老の煮付け、白身魚の煮物、野菜のかき揚げなど、お手伝いさんが作った家庭料理が並ぶが、肉や魚が目立つ。

「肉を極端に減らすような粗食は良くありません。しっかりたんぱく質を摂ることで血管が強くなり、免疫力も高まります」

 さらに茶碗1杯分の白米もしっかり食べる。

「糖質制限はエネルギー不足を招き、疲れやすくなるし、おかずばかりでは塩分過多になります」

 デザートにはパパイヤを口にした。

「果物は糖分が多いから肥満や糖尿病の原因になるというのは誤解です。果物は食物繊維が多く、炭水化物の吸収を穏やかにするので血糖値の上昇が抑えられるのです」

 食後はお風呂に入り、22時半ごろ就寝。寝るときは「枕なし」が、田中流だ。

「枕を使わないで寝ると、背筋が伸びた状態になる。今でも背筋がピンとしているのはそのおかげだと思っています」

 こうした暮らしぶりを見ていると、田中氏は決して特別な健康法を実践しているわけではなく、些細な習慣であっても日々の積み重ねを大事にしていることがわかる。最後に「長寿の秘訣は?」と問うと、こんな答えが返ってきた。

「心配事をしないことでしょうね。どうにもならないことは、考えないことです」

 生活習慣に加えて、心の持ち方も身体に大きな影響を与えるようだ。

「医師として、人のために役に立つ人生を全うしたい。だから長生きしたいのです。私は89歳で肝臓がんを患ってから、毎日『あと10年頑張ろう』と思って生きています」

●取材・文 西谷格/ジャーナリスト。1981年、神奈川県生まれ。地方新聞の記者を経てフリーランスとして活動。09~15年まで上海に住み中国の現状などをレポート。『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP新書)が2月末に発刊予定。

※週刊ポスト2020年2月21日号